学生に後遺障害が残ったら、逸失利益はどう計算する?

机の上に積まれた書類と眼鏡 交通事故

事故当時に収入がなくても、将来の働く力をゼロとは考えません

交通事故で学生に後遺障害が残った場合、「まだ働いていないので、将来の減収も証明できないのでは」と心配されることがあります。しかし、事故時に収入がなかったことだけを理由に、逸失利益がゼロになるわけではありません。

学生については、厚生労働省の賃金統計に示された平均賃金を手掛かりに、将来得られたと考えられる収入を検討します。学校の種類や専攻、資格取得の見込みなどによって、どの平均賃金を用いるかが問題になることもあります。

逸失利益は、後遺障害による将来の減収を補うもの

後遺障害による逸失利益とは、事故によって働く力が制限され、将来の収入が減ることに対する補償です。既に働いている人であれば事故前の収入を出発点にしやすい一方、学生には通常、卒業後の職業収入がまだありません。

アルバイト代だけで決まるわけではありません

学生が事故時にアルバイトをしていても、その金額が将来にわたる収入水準をそのまま表すとは限りません。卒業後に就職して働く可能性を踏まえ、将来の収入を推定します。

このように実際の収入額をそのまま使うことが難しい場合に、賃金センサスと呼ばれる公的な統計が使われます。

賃金センサスの平均賃金が出発点になる

賃金センサスは、厚生労働省が行う賃金構造基本統計調査の結果です。性別、年齢、学歴、職種などの区分ごとに賃金の状況がまとめられています。学生の逸失利益では、この統計の平均賃金を基礎収入として用いることが検討されます。

計算の前提として検討すること

  • どの区分の平均賃金を基礎収入とするか
  • 後遺障害によって働く力がどの程度失われるか
  • その影響が将来どのくらい続くか
  • 働き始める時期をいつと考えるか(原則は18歳から、大学へ進む見込みがあれば卒業予定の年齢から、いずれも原則として67歳までを考えます)

平均賃金を使う場合でも、統計の数字を一つ選べば自動的に金額が決まるわけではありません。学生の年齢や進学状況、後遺障害の内容などを併せて検討します。

小学生から高校生までは、一般的な平均賃金を考える

小学生、中学生、高校生は、将来どの職業に就くかがまだ決まっていないのが通常です。そのため、特定の職業の収入を予測するのではなく、幅広い労働者を対象とした平均賃金を基に考える方法が用いられます。

ここで注意していただきたいのが、被害者が女子の未成年者である場合です。女性だけの平均賃金ではなく、男女を合わせた全労働者の平均賃金を用いるのが一般的な扱いです。保険会社から女性の平均賃金を前提とした計算を示されたときは、この点を確かめてください。

将来の収入に関する資料を確認する場面
現在の収入がない学生については、将来の就労可能性を統計と個別事情から検討します。

もっとも、後遺障害の内容によっては、働く力への影響の程度が争われます。等級が認定されたという事実だけでなく、残った症状が将来の仕事にどのような支障を与えるかを具体的に考える必要があります。

大学生や専門学校生では、専攻と職業の結び付きも問題になる

大学生、大学院生、専門学校生については、学歴を問わない平均賃金ではなく、大学を卒業した人の平均賃金を用いることが多く、さらに特定の職種の平均賃金を用いる余地もあります。ただし、専攻しているというだけで、その職種に就くことが確実とは限りません。

特定の職種を前提にするときの資料例

  • 在学している学部や専門課程の内容
  • 取得済み又は取得を目指している資格
  • 実習や試験、卒業までの進行状況
  • 内定や就職活動など進路に関する記録

目指していた職業と学業の内容が強く結び付いているほど、その職種の平均賃金を用いる理由を説明しやすくなります。反対に、進路がまだ定まっていない場合は、より一般的な平均賃金を用いるべきだという反論が想定されます。

学生だからこそ、事故前の進路を示す記録が重要

学生には長期間の給与明細がないため、事故前にどのような進路を考え、どこまで準備していたかを別の資料で示します。在学証明書、成績や履修の記録、資格試験の受験記録、就職活動の資料などは、将来の働き方を考える材料になります。

また、後遺障害が学業や実習、資格取得、希望する職種にどのような影響を与えるかも整理します。症状の存在だけでなく、できなくなった動作や継続が難しくなった活動を具体的に記録しておくことが大切です。

進路変更があった場合

事故後に進学先や志望職種を変更した場合は、その理由と後遺障害との関係を説明できる資料を残します。事故と関係のない事情による変更と区別できるようにするためです。

よくある質問

事故当時に収入がなくても逸失利益を請求できますか。

学生については、将来就職して収入を得る可能性を踏まえ、賃金センサスの平均賃金を用いて検討することがあります。

アルバイト代が基礎収入になりますか。

アルバイト収入がある場合でも、それだけが卒業後の収入水準を示すとは限りません。学校や進路などを踏まえて将来の収入を検討します。

大学の専攻に対応する職種の平均賃金を使えますか。

専攻、資格、実習、就職活動などから、その職種に就く見込みを具体的に説明できる場合には検討の余地があります。

何を準備すればよいですか。

在学・履修・成績の記録、資格試験や就職活動の資料、後遺障害が学業や実習に及ぼす影響の記録などを整理します。


学生の後遺障害と将来の収入が心配な方へ

学生の後遺障害と将来の収入が心配な方へ

後遺障害の認定結果、診断書や検査資料に加え、学校、専攻、資格、就職活動に関する資料をまとめてください。どの平均賃金を基にし、将来への影響をどのように説明するかを検討します。

本稿は、学生に後遺障害が残った場合の逸失利益について一般的な考え方を説明したものです。基礎収入や働く力への影響は、年齢、学校、専攻、後遺障害の内容、進路の具体性などによって異なります。個別の事案については、資料を確認したうえでの検討が必要です。

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