ボーナス(賞与)を減らされた・払われないとき ― 支給日在籍要件と、退職予定を理由とする減額

机の上で電卓をたたく手と書類 労働

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就業規則の読み方から、裁判例が不支給や減額を認めなかった場合までを解説します

ボーナス(賞与)を払うかどうかと額の決め方は、法律ではなく、就業規則や労働契約の定めで決まります。

就業規則に「支給日に在籍する者に支給する」とあれば、支給日より前に自分から退職した人は、原則として請求できません。

ただし、整理解雇で支給日前に辞めさせられた人や、退職予定を理由に大幅に減らされた人について、会社の扱いを無効とした裁判例があります。

この記事の結論

  • まず就業規則や賃金規程の賞与の定めを読みます。支給時期、額の決め方、支給対象者、減額の定めによって、請求できるかが変わります。
  • 支給日に在籍する人だけに払う定めは、最高裁判所の判決で有効とされました。ただし、整理解雇や支給の遅れで在籍できなかった人には当てはめなかった裁判例があります。
  • 退職予定者の賞与を大幅に減らした事件で、退職予定でない人の賞与の2割を超える減額部分を無効とした裁判例があります。

請求できるかは、会社の定めで決まる

賞与を払うかどうかも、その額も、法律は定めていません。会社と働く人との取決めに委ねられています。

一方で、賞与も労働基準法上の「賃金」に含まれます。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、賞与の定めをするなら、その内容を就業規則に書かなければなりません(労働基準法第89条第4号)。

就業規則・賃金規程で確かめる箇所

  • 支給する時期(例:6月と12月)
  • 額の決め方(基本給の何か月分か、出勤率や人事評価をどう反映するか)
  • 支給の対象となる人(支給日に在籍している人に限るか)
  • 減額や不支給とする場合の定め

就業規則に「会社の業績等を考慮して支給する」とだけあることがあります。支給率や額について会社の決定も合意や慣行もなければ、請求権は生じないとする裁判例が多くあります。

もっとも、過去の支給実績などに照らして、一定額の賞与の請求を認めた裁判例もあります。

就業規則の定めが労働契約の内容となるには、働く人に周知されていることが必要です(労働契約法第7条)。周知されていない規定を理由に、賞与を払わないことは許されません。

支給日在籍要件は、原則として有効とされている

支給日在籍要件とは、査定の対象期間に働いていても、支給日に在籍していない人には賞与を払わないという定めです。

最高裁判所昭和57年10月7日第一小法廷判決(労働判例399号11頁)は、この定めを有効と認めました。自分の都合で支給日前に退職した人は、原則として請求できません。

毎月の給料は、支給日の前に辞めても、働いた日の分を払わなければなりません。賞与は、この点で月給と扱いが違います。

就業規則に書かれていなくても、支給日在籍の扱いが従来からの労使慣行になっていれば、有効とした裁判例があります。

就業規則などで賞与を払う定めがあり、在籍要件の定めも慣行もなければ、在籍した期間に応じた額を請求できるとされています。

クリップで留めた書類の束をめくる手
就業規則や賃金規程の賞与の定めを読みます。

在籍要件を当てはめなかった裁判例

支給日に在籍できなかった理由が本人の選べない事情であったときは、在籍要件を当てはめなかった裁判例があります。

裁判例の判断裁判例
自分の都合での退職不支給を認めた最高裁判所昭和57年10月7日第一小法廷判決(労働判例399号11頁)
普通解雇された事案不支給を認めた東京地方裁判所平成8年9月27日判決(労働判例707号74頁)
定年退職不支給を認めた例がある東京地方裁判所平成8年10月29日判決(労働経済判例速報1639号3頁)
会社の経営上の理由による整理解雇賞与の権利が具体化していた事案で、適用は公序良俗に反し無効東京地方裁判所平成24年4月10日判決(労働判例1055号8頁)
本人の病死考課期間が終わり額が確定した後の病死で、適用は公序良俗に反し無効松山地方裁判所令和4年11月2日判決(労働判例ジャーナル130号2頁)
支給日前に会社を離れた理由と、裁判例の判断

支給が予定日より遅れ、その間に退職した人について、予定日に在籍していれば請求できるとした裁判例もあります。

この裁判例は東京高等裁判所昭和59年8月28日判決(労働判例437号25頁)です。その後、最高裁判所昭和60年3月12日第三小法廷判決(労働経済判例速報1226号25頁)で確定しました。

定年退職は退職日を自分で選べませんが、在籍要件による不支給を認めた裁判例があります。学説では、定年や整理解雇の場合は無効とする見解が有力です。

退職予定を理由とする減額には限度がある

退職予定者の賞与に差を設けること自体は認めつつ、大幅な減額を無効とした裁判例があります。

東京地方裁判所平成8年6月28日判決(労働判例696号17頁)の事案です。会社は、年内に退職する予定の人の賞与を、退職予定でない人の2割に満たない額にしていました。

裁判所は、賞与には将来の働きへの期待も含まれるとして、退職予定者の額に差を設けること自体は認めました。

しかし、期待の部分に当たるのは退職予定でない人の賞与の2割とし、これを超える差は公序良俗に反し無効としました。退職予定でない人の賞与額の8割に当たる支払が認められました。

「退職予定者には支給しない」という規定

中央労働委員会が公表したあっせん事例の解説は、この規定が働く人に周知されていなければ、これを理由に不支給とすることは許されないとしています。

人事評価による減額

中央労働委員会の解説は、賞与の査定が会社の裁量権の範囲を逸脱しない限り、減額を適法とした裁判例を紹介しています。

一方、正当な理由のない不公平な低い評価で賞与を減らされた人に、慰謝料20万円の支払を命じた裁判例もあります。この裁判例は、福岡地方裁判所平成31年4月15日判決(労働判例1205号5頁)です。

よくある質問

ボーナスの支給日の前に退職したら、ボーナスはもらえませんか。

就業規則に支給日在籍要件があれば、自分の都合で支給日前に退職した人は、原則として請求できません。就業規則などで賞与を払う定めがあり、在籍要件の定めも慣行もなければ、在籍した期間に応じた額を請求できると説明されています。

退職届を出したら、ボーナスを減らされました。違法ではないですか。

退職予定者の額に差を設けること自体を認めた裁判例があります。ただ、退職予定者の額を大幅に減らした事件では、退職予定でない人の賞与額を基準に、2割を超えて減額した部分が無効とされました。

会社の業績悪化で解雇され、ボーナスの支給日に在籍できませんでした。

整理解雇で在籍できなかった人について、賞与の権利が具体化していた事案で、在籍要件の適用を無効とした裁判例があります。

未払いのボーナスは、いつまで請求できますか。

賞与は労働基準法上の賃金に当たります。その請求権の消滅時効の期間は、請求できる時から3年です(労働基準法第115条、附則第143条第3項)。


相談の前に用意するもの

相談の前に用意するもの

就業規則・賃金規程(賞与の定め)、雇用契約書、過去の賞与の明細、退職日の分かる書類を用意してください。

本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

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