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通勤に当たる移動と、寄り道で外れる場合・戻る場合を解説します
通勤によるけがは、労災保険の「通勤災害」として給付を受けられます。
帰りに寄り道をしたときは、何のための寄り道だったかで、通勤に当たるかどうかが分かれます。
この記事の結論
- 通勤に当たるのは、住居と職場の往復など法律が定める移動を、合理的な経路と方法で行う場合です。届け出た経路に限られません。
- 映画館や飲酒など、通勤と関係のない寄り道をすると、その後の移動も原則として通勤になりません。
- 日用品の購入や通院など法令が定める行為を、やむを得ず最小限度で行った場合は、合理的な経路に戻った後は再び通勤になります。
通勤に当たる移動は3種類
労働者災害補償保険法は、通勤によるけが、病気、障害又は死亡を「通勤災害」とし、保険給付の対象にしています(第7条第1項第3号)。
通勤に当たる移動(労働者災害補償保険法第7条第2項)
- 住居と就業の場所との間の往復
- ある勤め先から別の勤め先への移動(掛け持ちで働く人)
- 単身赴任先の住居と家族の住む住居との間の移動(一定の要件があります)
移動は仕事に関するものであることが必要です。ラッシュを避けるための早出など、ふだんの出勤時刻と多少ずれても、仕事との関連は認められます。
移動そのものが業務の性質を持つときは、通勤災害ではなく業務災害として扱われます。会社が用意した専用の送迎バスで出退勤する場合や、休日に緊急の呼出しを受けて出勤する場合が例です。
「住居」と「就業の場所」はどこか
住居は、本人が住んで日常生活を送り、仕事に出る拠点にしている場所です。家族と離れて職場の近くにアパートを借りているときは、そのアパートが住居になります。
災害や交通機関のストライキのため、やむを得ず会社近くのホテルに泊まったときは、そのホテルが住居になります。
就業の場所とは、その日の仕事を始めるところと、終えるところを指します。決まった区域の用務先を回って自宅と行き来する外回りの人は、最初の用務先が仕事を始める場所、最後の用務先が仕事を終える場所になります。
会社に届け出た経路でなくてもよい
通勤のためにふだん使う経路が複数あれば、どれも合理的な経路です。会社に届け出た経路だけに限られません。
その日の交通事情による回り道や、マイカー通勤の人が借りている車庫を経由する経路も含まれます。ただし、これといった理由がないのに大きく遠回りした経路は、合理的とは認められません。
共働きなどで、ほかに子どもの世話を頼めない場合に、保育園や親戚に子どもを預けるために通る経路も、合理的な経路と認められます。
方法は、電車やバスなどの公共交通機関、本来の使い方に従った自動車や自転車、徒歩など、通常用いられるものであれば合理的な方法です。ふだん使っている方法かどうかは問いません。
一方、運転免許を一度も取ったことのない人が自動車を運転する場合や、泥酔して自動車や自転車を運転する場合は、合理的な方法と認められません。
通勤と関係のない寄り道をすると、その後は通勤から外れる
通勤の途中で、仕事や通勤と関係のない目的で経路をそれることを「逸脱」、経路の上で通勤と関係のない行為をすることを「中断」といいます。
逸脱や中断があると、その間だけでなく、その後の移動も通勤になりません(労働者災害補償保険法第7条第3項)。例えば、帰りに映画を見に行ったり、バーで酒を飲んだりすると、これに当たります。
寄り道に当たらない「ささいな行為」
経路近くの公衆トイレを使う、経路上の店でたばこやジュースを買う、といったささいな行為は、逸脱にも中断にも当たりません。
このような行為の後の移動も、そのまま通勤として扱われます。

日用品の買い物や通院には例外がある
日常生活に必要な行為として厚生労働省令が定めるものには、例外があります(労働者災害補償保険法第7条第3項ただし書)。これを、やむを得ない事由で最小限度の範囲で行うための寄り道であれば、扱いが変わります。
この場合、寄り道をしている間は通勤から外れますが、合理的な経路に戻った後は再び通勤になります。
例外になる行為(労働者災害補償保険法施行規則第8条)
- 日用品を買うこと(これに近い行為を含みます)
- 職業能力を高めるための職業訓練や、学校での教育などを受けること
- 選挙で投票すること(これに近い行為を含みます)
- 通院して、医師の診察か治療を受けること(これに近い行為を含みます)
- 介護が必要な状態にある家族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、配偶者の父母)を、続けて又は繰り返し介護すること
| 寄り道の間 | 合理的な経路に戻った後 | |
|---|---|---|
| 映画館、飲酒など | 通勤に当たらない | 通勤に当たらない |
| 日用品の購入、通院など(やむを得ず最小限度で行う場合) | 通勤に当たらない | 通勤に当たる |
| 公衆トイレ、ジュースの購入など | 逸脱・中断に当たらない | 通勤に当たる |
買い物のために経路をそれたり中断したりしている間に、店の中や敷地の中でけがをしても、通勤災害になりません。店を出て合理的な経路に戻った後は、再び通勤として扱われます。
通勤災害の請求は、通勤災害用の様式で行う
通勤災害の給付は、療養給付、休業給付などの名前で定められています(労働者災害補償保険法第21条)。業務災害の療養補償給付や休業補償給付とは別の給付です。請求書の様式も別です。
| 業務災害 | 通勤災害 | |
|---|---|---|
| 労災指定の医療機関で治療を受ける | 様式第5号 | 様式第16号の3 |
| 休業中の給付を受ける | 様式第8号 | 様式第16号の6 |
労災指定の医療機関で治療を受けるときの請求書は、その医療機関の窓口に出します。休業中の給付の請求書は、労働基準監督署長あてに出します。
交通事故などで、相手が損害賠償の責任を負う事故では、請求書と一緒に「第三者行為災害届」を労働基準監督署に出します。正当な理由なく出さないと、給付が一時差し止められることがあります。
自動車事故では、労災保険と自賠責保険のどちらを先に受けるかを選べます。同じ損害について、二重に支払われることはありません。
よくある質問
通勤災害で、帰りにスーパーに寄った後の事故は対象になりますか。
日用品の購入は例外になる行為です。やむを得ず最小限度の範囲で買い物を済ませ、合理的な経路に戻った後は、再び通勤になります。買い物のために寄り道をしている間の店の中でのけがは対象外です。
会社帰りに飲みに行った後の事故は、通勤災害になりますか。
飲酒のための立ち寄りは逸脱・中断に当たります。その後の帰り道も、原則として通勤になりません。
会社に届け出た経路と違う道で事故に遭いました。通勤災害になりますか。
ふだん通勤に使う経路や、その日の交通事情による回り道であれば、届け出ていない経路でも合理的な経路に当たります。特に理由のない著しい遠回りは除かれます。
通勤途中に駅のトイレに寄ったら、通勤災害の対象から外れますか。
経路近くの公衆トイレを使うことは、ささいな行為として扱われ、逸脱にも中断にも当たりません。その後の移動も通勤のままです。

請求の前に書き出しておくこと
通勤災害用の療養給付の請求書(様式第16号の3)には、住居を出た時刻と、ふだんの通勤の経路・方法を書く欄があります。事故の日に通った経路や、事故を見ていた人を書く欄もあります。事故の日の経路と時刻、立ち寄った先とその用件、目撃した人の連絡先を書き出しておいてください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

