手続の負担と提出資料への関わり方を比べて選びます
交通事故の治療を終えても症状が残り、後遺障害の等級認定を申請することになったとき、申請方法には「事前認定」と「被害者請求」があります。どちらも、後遺障害診断書などの資料を基に審査を受ける手続ですが、書類を集めて提出する人が異なります。
相手方の任意保険会社に手続を任せるのか、被害者側で資料をそろえて自賠責保険会社へ請求するのか。負担の軽さだけでなく、提出資料を自分で確認し、必要な資料を加えたいかという観点から選ぶことが大切です。
この記事の結論
- 事前認定は任意保険会社を通じて進めます。被害者請求は、加害車両の自賠責保険会社に被害者側から直接請求する手続です。
- 被害者請求では、提出資料を自分で整え、示談の成立前でも支払を受けることができます。ただし、調査と支払判断が必要です。
- 申請方法だけで認定結果が決まるわけではありません。医療資料の内容と、書類を集める負担を踏まえて選びます。
二つの方法は審査を受けるまでの入口が違う
事前認定では、加害者側の任意保険会社が必要書類を集め、自賠責の調査部門へ提出します。被害者は、通常、医師に作成してもらった後遺障害診断書を任意保険会社へ渡し、その後の手続を任せます。
これに対し、被害者請求では、被害者が加害車両の自賠責保険会社に必要書類を提出します。被害者本人が進めることも、弁護士に依頼して進めることもできます。
審査の目的は共通です
いずれの方法でも、後遺障害診断書、診断書、診療報酬明細書、画像や検査結果などを基に、残った症状が後遺障害の等級に当てはまるかが審査されます。申請方法の名前が違うからといって、別の等級表が使われるわけではありません。
| 事前認定 | 被害者請求 | |
|---|---|---|
| 手続を進める人 | 相手方の任意保険会社 | 被害者本人又は依頼した弁護士 |
| 書類の提出先 | 任意保険会社を通じて調査を依頼 | 加害車両の自賠責保険会社 |
| 支払の時期 | 通常は示談で金額を決めた後 | 調査・支払判断を経て示談前でも可能 |
| 認定の基準 | 自賠責保険の等級表 | 自賠責保険の等級表 |
事前認定の特徴―手続の負担を抑えやすい
事前認定の利点は、被害者が自分で多数の書類を集め、提出する負担を抑えやすいことです。相手方の任意保険会社が治療費を一括して支払っている場合には、その保険会社が既に診断書や診療報酬明細書を持っていることもあります。
事前認定を選ぶ際に確認したいこと
- 任意保険会社へ渡す書類は何か
- どの資料が審査機関へ提出されるのか
- 不足する検査結果や画像がないか
- 結果が出たとき、理由を含む通知を受け取れるか
一方、書類の収集と提出を任意保険会社に任せるため、被害者側からは、どの資料が提出されたかを把握しにくいことがあります。手続を任せる場合でも、症状を裏付ける検査や画像がそろっているかは、申請前に確認しておくと安心です。
被害者請求の特徴―提出資料を自分で整えられる
被害者請求では、被害者側が必要書類を集めて提出します。交通事故証明書、診断書、診療報酬明細書、休業損害に関する資料など、事案に応じた書類が必要になります。正確な必要書類は、自賠責保険会社へ確認します。
被害者請求では、示談が成立する前でも、自賠責保険の支払を受けることができます。後遺障害の等級や損害額の調査を経て、支払限度額の範囲で支払われます。
事前認定は、任意保険会社が示談交渉に先立って等級を確認する手続です。認定の通知だけで入金されるものではなく、通常は示談で賠償額を決めてから支払を受けます。

被害者側で資料を確認できるため、後遺障害診断書のほか、症状の経過や検査結果を示す資料など、審査に必要と考える資料をそろえて提出できます。ただし、医療機関から資料を取り寄せ、書類の不足がないかを確認する作業が生じます。
弁護士に依頼する方法もあります
被害者請求は、被害者本人だけができる手続ではありません。弁護士に依頼すれば、必要資料の確認、医療機関からの資料収集、自賠責保険会社への提出などを任せることができます。
被害者請求には時効があります。後遺障害については、原則として症状固定日の翌日から3年以内に請求します。期限までに請求できない見込みなら、自賠責保険会社に時効への対応を確認してください。
選ぶ基準は「負担」と「資料への関与」
書類を集める時間や手間をなるべく減らしたい場合は、事前認定が選択肢になります。これに対し、提出前に医療資料の内容を確認したい場合や、症状を裏付ける資料を被害者側の判断で加えたい場合は、被害者請求を検討する意味があります。
選択を考える四つの視点
- 自分で書類を集める時間と負担を負えるか
- 提出される医療資料を事前に確認したいか
- 症状の経過や検査結果を補う資料があるか
- 専門家に資料収集と申請を任せる必要があるか
被害者請求を選べば必ず認定される、又は事前認定では適切な認定を受けられない、という関係ではありません。どちらの方法でも、症状と事故との関係や医学的な裏付けが審査されます。自分の事案で重視したい点を整理して選びましょう。
申請方法を決める前に診断書と検査資料を確認する
申請方法を選ぶ前提として、治療後にどの症状が残っているのか、その症状が後遺障害診断書に記載されているかを確認します。画像検査や神経学的検査を受けている場合は、その結果が提出資料に含まれるかも確認します。
審査は主に書面で行われます。申請後に口頭で事情を補えば足りると考えず、事故後の症状の経過と医学的な資料を、提出前に整理することが重要です。どの資料を提出すべきか判断しにくいときは、申請前に交通事故を扱う弁護士へ相談してください。
要点の整理
申請前に押さえておくこと
- 事前認定は任意保険会社を通じ、被害者請求は被害者側から進めます。
- 被害者請求では資料を自分で整え、示談前に支払を受けられる場合があります。
- 申請方法だけで認定の結果が決まるわけではありません。
- 後遺障害の被害者請求は原則として症状固定日の翌日から3年以内です。
よくある質問
事前認定と被害者請求では、審査基準が違いますか。
申請の入口は異なりますが、いずれも提出された医療資料などを基に、後遺障害の等級表に該当するかが審査されます。
事前認定では、被害者は何もしなくてよいのですか。
通常は後遺障害診断書を取得して任意保険会社へ渡します。また、症状を裏付ける検査や画像がそろっているかを確認することが大切です。
被害者請求は自分でしなければなりませんか。
弁護士に依頼し、資料収集や自賠責保険会社への提出を任せることもできます。
どちらを選べば等級が認定されやすいですか。
申請方法だけで認定結果が決まるとはいえません。残った症状、事故との関係、検査結果などの医学的な裏付けが重要です。
被害者請求はいつまでにする必要がありますか。
後遺障害の被害者請求は、原則として症状固定日の翌日から3年以内です。長い治療や交渉だけで期限が延びるとは限らないため、自賠責保険会社に確認してください。

後遺障害の申請方法で迷っている方へ
後遺障害診断書、診断書や診療報酬明細書、画像や検査結果、保険会社から届いた書類をまとめてください。事前認定に任せるか、被害者請求で進めるかを、資料の内容と手続の負担を踏まえて検討します。
本稿は、後遺障害申請の事前認定と被害者請求について、一般的な仕組みを説明したものです。必要書類や適切な進め方は、事故の内容、治療経過、保険会社の対応などによって異なります。個別の事案については、資料を確認したうえでの検討が必要です。

