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未払いの給料を取り戻す手順を、時効と遅延損害金を含めて解説します
会社は、決まった支払日に給料の全額を払わなければなりません。払われないときは、まず書面で請求し、労働基準監督署への申告や裁判所の手続を使います。
この記事の結論
- 給料は毎月1回以上、決まった日に全額を払う決まりです。違反には30万円以下の罰金の定めがあります。
- 2020年4月以降に支払日が来た給料を請求する権利は、支払日から3年で時効にかかります。退職金は5年です。
- 会社が倒産したときは、要件を満たせば、国の未払賃金立替払制度で、未払額の8割(年齢に応じた上限あり)が立て替えて払われます。
給料は決まった日に全額払う決まり
労働基準法第24条第1項は、原則として、給料を通貨で、本人に直接、全額払うよう会社に命じています。税金や社会保険料の控除、本人の同意を得た口座振込などは認められています。
給料は毎月1回以上、一定の期日を定めて払う必要があります(同条第2項)。臨時に支払われる賃金や賞与には、この毎月払いと期日払いの決まりは適用されません。
この決まりへの違反には、30万円以下の罰金が定められています(労働基準法第120条第1号)。
まず書面で会社に請求する
払われていない月と金額を書き出し、支払期限を付けた書面で会社に請求します。
書面を内容証明郵便で送ると、どの文書をいつ誰あてに出したかを、日本郵便が証明してくれます。配達証明を付ければ、配達された事実も証明されます。
請求の前にそろえる資料
- 約束された給料の額が分かるもの(雇用契約書、労働条件通知書、就業規則)
- 実際に払われた額が分かるもの(給与明細、給料の振込口座の通帳)
- 働いた事実が分かるもの(タイムカード、勤務表、業務の記録)
退職した人は7日以内の支払を求められる
退職した人が請求すれば、会社は7日以内に給料を払わなければなりません(労働基準法第23条第1項)。
給料の支払日が退職後に来る場合でも、請求すれば7日以内に払うのが原則です。
退職金は扱いが違い、就業規則で決めた支払日までは、払われなくてもこの条文の違反になりません。
金額に争いがあっても、会社は争いのない部分を7日以内に払う必要があります(同条第2項)。
遅れた分には遅延損害金がつく
支払日に払われなかった給料には、遅れた日数に応じて遅延損害金を請求できます。率は、在職中か退職後かで違います。
| 在職中 | 退職後 | |
|---|---|---|
| 率 | 年3%(民法の法定利率) | 年14.6% |
| 根拠 | 民法第404条・第419条第1項 | 賃金の支払の確保等に関する法律第6条第1項 |
| 数え始め | 支払日の翌日 | 退職日の翌日(退職後に支払日が来る給料は、支払日の翌日) |
法定利率は3年ごとに見直され、支払が遅れ始めた時点のものが使われます(民法第419条第1項)。2020年4月から2029年3月までは年3%です。それより前に遅れ始めた分は、改正前の利率によります。
年14.6%の定めは、退職金には当てはまりません。天災地変や会社の破産手続開始の決定など、省令で定めるやむを得ない事由で支払が遅れているときは、その事由がある期間には当てはまりません。
時効は3年。古い月の分から順に時効になる
2020年4月以降に支払日が来た給料を請求する権利は、支払日から3年で時効にかかります(労働基準法第115条、附則第143条第3項)。退職金は5年です。
支払日は月ごとに来るので、古い月の分から順に3年が過ぎていきます。時効が完成し、会社が時効を主張すると、その月の分は払わせることができなくなります。会社が未払いを認めたときは、その時から時効が新たに進みます(民法第152条第1項)。
時効が完成する前に請求の書面が会社に届けば、届いた時から6か月は時効が完成しません(民法第150条第1項)。猶予の間に再び請求しても、さらに延びることはありません。
支払督促の申立てや訴えを起こすと、その手続が終わるまで時効は完成しません(民法第147条第1項)。

労働基準監督署に申告する
給料の不払いは労働基準法違反なので、労働基準監督署に申告できます(労働基準法第104条第1項)。
申告したことを理由に、会社が解雇などの不利益な扱いをすることは禁じられています(同条第2項)。
申告を受けた労働基準監督署は、会社を調べて違反を正すよう求めることができます。ただし、本人に代わって給料を取り立てるわけではありません。
給料の不払いには罰則があり、その捜査は労働基準監督官が担います(同法第102条)。監督官は、事件を検察官に送ることもできます。
裁判所の手続で取り戻す
書面で請求しても払われないときは、裁判所の手続を使います。主な手続は次の三つです。
| どこで、何をするか | 特徴 | |
|---|---|---|
| 少額訴訟 | 簡易裁判所で、60万円以下の金銭を請求する | 原則として最初の期日で審理を終える |
| 支払督促 | 簡易裁判所の書記官が、会社から事情を聴かずに支払を命じる | 会社が異議を出すと、通常の訴訟に移る |
| 労働審判 | 地方裁判所で、労働審判官1人と労働審判員2人が審理する | 原則として3回以内の期日で審理を終える |
このほか、通常の訴訟を起こすこともできます。
会社が倒産したときは立替払制度を使う
会社が倒産して給料が払われないときは、国の未払賃金立替払制度を使えます。全国の労働基準監督署と独立行政法人労働者健康安全機構が実施しています。
立替払を受けるための主な要件
- 労災保険の適用事業で、1年以上事業を行っていたこと
- 会社が破産などの法律上の倒産をしたこと、又は中小企業で事業が止まって再開の見込みがなく、払う能力もないと労働基準監督署長が認定したこと
- 破産などの申立て又は認定の申請の6か月前の日から2年の間に退職したこと
対象は、退職日の6か月前の日から請求の前日までに支払日が来た定期の給料と退職金です。賞与は対象外で、未払いの合計が2万円未満のときも対象になりません。
| 未払額として数える上限 | 立替払の上限 | |
|---|---|---|
| 30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
| 30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
| 45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
事実上の倒産の認定の申請は、退職日の翌日から6か月以内にします。立替払の請求は、破産手続開始の決定などの日又は認定の日の翌日から、2年以内にします。
よくある質問
給料未払いを労基に相談しても意味がないのですか。
労働基準監督署は会社に違反を正すよう求めることがありますが、給料を取り立てはしません。回収には書面での請求や裁判所の手続を使います。
給料未払いは犯罪になりますか。
給料を支払日に全額払わないことは労働基準法第24条に違反し、30万円以下の罰金が定められています(同法第120条第1号)。
アルバイトやパートでも未払いの給料を請求できますか。
できます。労働基準法の労働者は、職業の種類を問わず、事業に使われて賃金を受け取る人です。アルバイトやパートも含まれます。
未払いの給料に利息はつきますか。
利率の約束がなければ、在職中は民法の法定利率(2020年4月から2029年3月までに遅れ始めた分は年3%)、退職後は原則として年14.6%の遅延損害金がつきます。数え始めと例外は「遅れた分には遅延損害金がつく」の節のとおりです。

相談の前に用意するもの
払われていない月と金額の一覧と、「請求の前にそろえる資料」で挙げた書類を用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

