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名義、基準の時点、2分の1の割合、借金の扱い、5年の期限を順に解説します
夫婦が結婚している間に二人で築いた財産は、離婚のときや離婚した後に、分け合うことができます。これを財産分与といいます。
この記事の結論
- 婚姻中に夫婦の協力で得た預貯金・不動産・自動車などは、名義にかかわらず対象です。保険は解約返戻金、将来の退職金は支給の見込みが高い場合に対象になります。
- 婚姻前の財産と、相続や親からの贈与で得た財産は、原則として対象外です。対象の財産は、原則として別居した時点で確定します。
- 夫婦で築いた財産を清算する割合は、原則として2分の1です。家庭裁判所への申立ては離婚の翌日から5年以内、令和8年4月1日より前の離婚は2年以内です。
財産分与は、離婚した一方から相手に請求できる
財産分与を求める権利は、協議離婚では民法第768条第1項が、裁判離婚では同法第771条による準用が根拠です。
財産分与の中心は、婚姻中に夫婦で築いた財産の清算です。このほか、離婚後の生活を支える扶養の要素や、慰謝料の要素も含まれるとされています。
離婚の前でも、家庭裁判所の離婚調停の中で、財産分与を話し合うことができます。
対象になる財産・ならない財産
婚姻中に得た財産は、夫と妻のどちらの名義でも、原則として財産分与の対象になります。副業の収入や投資で得た財産も含まれます。
| 主な例 | 扱い | |
|---|---|---|
| 婚姻中に得た財産 | 預貯金、自宅の土地建物、自動車、株式 | 名義にかかわらず対象 |
| 保険 | 生命保険、学資保険 | 基準時の解約返戻金の額が対象(婚姻前に払った保険料の分は除く) |
| 退職金 | まだ支給されていない退職金 | 支給の見込みが高ければ対象 |
| 婚姻前からの財産 | 独身時代の預貯金 | 特有財産として対象外 |
| 相続・贈与で得た財産 | 親から相続した土地、親から贈与された金銭 | 特有財産として対象外 |
夫婦のどちらのものか分からない財産は、夫婦の共有と推定されます(民法第762条第2項)。
自分だけの財産(特有財産)だと主張する人は、そのことを証明する必要があります。証明できなければ、分与の対象として扱われます。
婚姻前に買った家でも、婚姻後に夫婦の収入でローンを返した場合は、婚姻後の返済に対応する割合が、分与の対象として扱われます。
将来の退職金は、就業規則などに支給の定めがあれば、原則として対象にできます。支給の見込みが高いかどうかは、勤務先の性質や支給の根拠の有無などから判断されます。
婚姻期間中の厚生年金の記録は、財産分与とは別に、年金分割の手続で分けます。
対象の財産は、原則として別居した時点で決まる
どの財産を分けるかは、原則として別居した時点を基準に決めます。別居によって、夫婦の協力関係が終わると考えられるためです。
別居した後に得た財産は、離婚の前であっても、原則として対象になりません。
同じ家で暮らしている間は、家庭内別居でも、経済面での協力は続いていると評価されるのが通常です。
不動産や株式の値段は、原則として、分与を決める時点(裁判では裁判の時点)の価格で評価します。
分ける割合は原則として2分の1
財産を築くことへの夫婦それぞれの寄与は、程度が異なることが明らかでない限り、等しいものとされます(民法第768条第3項)。
共働きの夫婦も、一方が家事を担っていた夫婦も、この考え方は同じです。収入に多少の差があっても、原則として2分の1で分けます。
寄与の差が大きく、2分の1では公平といえない場合には、割合を変えることがあります。
家庭裁判所は、財産の額や寄与の程度のほか、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、年齢、心身の状況、職業、収入なども考えて、額と方法を決めます。
借金は、種類によって考慮される
実務では、借金そのものは、原則として財産分与で分ける対象とされていません。ただし、財産を得るための借金や家計のための借金は、分与額を決めるときに考慮されます。
| 主な例 | |
|---|---|
| 考慮される借金 | 自宅の住宅ローン、生活費や医療費の不足を補った借入れ、子の教育ローン |
| 原則として考慮されない借金 | ギャンブルや趣味のための借金、知人に貸すための借入れ |
夫婦で築いた財産がなく借金だけが残っている場合、その借金を分け合うための財産分与は、審判では認められないとされています。
まとまらなければ家庭裁判所へ。期限は離婚の翌日から5年
財産分与は、まず夫婦の話合いで決めます。話合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停又は審判を申し立てます。
申立ての期限は、離婚した日の翌日から5年です。令和8年4月1日より前に離婚した場合は、改正前の決まりにより2年です。
話合いがまとまらず調停が不成立になると審判に移り、裁判官が分与の有無、額及び方法を決めます。
審判では、家庭裁判所が当事者に財産の状況の開示を命じることができます(家事事件手続法第152条の2第2項)。正当な理由なく開示しないと、10万円以下の過料の対象になります(同条第3項)。
財産分与の調停の申立てで求められる主な資料
- 離婚したことが記載された戸籍謄本
- 土地や建物の登記事項証明書と、その評価額の証明書
- 預貯金通帳の写し又は残高証明書
- 申立書、事情説明書(財産分与)、進行に関する照会回答書
よくある質問
専業主婦でも財産分与は半分もらえますか。
寄与の程度が異なることが明らかでない限り、夫婦の寄与は等しいものとされます。一方が家事を担っていた夫婦でも、原則として2分の1です。
別居するときに家の預金を持ち出したら、違法になりますか。
夫婦で築いた財産の一部を持ち出しただけなら、特別な事情がない限り違法にはならないとされています。持ち出した分は、原則として財産分与の対象に含めて計算されます(生活費として適正に使った分は除かれます)。
財産分与を決めずに離婚した後でも、請求できますか。
離婚した後でも、話合いや家庭裁判所の調停・審判で求めることができます。家庭裁判所への申立てには、上で説明した期限があります。

相談の前に用意するもの
別居した日が分かる資料、預貯金通帳の写し、不動産登記事項証明書、保険証券、勤務先の退職金規程を用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

