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1回と1か月の上限、上限の対象外になる賃金の減り方、処分を争う方法を解説します
懲戒処分として給料を減らす「減給」には、労働基準法第91条による上限があります。1件の行為について減らせるのは平均賃金の1日分の半額まで、合計は1回の給料日分の賃金総額の10分の1までです。
上限の範囲内の減給でも、就業規則に根拠がない処分や、行為に比べて重すぎる処分は無効です。
この記事の結論
- 減給の上限は、1件の事案ごとと、1回の給料日ごとの二つがあります。
- 同じ行為について、重ねて懲戒処分をすることはできません。
- 遅刻・早退した時間分の控除、出勤停止中の無給、仕事の内容が変わる降格に伴う賃金の低下は、この上限の対象外です。
- 客観的で合理的な理由がなく、社会の常識に照らして相当といえない懲戒処分は、労働契約法第15条により無効です。
減給の上限は「1件で平均賃金の半日分」「給料日ごとに1割」
労働基準法第91条は、就業規則で減給の制裁を定めるときの上限を二つ設けています。
| 上限 | 数え方 | |
|---|---|---|
| 1件の事案ごと | 平均賃金の1日分の半額 | 処分の理由となった行為1件ごと |
| 1回の賃金支払期ごと | 賃金総額の10分の1 | 月給制なら1か月分の給料ごと |
どちらか一方でも超える減給は、第91条に違反します。違反した会社には、30万円以下の罰金の定めがあります(労働基準法第120条第1号)。
平均賃金と上限額の計算例
減給の上限に使う平均賃金は、減給処分の意思表示が本人に届いた日を基準に計算します。原則は、その日の前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った額です。
賃金の締切日があるときは、直前の締切日からさかのぼって3か月を数えます。賃金の総額は税金や社会保険料を差し引く前の額で、ボーナスのように3か月を超える期間ごとに支払われるものは入れません。
業務上のけがの療養で休んだ期間とその期間中の賃金などは計算から除き、入社して3か月に満たない人は入社後の期間で計算します。日給制や時給制の人には、最低保障額の決まりがあります。
計算例(月給30万円で、平均賃金が1日1万円とした場合)
1件の行為について減らせる額は、1万円の半額の5000円までです。
1か月の給料から減らせる合計は、30万円の10分の1の3万円までです。
同じ月に別々の行為が7件あって合計が3万5000円になるときは、その月に差し引けるのは3万円までで、残りの5000円は次の給料日に回します。

同じ行為を理由に何度も処分することはできない
同じ行為について、重ねて懲戒処分をすることはできません。
行為をした後に作られた懲戒の定めを、その行為に当てはめることもできません。
上限の対象にならない賃金の減り方
次の表で「当たらない」としたものには、第91条の上限は及びません。
| 減給の制裁か | 理由 | |
|---|---|---|
| 遅刻・早退した時間分の控除 | 当たらない | 働かなかった時間の賃金は、もともと発生しないため |
| 遅刻・早退した時間分を超える控除 | 当たる | 時間分を超えた控除は、制裁とみなされるため |
| 出勤停止中の無給(就業規則に、出勤停止とその間は賃金を払わない旨の定めがある場合) | 当たらない | 出勤停止の結果として賃金が支払われないため |
| 仕事の内容が変わる降格に伴う賃金の低下 | 当たらない | 職務の変更に伴う結果であるため |
| 仕事はそのままで賃金だけを下げる処分 | 当たる | 減給の制裁として扱われるため |
5分の遅刻に30分相当の賃金を差し引くように、時間を切り上げて差し引くことも、時間分を超える控除に当たります。
就業規則で遅刻・欠勤分を差し引かないと定めている場合や、遅刻・欠勤があっても月給を変えない完全月給制の場合は、基本的に差し引くことができません。
上限の範囲内でも無効になる場合
減給額が上限の範囲内でも、懲戒処分として有効でなければ、会社は給料を減らせません。
減給処分が無効になる主な場合
- 就業規則に減給の制裁の定めがない(労働基準法第89条第9号は、制裁を設けるなら就業規則に種類と程度を書くよう求めています)
- 行為が、就業規則に書かれた懲戒の理由に当たらない
- 行為の程度に比べて処分が重すぎる
- 過去に同じような行為をした人の処分と比べて、不公平に重い
労働契約法第15条は、行為の性質や態様などに照らし、懲戒に客観的で合理的な理由がなく、社会の常識に照らして相当といえないときは、その懲戒を無効としています。
減給に納得できないときの相談先
上限を超える減給は労働基準法違反なので、労働基準監督署に申告できます(労働基準法第104条第1項)。申告したことを理由に、会社が解雇などの不利益な扱いをすることは禁じられています(同条第2項)。
都道府県労働局や労働基準監督署の中などにある総合労働相談コーナーでは、賃金の引下げを含む労働問題を無料で相談できます。予約は要りません。
差し引かれた給料を請求する権利は、請求できる時から3年で時効にかかります(労働基準法第115条、附則第143条第3項)。
よくある質問
減給処分は何か月続けられますか。
「3か月間、給料を10%減らす」のような処分は、1件の事案について平均賃金の1日分の半額という上限を超えるため、許されません。
遅刻した分の給料を引かれるのは違法ですか。
遅刻して働かなかった時間分を差し引くことは、減給の制裁に当たりません。その時間分を超えて差し引くと減給の制裁となり、就業規則に根拠が必要で、額も第91条の上限内でなければなりません。
懲戒処分としてボーナスを減らされたときも上限はありますか。
支給の条件が就業規則などで明確に決まっているボーナスから、制裁として差し引くときは、第91条の減給の制裁に当たります。1件の事案について平均賃金の1日分の半額まで、合計はそのボーナスの額の10分の1までです。人事評価(査定)の結果としてボーナスが低くなる場合は、第91条の対象外とされています。
降格で給料が下がったときも、10分の1の上限が適用されますか。
仕事の内容が変わる降格に伴って賃金が下がるのは、減給の制裁に当たらず、上限は適用されません。仕事はそのままで賃金だけを下げる処分には、上限が適用されます。

相談の前に用意するもの
処分の通知書、就業規則の懲戒の定めの部分、減給の前後の給与明細を用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。
