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就業規則の定め、処分の重さ、退職金の不支給を争える場合を解説します
懲戒解雇を告げられても、就業規則の定めや処分の重さによっては、無効を主張できます。
退職金も、懲戒解雇だからといって、当然に全額がなくなるわけではありません。
この記事の結論
- 就業規則に懲戒の種類と理由の定めがない場合や、定めが周知されていない場合は、懲戒解雇はできません。
- 理由に当たる行為があっても、行為の性質や態様などに照らして重すぎる処分は、権利の濫用として無効です(労働契約法第15条)。
- 退職金規程に不支給の定めがあっても、全額の不支給が認められる場面は限られます。
懲戒解雇が有効になるための条件
懲戒解雇は、従業員の規律違反に対する制裁として行う解雇です。有効といえるには、次の三つがそろう必要があります。
懲戒解雇が有効になるための条件
- 就業規則に懲戒の種類と理由が定められ、従業員に周知されていること
- 自分の行為が、就業規則の定める懲戒の理由に当たること
- 行為の性質や態様などに照らして、懲戒解雇が重すぎないこと
最高裁判所は、懲戒をするには、あらかじめ就業規則に懲戒の種類と理由を定めておく必要があるとしています。
さらに、就業規則は、従業員に周知されていなければ拘束力を持たないと判断しました。
この判断は、最高裁判所平成15年10月10日第二小法廷判決(労働判例861号5頁)で示されたものです。
会社は、就業規則を職場の見やすい場所に掲示するなどして、従業員に周知させなければなりません(労働基準法第106条第1項)。
処分が重すぎれば無効になる
合理的な理由がなく、世間一般の常識から見て妥当といえない懲戒は、会社の権利の濫用として無効になります(労働契約法第15条)。
判断では、行為の内容や悪質さのほか、会社への影響、過去の処分歴、反省の有無、ほかの従業員の処分との釣り合いなども考慮されます。
行為から処分までの期間も考慮されます。最高裁判所は、7年以上前の職場での暴行などを理由とする処分を、重い処分をする合理的な理由がないとして無効としました。
この判断は、最高裁判所平成18年10月6日第二小法廷判決(労働判例925号11頁)で示されたものです。
普通解雇との違い
懲戒解雇と普通解雇は、どちらも雇用契約を終わらせますが、性格と判断の基準が違います。
| 懲戒解雇 | 普通解雇 | |
|---|---|---|
| 性格 | 規律違反に対する制裁としての解雇 | 能力不足や経営不振など、制裁以外の理由による解雇 |
| 有効かどうかの基準 | 懲戒としての相当性(労働契約法第15条)が中心。解雇の規定(第16条)も適用されるとする見解がある | 解雇としての相当性(労働契約法第16条)が問われる |
| 解雇予告手当 | 労働基準監督署長の認定がなければ、予告か手当が必要 | 原則として予告か手当が必要 |
| 退職金 | 規程に不支給・減額の定めがあれば、減らされることがある | 規程の不支給の理由に当たらなければ、規程どおり支払われる |
懲戒解雇として告げた解雇を、会社が後の裁判で普通解雇だったと言い換えることは、一般に認められないと解されています。
会社によっては、懲戒解雇が認められない場合に備えて、普通解雇も一緒に告げていることがあります。解雇の通知書に何と書かれているかを読んでください。
退職金は全額がなくなるとは限らない
退職金制度のある会社で懲戒解雇により退職金が出ないのは、退職金規程などに、懲戒解雇のときは支給しないという定めがあるからです。
不支給の定めがないのに、懲戒解雇を理由に退職金を支払わないことは、原則としてできません。
定めがあっても、全額の不支給が認められるのは、それまでの勤続の功績を失わせるほどの重大な背信行為がある場合などに限られます。
電車内での痴漢行為で懲戒解雇された鉄道会社の社員について、裁判所は懲戒解雇を有効としながら、退職金の3割の支給を認めました。
この裁判例は、東京高等裁判所平成15年12月11日判決(労働判例867号5頁)です。
同判決は、賃金の後払いの性格が強い退職金について、職務外の行為で全額を支給しないには、業務上横領に匹敵する強い背信性が必要だとしました。
懲戒解雇でも予告か手当が原則として必要
予告なしの即日解雇には、原則として平均賃金の30日分以上の手当が必要です(労働基準法第20条第1項)。
従業員の責任による理由で解雇する場合は例外ですが、会社はその理由について労働基準監督署長の認定を受けなければなりません(同条第3項)。
厚生労働省は、認定の例として、職場での窃盗・横領・傷害や、2週間以上正当な理由なく無断欠勤して督促に応じない場合などを挙げています。
懲戒解雇が有効かどうかと、予告や手当を省略できるかどうかは、別の基準で判断されます。

懲戒解雇を告げられたらすること
最初にすること
- 解雇の理由を書いた証明書を会社に請求する(労働基準法第22条第1項・第2項)
- 就業規則のうち、懲戒と退職金の定めを見せてもらう
- 解雇を争うなら、退職届を出さない
出した退職届は、会社が「自分から辞めた」ことの証拠として使うおそれがあります。
よくある質問
懲戒解雇と諭旨解雇の違いは何ですか。
諭旨解雇は、会社が退職届の提出を勧め、本人が願い出る形で退職させる処分です。期限までに退職届を出さなければ解雇するという定めが多いようです。退職金の扱いは、全額支給から全額不支給まで会社によって異なります。
転職先に出す退職証明書に、懲戒解雇と書かれてしまいますか。
退職証明書には、本人が請求しない事項を書いてはなりません(労働基準法第22条第3項)。退職の理由を請求しなければ、使用期間や業務の種類など、求めた事項だけが書かれます。
懲戒解雇の前に言い分を聞かれませんでした。それだけで無効になりますか。
就業規則に弁明の機会を与える定めがあれば、その手続を欠いた懲戒解雇は無効です。定めがない場合については、それだけで無効とするのは難しいとする見解と、適正な手続を欠く処分は無効とする見解があります。

相談のときに用意するもの
懲戒解雇の通知書、就業規則と退職金規程、解雇理由証明書を用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

