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罰金のない罪の重さ、捜査の始まり方、弁償と示談の意味を解説します
仕事で管理を任された会社のお金を使い込むと、業務上横領罪に問われます。この罪には罰金刑がありません。弁償と会社との示談は、起訴するかどうかや刑の重さを決めるときに考慮されます。
この記事の結論
- 業務上横領の刑は10年以下の拘禁刑だけで、罰金刑はありません。
- 公訴時効は7年で、横領の行為が終わった時点から数え始めます。
- 返済しても罪は消えません。ただし、弁償や示談は、起訴するかどうかや刑の重さの判断で有利な事情になります。
任されたお金を自分のために使うと横領になる
任されて管理しているお金や物を、任された趣旨に背いて自分のものとして使ったり処分したりすると、横領に当たります。
業務として預かっていた場合は業務上横領罪(刑法第253条)、そうでない場合は単純横領罪(刑法第252条第1項)になります。
業務は職業として行うものに限られません。団体の会計係のように、継続して他人のお金を管理する役目も業務に当たることがあります。
| 単純横領罪 | 業務上横領罪 | |
|---|---|---|
| 条文 | 刑法第252条第1項 | 刑法第253条 |
| 預かった立場 | 業務として預かったのではない | 業務として預かっている |
| 刑 | 5年以下の拘禁刑 | 10年以下の拘禁刑 |
| 公訴時効 | 5年 | 7年 |
罰金で済むことはなく、刑は金額や弁償で変わる
刑法第253条には罰金刑がないので、起訴されて有罪になれば拘禁刑が言い渡されます。
拘禁刑は令和7年6月1日に始まった刑です。同日より前の行為には、改正前の刑である懲役が適用されます。
言い渡される刑が3年以下の拘禁刑であれば、執行猶予が付くことがあります(刑法第25条第1項)。前に拘禁刑以上の刑を受けていないことなどが条件です。
刑の重さは、横領した金額、期間や回数、弁償の有無、示談の成否などを考えて決められます。金額が大きく、長い期間繰り返したほど、刑は重くなる傾向があります。
被害額が大きい事件では、初めての犯行でも実刑になる可能性があります。
捜査は会社の被害届や告訴から始まることが多い
業務上横領は親告罪ではありません。会社の告訴がなくても、検察官は起訴できます。
一般的には、会社が社内調査で不正を見つけ、警察に被害届や告訴状を出したことをきっかけに捜査が始まります。
被害額が大きい場合や、証拠を隠すおそれがある場合は、初めての犯行でも逮捕されることがあります。逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されれば、逮捕されずに捜査が進むこともあります。
会社に発覚したときにしないこと
帳簿や送金の記録を消したり書き換えたりしないでください。証拠隠滅のおそれがあるとみられ、逮捕される危険が高まります。
公訴時効は7年、民事の時効は別に進む
業務上横領の公訴時効は7年です(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。7年の数え始めは、横領の行為が終わった時点です(同法第253条第1項)。
会社が使い込まれたお金の賠償を求める民事の請求は、刑事の公訴時効とは別の制度です。
不法行為による損害賠償の請求権には、会社が損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年という時効期間があります(民法第724条)。
返済しても罪は消えないが、弁償と示談は処分を左右する
使い込んだお金を返しても、既に成立した業務上横領罪の刑事責任が当然に消えるわけではありません。
検察官は、犯罪後の情況なども考えて、起訴しないことができます(刑事訴訟法第248条)。弁償や示談は、この判断と裁判での刑の重さの判断で、有利な事情として考慮されます。

示談が成立すると、会社が被害届や告訴を見送り、事件にならずに終わることがあります。
示談書には、弁償の額と支払方法のほか、会社が刑事告訴をしないことや処罰を望まないことを書くかどうかを話し合います。
全額を一度に返せないときは、分割で返す計画を示して示談を申し入れる方法があります。
よくある質問
業務上横領の時効は何年ですか。
公訴時効は7年です。数え始めるのは、横領の行為が終わった時点です。会社からの損害賠償の請求は、これとは別の民事の時効によります。
業務上横領は親告罪ですか。
親告罪ではありません。会社が告訴しなくても、検察官は起訴できます。
全額返済すれば刑事事件になりませんか。
返済しても刑事責任が当然に消えるわけではありません。ただし、示談が成立して、会社が被害届や告訴を見送ることはあります。

相談の前に用意するもの
会社から届いた書面と、返済した分の記録を用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。
