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協議書と公正証書の違い、令和8年4月からの養育費の差押え、作成の手順と手数料を解説します
協議離婚で決めた条件は、夫婦で作る離婚協議書に残せます。お金の支払を約束するなら、強制執行を受け入れる文言を入れた公正証書にしておくと、払われないときに裁判をせずに差押えを申し立てられます。
この記事の結論
- 離婚協議書は夫婦が自分たちで作れます。ただし、協議書だけでは、原則として相手の財産を差し押さえることはできません。
- 公正証書に強制執行を受け入れる文言があれば、裁判を経ずに差押えを申し立てられます。対象は、金額を定めた養育費や慰謝料などの支払の約束です。
- 令和8年4月1日以降に生じた養育費は、毎月の額と支払日を決めた合意書があれば、子1人につき月8万円までは公正証書がなくても差押えを申し立てられます。
- 公証人の手数料は、約束した金額に応じて公証人手数料令で決まります。養育費は、5年分の総額が計算の上限です。
離婚協議書は夫婦で作る合意書
離婚協議書は、協議離婚に当たって夫婦が話し合って決めた条件を書面にしたものです。自分たちで作ることができ、作るだけなら費用はほとんどかかりません。
協議離婚は、離婚届が受理されて初めて成立します(民法第764条、第739条第1項)。協議書を作っただけでは、離婚の効力は生じません。
協議書に書いておくこと
未成年の子がいる場合、親権者のほか、子の監護をする人、親子の交流(面会交流)、養育費などは父母の協議で決めます(民法第766条第1項、第819条第1項)。
離婚協議書に書くことが多い事項
- 離婚することの合意と、離婚届を出す人・時期
- 親権者(父母の双方又は一方)
- 養育費の月額、支払日、支払の終わり、振込先
- 親子の交流(面会交流)の方法
- 財産分与・慰謝料の額と支払方法
- 年金分割の割合
- 住所や勤務先が変わったときの通知
- 清算条項
清算条項を入れるときの注意
清算条項は、協議書に書いたもののほかには、互いに請求しないことを確かめる条項です。入れると、書き漏らした財産分与や慰謝料を後から求めることはできなくなります。
財産分与や慰謝料の話がまとまる前に離婚を先にするときは、それらを清算の対象から外して書く方法があります。財産分与を家庭裁判所に求められるのは、離婚の時から5年以内です(民法第768条第2項)。離婚が令和8年3月までなら、期限は2年です。
日本公証人連合会は、「一切解決済み」と定めても、事情が変わったときに養育費の額や払い方を変えることまでは排除されないと説明しています。
協議書と公正証書の違いは、払われないときに表れる
養育費の一部を除き、協議書だけでは、相手が払わなくても、すぐに財産を差し押さえることはできません。裁判を起こして判決を得るなどの手続が先に必要です。
| 離婚協議書 | 公正証書 | |
|---|---|---|
| 作る人 | 夫婦 | 公証人(公証役場で作る) |
| 費用 | ほとんどかからない | 公証人の手数料がかかる |
| 払われないとき | 判決などを得てから差押えを申し立てる(養育費の一部を除く) | 判決を得ずに差押えを申し立てられる(執行文などの書類は要る) |
| 原本 | 夫婦の手元の書面 | 公証役場に保管され、当事者には正本・謄本が渡される |
公正証書で裁判を経ずに強制執行できるのは、金銭など一定額の支払の約束に限られます(民事執行法第22条第5号)。親子の交流の約束は、公正証書に書いても、これによって強制執行することはできません。
養育費の差押えには特例があります。一部が払われないと、支払日が来ていない将来の分についても、給料の差押えを申し立てられます。給料は、原則として2分の1まで差し押さえられます(民事執行法第151条の2、第152条第3項)。
令和8年4月からは、養育費は合意書でも差し押さえられる
令和8年4月1日に施行された改正民法で、養育費に先取特権という優先権が付きました(民法第306条第3号、第308条の2)。
