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名誉毀損罪が成立する場合と刑罰、逮捕の要件、告訴の期限と示談を解説します
名誉毀損罪でも、逮捕されることがあります。逮捕状が出されるのは、罪を犯したと疑う相当な理由があり、逃亡や証拠隠滅のおそれなどから逮捕の必要があるときです。
名誉毀損罪は親告罪のため、起訴される前に告訴が取り消されれば、起訴されることはありません。
この記事の結論
- 公然と具体的な事実を示して人の評価を下げると、名誉毀損罪です。書いた内容が本当でも、一定の条件を満たさなければ処罰の対象になります。
- 事実を示さずに公然と「バカ」などとけなすと侮辱罪です。侮辱罪の刑罰は令和4年7月7日に引き上げられ、今は拘禁刑や罰金も定められています。
- どちらも親告罪です。告訴の期限は、被害者が犯人を知った日から6か月です。
名誉毀損罪は、事実を示して評価を下げる罪
名誉毀損罪は、公然と事実を示して、人の名誉を傷つけたときに成立します(刑法第230条第1項)。ここでいう名誉とは、その人に対する世間の評価のことです。
示す「事実」は、「前科がある」「不倫している」のように、人の評価を下げる具体的な内容を指します。
示した事実が本当のことでも、それだけでは罪を免れません。条文も、事実が本当かどうかを問わずに処罰すると定めています。罰せられない場合は、後の節で説明します。
評価を下げるおそれがあれば足り、実際に評価が下がったことの証明までは要りません。
刑罰は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
誰でも見られるネットの書込みは「公然」に当たる
「公然」とは、不特定又は多数の人が知ることのできる状態をいいます。誰でも見られる掲示板やSNSへの投稿は、この状態に当たります。
少人数に伝えただけでも、そこから広く伝わるおそれがあるとして、公然に当たるとした判例があります。

侮辱罪との違いは、事実を示したかどうか
事実を示さずに、公然と人をけなした場合は、侮辱罪になります(刑法第231条)。
| 名誉毀損罪 | 侮辱罪 | |
|---|---|---|
| 示す内容 | 具体的な事実(例:「前科がある」) | 事実を含まない悪口(例:「バカ」) |
| 刑罰 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 1年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留又は科料 |
| 起訴に告訴が必要か | 必要(親告罪) | 必要(親告罪) |
侮辱罪の刑罰は、令和4年7月7日に引き上げられました。それまでは、拘留又は科料だけでした。
引上げ前は、侮辱罪で逮捕状により逮捕できるのは、住居が定まらない場合などに限られていました。法務省は、引上げによりこの制限がなくなると説明しています。
逮捕されるのは、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとき
逮捕状による逮捕には、罪を犯したと疑う相当な理由と、逮捕の必要の両方が求められます(刑事訴訟法第199条第1項・第2項)。
裁判官は、明らかに逮捕の必要がないと判断すれば、逮捕状を出しません。
その判断では、本人の年齢や境遇、罪の重さや態様などに照らし、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかを見ます(刑事訴訟規則第143条の3)。
逮捕されなくても、身柄を拘束しないまま捜査が続くことがあります。これを在宅事件といいます。
本当のことを書いても罰せられない場合
公共の利害に関わる事実を、専ら公益を図る目的で示し、真実だと証明されたときは、罰せられません(刑法第230条の2第1項)。
起訴される前の人の犯罪の疑いを書いた場合は、公共の利害に関わるものとして扱われます(同条第2項)。公務員や、公の選挙で選ばれる公務員の候補者に関する事実は、真実だと証明されれば罰せられません(同条第3項)。ただし、公務と関係のない事実はこれに当たらないとした判例があります。
有名人の私生活のように、多くの人が関心を持つというだけでは、公共の利害に関わる事実には当たりません。
個人がインターネットに書き込んだ場合も、真実と信じた理由の有無は、ほかの表現と同じ基準で判断されます。これを示したのが、最高裁判所平成22年3月15日第一小法廷決定(刑集64巻2号1頁)です。
この決定によれば、真実だと証明できなかったときに罪を免れるには、確実な資料や根拠に照らして、真実だと信じた相当な理由が必要です。
告訴の期限と示談
名誉毀損罪と侮辱罪は、告訴がなければ起訴できない親告罪です(刑法第232条第1項)。
告訴できるのは、被害者が犯人を知った日から6か月以内です(刑事訴訟法第235条)。
告訴は、起訴されるまで取り消すことができます。取り消した人は、同じ事件で再び告訴することはできません(刑事訴訟法第237条第1項・第2項)。
示談で起訴を避けるには、告訴がされないままであるか、既にされた告訴が起訴前に実際に取り消される必要があります。取消しの約束だけでは足りません。
刑事の手続とは別に、被害者から民事で損害賠償を求められることもあります。名誉を傷つけた場合の賠償には、慰謝料も含まれます(民法第709条・第710条)。
よくある質問
書き込みを削除すれば、名誉毀損にはなりませんか。
多くの人が見られる状態に一度なり、名誉毀損罪が成立した後は、投稿を削除しても罪は消えません。
匿名で書き込んでも、誰が書いたか分かりますか。
匿名の投稿でも、被害者による発信者情報の開示の請求や、警察の捜査によって、書き込んだ人が特定されることがあります。
名誉毀損罪の時効は何年ですか。
名誉毀損罪は、原則として、犯罪行為が終わった時から3年たつと起訴できなくなります(刑事訴訟法第250条第2項第6号)。侮辱罪も、令和4年7月7日以降の行為は同じです。犯人が国外にいる間などは、この期間の進行が止まります(刑事訴訟法第255条第1項)。告訴の期限(犯人を知った日から6か月)とは別のものです。
亡くなった人について書いた場合も、名誉毀損になりますか。
亡くなった人の名誉を傷つけた場合は、うその事実を示したときに限り処罰されます(刑法第230条第2項)。

弁護士に相談するときに用意するもの
書き込んだ投稿の内容と日時が分かるもの、警察から受け取った書類があれば、用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。
