「代車は2週間までです」と言われたら ― 期間と車種の決まり方

立体駐車場に並んで停められた何台もの車 交通事故

2週間は目安であって、上限ではありません

追突されて車を修理に出した。仕事にも買い物にも車が要るので代車を借りたところ、相手方の保険会社から「代車は2週間までです」と言われた。しかし部品が届かず、修理は1か月半かかった。差額は自分で払うほかないのだろうか。

2週間という数字は、実務でよく使われる目安ではありますが、決まった上限ではありません。認められる期間は、実際に要した期間だけでなく、その期間を要した理由や、早く直そうとしていたかどうかも踏まえて判断されます。この記事では、期間と車種の決まり方を整理します。

代車費用が認められる前提

代車の費用が損害として認められるかを考えるとき、まず問題になるのは二つです。一つは、代わりの車がどうしても要るという事情。もう一つは、代車を使った期間が、修理又は買替えに通常必要な期間として相当だといえることです。相当かどうかは、事故の内容、修理の方法、部品の調達の状況などを踏まえて判断されます。

必要性は、車がないと生活や仕事が回らないという事情です。通勤に使っている、子供の送迎に要る、公共の交通機関では代えられない地域に住んでいる。こうした事情は、後から思い出して並べるよりも、修理に出す前の段階で保険会社に伝え、伝えた日付とともに記録に残しておいてください。

先に確かめておいてください

代車を借りる前に、代車費用として何日分まで支払う予定なのか、その理由と併せて保険会社に確かめておくことをお勧めします。これは相手方に譲るための確認ではありません。認める期間に食い違いがあるのなら、それが分かった時点でその理由を尋ね、記録を残しておく方が後の話合いが楽になるからです。電話で確かめたときは、日時、担当者の名前、回答の内容を書き留めておいてください。

2週間、1か月という数字の正体

直すだけの事案であれば、おおむね14日ほどまでは、相手方の保険会社から期間が長すぎると争われにくい傾向にあります。買い替える場合には、30日ほどまでは見込んでもらえると考えられています。

ここで取り違えないでいただきたいのは、この数字が、交渉で争いになりにくいおおよその目安という意味であって、上限の取決めではないということです。本来問われているのは、直し終わる、あるいは買い替え終わるまでに要する日数として、どこまでが妥当といえるかです。実際にかかった日数がそのまま全部認められるという意味ではありません。この目安を超えたときに説明を求められるのは、日数そのものではなく、そこまで延びた事情です。

期間が延びたとき、理由がどちらにあるか

裁判例をみると、修理や買替えが遅れた原因が加害者側にある場合や、輸入車で部品の取り寄せに時間がかかる場合などには、より長い期間を認めたものがあります。二つ挙げます。

参考・長い期間を認めた裁判例

  • 京都地方裁判所平成23年2月1日判決・交通事故民事裁判例集44巻1号187頁。通常であれば修理に1か月程度と考えられる事案で、保険会社の調査に時間を要したことを踏まえ、40日分の代車費用を認めた
  • 名古屋地方裁判所平成29年12月26日判決・交通事故民事裁判例集50巻6号1557頁。輸入車の直しに当たって部品を国外から手配しなければならず、車が戻るまでに3か月かかった事案で、おおよそその全期間分を認めた

並べてみると、共通しているのは、長くかかったことについて被害者の側に落ち度がないという点です。部品が届くのを待っていた、保険会社の調査に時間がかかった。どちらも被害者が縮められる時間ではありません。

整備工場で車の状態を確かめている様子
いつ入庫し、いつ着工できたのか。日付が残っていれば、期間の説明ができます。

だから、日付を残しておく

期間の話は、結局のところ日付の話です。次の日付が分かれば、遅れの原因がどこにあったのかを示せます。

控えておきたい日付

  • 事故に遭った日
  • 修理工場に車を預けた日(入庫日)
  • その工場の名前と連絡先を保険会社に伝えた日
  • 保険会社の担当者が修理工場に連絡を入れた日
  • 修理の内容と金額について、保険会社と修理工場の話がまとまった日、実際に修理を始めた日(着工日)
  • 部品の取り寄せに入った日と、届いた日
  • 修理が終わって車を受け取った日(納車日)

修理工場に記録が残っていないかを確かめてみてください。もっとも、記録の残し方は工場によって違いますので、代車を返した後に一からたどるより、借りている間にご自身で控えておく方が確実です。

高級車や輸入車は、どこまで認められるのか

車種やグレードは、壊れた車と同じ程度のものが基準になります。軽自動車に乗っていた方が高級車を借りた場合、その車でなければならない事情がなければ、料金の差は認められないことがあります。