毎月の額と支払日を決めた合意書があれば、子1人につき月8万円までの部分は、公正証書がなくても差押えを申し立てられます。支払日が令和8年4月1日より前の分は、この仕組みを使えません。合意書で申し立てるときは、相手が署名押印したことが分かる書面など、合意書が父母の意思で作られたことを示す資料も要ります。
月8万円を超える部分や、慰謝料・財産分与の分割払いは、この仕組みの対象外です。これらの不払いに備えるには、前の節で述べた公正証書にしておく方法があります。
公正証書の作り方
公正証書は、夫婦が合意した内容を公証人が文書にするものです。公証人が養育費の額を計算して決めることはありません。
作成までの流れ
- 夫婦で条件を決め、合意の内容を書面にまとめる
- 公証役場に連絡し、合意の内容と必要書類を出す
- 公証人が作った案を確かめ、作成の日を決める
- 作成の日に、公証役場(リモート方式ならウェブ会議)で内容を確かめ、パソコン上で電子サインをする
- 手数料を払い、正本・謄本を受け取る

作成の日には、夫婦の双方が公証役場に出向くのが原則です。代理人に頼むこともでき、その場合は委任の内容を書いた委任状と、本人の印鑑登録証明書が要ります。
令和7年10月1日からは、ウェブ会議で参加するリモート方式でも作れるようになりました。事前の申出と相手の同意が要り、使えるかどうかは公証人が判断します。
公証役場に出す主な書類
- 本人確認書類(印鑑登録証明書と実印、又は運転免許証・マイナンバーカードなどと認印)
- 戸籍謄本(離婚前なら、今の家族全員が載ったもの)
- 不動産を分ける場合は、登記事項証明書と固定資産税の納税通知書又は評価証明書
- 年金分割をする場合は、年金番号の分かる書類
公正証書の費用
公証人の手数料は、約束した金額(目的の価額)に応じて、公証人手数料令で決まっています(同令第9条、別表)。
| 手数料 | |
|---|---|
| 50万円以下 | 3000円 |
| 50万円を超え100万円以下 | 5000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 1万3000円 |
| 500万円を超え1000万円以下 | 2万円 |
| 1000万円を超え3000万円以下 | 2万6000円 |
| 3000万円を超え5000万円以下 | 3万3000円 |
慰謝料・財産分与と養育費は別々の約束として手数料を計算し、合計します。養育費の手数料は支払期間全体の総額を基に計算しますが、計算に使う金額は5年分が上限です(公証人手数料令第13条第1項)。
このほか、証書の枚数による加算や、正本・謄本の交付の手数料(紙で1枚300円)がかかります。
相手が公正証書の作成に応じないとき
公正証書は双方が合意して作るものなので、相手が応じなければ作れません。その場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる方法があります。
調停で合意した内容を書いた調書は、確定判決と同じ効力を持ちます(家事事件手続法第268条第1項)。養育費などが払われないときは、この調書で差押えを申し立てられます。
よくある質問
離婚協議書は自分で作っても有効ですか。
夫婦の双方が署名した協議書は、自分たちで作ったものでも有効です。ただし、相手が払わないときにそのまま差押えに使えるのは、上で説明した養育費の部分に限られます。
離婚届を出した後でも離婚協議書や公正証書は作れますか。
作れます。書面を作ること自体に期限はありませんが、財産分与を家庭裁判所に求める期限は別にあります。離婚した後は相手の協力を得にくくなることがあるため、離婚届を出す前に作るのが一般的です。
公正証書の費用は夫婦のどちらが払うのですか。
どちらが払うかは夫婦で決められます。半分ずつにするなら、その旨を協議書に書いておく例があります。
令和8年3月以前に作った合意書でも、養育費の差押えに使えますか。
使えます。ただし、対象になるのは令和8年4月1日以降に支払日が来た分です。

協議書の案ができたら
自分たちで作った協議書の案は、署名する前に弁護士に見てもらうことができます。案と、相手と取り決めた条件の分かる書面を用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

