保険会社から治療終了を求められたときに確認したいこと
交通事故の治療中、保険会社から「そろそろ症状固定です」「来月から治療費を支払えません」と言われることがあります。しかし、保険会社が治療費の支払対応を終える日と、医学的な意味で症状固定に至る日は、当然に同じではありません。
症状固定は、その後の治療費や後遺障害の申請、示談交渉を考える境目になります。言葉の意味と、誰の意見を基に時期を考えるのかを整理します。
症状固定とは、治療を続けても改善を見込みにくい状態
症状固定とは、医学的に見て、治療を続けても症状の改善を見込みにくくなった状態をいいます。痛みが完全になくなった日だけを指すものではありません。症状が残っていても、治療による大きな改善が期待しにくくなれば、症状固定と判断されることがあります。
「まだ痛い」だけでは時期を決められません
現在の症状、これまでの改善経過、行われている治療、今後その治療を続けることで改善が見込めるかを確認します。けがの種類や重さが違えば、適切な時期も異なります。
主治医の見解を確認することが出発点
症状固定には医学的な判断が含まれます。診察を重ねて症状の移り変わりや治療内容を見てきた主治医に、今後の回復の見通しを尋ねることが出発点です。
診察時に確認したい点
- 現在残っている症状は何か
- 治療によって症状はどのように変化してきたか
- 今後も同じ治療を続けることで改善が見込めるか
- 治療を一区切りとする時期について医師はどう見ているか
保険会社から期限を示されたときも、まず主治医へ、その時点で治療を続ける医学的な必要性があるかを尋ねます。必要性があるという見解であれば、その理由を保険会社へ説明し、治療費対応の延長を求めることを検討します。
保険会社の治療費打切りは、症状固定の決定ではない
任意保険会社が医療機関へ治療費を直接支払う対応を終えても、それだけで症状固定の日が確定するわけではありません。保険会社の支払対応と、治療を続ける必要性についての医学的な判断は、分けて考える必要があります。

もっとも、保険会社の対応終了後も治療を続ける場合は、いったん自分で治療費を負担することがあります。健康保険を利用できるか、後から治療費を請求するために何を保存すべきかも、治療を中断する前に確認しましょう。
症状固定になると、損害の考え方が切り替わる
症状固定までの間は、必要で相当な治療費、通院に伴う休業損害、入通院慰謝料などを検討します。症状固定後に症状が残った場合は、後遺障害の等級認定を申請し、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるかを検討する段階へ移ります。
したがって、症状固定をいつとするかは、単に通院を終える日の問題ではありません。十分な治療を受けたか、残った症状を診断書や検査資料へ適切に残せるか、その後の後遺障害申請をどう進めるかにも関わります。
急いで同意する前に、治療経過を整理する
保険会社から症状固定や治療費終了を提案されたときは、事故後の症状、通院先、治療内容、症状の改善状況を時系列で整理します。そのうえで、主治医の見解を確認します。
手元にそろえておきたい資料
- 保険会社から届いた治療費終了の通知
- 診断書や検査結果、画像の情報
- 通院日と症状の変化を記録したメモ
- 仕事や日常生活で困っていることの記録
主治医は治療の必要性を医学的に判断しますが、最終的な損害賠償の範囲まで決めるわけではありません。保険会社と見解が食い違う場合や、後遺障害申請が見込まれる場合は、治療を終える前に弁護士へ相談することをお勧めします。
よくある質問
保険会社が指定した日が症状固定日になりますか。
保険会社が治療費対応を終える日だけで、症状固定日が当然に決まるわけではありません。治療経過を把握している主治医の医学的な見解を確認します。
痛みが残っていれば、症状固定ではありませんか。
痛みが残っていても、治療を続けることで改善が見込めるかによって判断が変わります。残っている症状と今後の治療効果を主治医へ確認してください。
治療費を打ち切られたら通院できませんか。
通院自体が禁止されるわけではありませんが、いったん自己負担になることがあります。健康保険を使って通院を続け、後で相手方の自賠責保険へ治療費を請求する方法があります。ただし自賠責のけがの分は、治療費・休業損害・慰謝料などを合わせて120万円が上限ですので、それまでにいくら支払われているかを確かめておく必要があります。
症状固定後も症状が残ったらどうしますか。
後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害の等級認定を申請するかを検討します。申請前に症状と検査結果が資料へ記載されているかを確認します。

治療終了や症状固定を提案された方へ
保険会社の通知、診断書や検査結果、通院記録をまとめてください。主治医の見解と治療経過を踏まえ、治療費対応の延長を求めるか、症状固定後の申請へ進むかを検討します。
本稿は、交通事故における症状固定について一般的な考え方を説明したものです。適切な時期、治療費の負担、後遺障害申請の見通しは、けがの内容、治療経過、医師の見解などによって異なります。個別の事案については、資料を確認したうえでの検討が必要です。

