書面や職場の決まりだけで判断せず経緯と実態を確かめる
放棄書面に署名していても、未払い残業代を請求できる場合があります。書面が残業代を対象にしているかと、自由な判断で放棄したかを検討します。
退職時に「互いに請求がない」とする条項があっても、未払い残業代を含むかを確かめます。残業代の話合いの有無や金額を把握していたかも判断の材料です。
この記事の結論
- 放棄書面に署名していても、未払い残業代を請求できる場合があります。書面が残業代を対象にしているかと、自由な判断で放棄したかを検討します。
- 退職時に「互いに請求がない」とする条項があっても、未払い残業代を含むかを確かめます。残業代の話合いの有無や金額を把握していたかも判断の材料です。
- 本人の自由な判断による放棄が認められれば、請求できなくなることがあります。署名した書面と、署名前の説明ややり取りを残してください。
署名があっても請求できる場合がある
残業代の請求を諦める必要があるかは、署名の有無だけでは決まりません。書面が未払いの残業代まで対象にしているかと、自分の判断で放棄したといえるかを分けて検討します。
退職時に受け取った書面でも、残業代を対象にする合意とは限りません。一方、対象と金額を理解したうえで自ら放棄したと認められれば、請求できなくなることがあります。署名した書面の全文を残してください。
請求が残っていないという条項の範囲を確認する
「この合意以外に互いに請求がない」という条項があっても、対象を確かめる必要があります。退職の条件だけを決めたものか、在職中の未払い賃金も終わらせるものかで意味が変わります。
このような定めを清算条項といいます。残業代について話合いがあったか、未払い額を確認したか、ほかの項目に何が書かれているかも検討します。条項の一文だけを取り出して判断することはできません。
放棄が本人の自由な判断によるものかを見る
賃金の放棄には、本人の自由な判断によることが明らかである必要があります。労働基準法第二十四条第1項の賃金を全額払う原則との関係で、慎重に判断されます。
書面を作るまでの経緯や、受け取る利益と失う利益の関係も判断の材料です。例えば、退職の手続の一部として署名を求められたのか、残業代の額を示して交渉したのかを整理します。
未払い額が分からないまま署名した場合には、その事情も問題になります。書面に署名したという事実だけで、残業代を十分理解して手放したとはいえないことがあります。逆に、署名が無意味になるわけでもありません。
署名前の説明とやり取りを残す
相談では、書面の内容と署名したときの状況を併せて伝えてください。書面を渡された時期、説明した人、残業代について受けた説明を整理します。
メールや退職条件の提案書があれば、書面と一緒に確認します。残業代の話をしていないなら、その経緯も伝えます。説明と異なる文言が入っていたかも大切です。
退職時の支払を受けたことと、残業代を放棄したことは、別々に検討する必要があります。何の名目でいくら払われたのかを、明細や合意書で確認してください。
署名前なら対象と金額を確かめる
これから署名する場合は、残業代まで終わらせる内容かを先に確かめてください。分からないまま「請求は全てない」と確認すると、後で条項の範囲が争いになるおそれがあります。
残業代を合意の対象から外すのか、額を計算して解決するのかを整理します。まだ確かめていない請求があるなら、その点を相談時に伝えてください。既に署名していても、書面を捨てずに内容を確認します。
要点の整理
請求を検討するときの要点
- 署名した書面と説明の経緯を確認する
- 未払い額と合意の対象を整理する
- 署名前に分からない点を相談する
よくある質問
退職時に残業代を請求しないと署名しました。もう請求できませんか。
署名だけでは決まりません。未払い残業代を対象とする合意かと、本人の自由な判断による放棄かを検討します。
会社と互いに請求がないという文言は残業代も含みますか。
書面全体と合意の経緯によります。退職の条件だけか、未払い賃金も含めた話合いかを確認します。
未払い額を知らずに署名した場合はどうなりますか。
金額を把握していなかったことは、自由な判断による放棄かを検討する材料になります。それだけで必ず無効になるとは限りません。
署名する前に何を確認すればよいですか。
残業代を合意の対象にするかと、対象にする場合の金額を確認してください。まだ分からない請求があるなら、相談時に伝えます。

残業代の請求を検討するときの相談
弁護士に相談するときは、契約書、給与明細、働いた時刻や仕事内容が分かる記録を用意してください。会社とのやり取りや署名した書面も伝えてください。
一般的な説明です。個別の事案は資料を踏まえて検討する必要があります。