問題になるのは、もともと高級な輸入車に乗っていた場合です。借りる目的は移動の手立てを確保することにあるという見方から、同じ格の車を借りても、国産の上級車を借りたのと同じ程度の額しか認めなかった裁判例があります。

参考・代車の料金を制限した裁判例

  • 東京地方裁判所平成8年5月29日判決・交通事故民事裁判例集29巻3号810頁。ロールス・ロイスの代わりに1日4万円のメルセデス・ベンツを借りた事案で、国産の上級車の相場が妥当だとして、1日2万円までを認めた
  • 東京地方裁判所平成19年11月29日判決・交通事故民事裁判例集40巻6号1543頁。メルセデス・ベンツの代車として同じ車種を1日約4万円で使った事案で、1日1万5000円に限って認めた

それでも同じ車が必要だというとき

仕事で顧客を乗せるなど、同じ格の車でなければ困る事情があるのであれば、顧客を乗せる頻度、仕事の上で必要とされる車格、ほかの車では差し支えが生じる理由を具体的に述べ、勤務先の資料や使用の記録があれば併せて示すことになります。ただし、裁判になった場合には一部しか認められないことがあるという前提で決めていただく必要があります。差額が自分の負担になり得ることを承知のうえで借りるのか、それを避けて国産車で済ませるのか。借りる前に決めておく話です。

まず手元でできること

代車費用でもめたときに効くのは、記憶ではなく日付と書面です。

そろえておく資料

  • レンタカーの契約書と領収書(借りた日、返した日、1日当たりの料金が分かるもの)
  • 修理工場が発行した明細書と、入庫日・着工日・納車日が分かる資料
  • 部品の取り寄せに時間がかかった旨を修理工場に書いてもらったもの
  • 保険会社とのやり取りの記録(日付と、誰が何を言ったか)
  • 車が生活や仕事にどう要るのかを説明できるもの(通勤の経路、送迎の予定など)

「2週間までです」と言われたときに、まず説明することになるのは、修理にこれだけかかった、その理由はこれである、そしてその理由は自分の側にはない、という順番の話です。もっとも、1日当たりの料金が相当かどうかも、これとは別に問題になることがあります。

この記事で確かめた本

Q&A交通事故の示談交渉における保険会社への主張・反論例

よくある質問

「代車は2週間まで」と言われました。それが上限なのですか。

上限ではありません。直すだけの事案で14日ほどまでなら争われにくい、というおおよその目安にすぎません。本来問われているのは、直し終わるまでに要した日数が妥当かどうかですので、実際にそれ以上かかったのであれば、延びた事情を示して求めることになります。

部品が届かず、修理が3か月かかりました。それでも認められますか。

認められた裁判例があります。輸入車の部品を国外から手配する必要があり、車が戻るまでに3か月かかった事案で、おおよそその全期間分を認めたものです。もっとも、事案ごとの判断ですので、部品の到着を待っていた期間であることを、修理工場の資料で示せるようにしておいてください。

保険会社の手続が遅く、着工が遅れました。その分はどうなりますか。

遅れの原因が加害者側にある場合に、通常より長い期間を認めた裁判例があります。保険会社の調査に時間を要したことを踏まえて40日分を認めたものです。入庫した日、工場を保険会社に伝えた日、保険会社が工場に連絡した日、修理の内容と金額について話がまとまった日を控えておくことが大切です。

買替えの場合は、どのくらいみてもらえますか。

30日ほどまでは見込んでもらえると考えられています。ただし、これもおおよその目安です。借りる前に、何日分まで支払う予定なのかを相手方に確かめておくことをお勧めします。

普段は輸入車に乗っています。同じ車を借りてよいですか。

同じ格の車を借りると、その全額が認められないことがあります。借りる目的は移動の手立てを確保することにあるという見方から、国産の上級車を借りたのと同じ程度の額しか認めなかった裁判例があります。同じ水準の車が必要だという事情があるのであれば、それを具体的に述べて交渉することになりますが、差額が自分の負担になり得ることを前提に決めていただく必要があります。


代車の期間で折り合わない方へ

代車の期間で折り合わない方へ

レンタカーの契約書と領収書、修理工場の明細、入庫から納車までの日付が分かる書面をご用意ください。あわせて、保険会社とのやり取りの日付が分かるものがあれば確かめやすくなります。日付に加えて、修理の内容と遅れた理由が分かる資料があると、期間の説明を組み立てやすくなります。

本稿は、車を修理あるいは買替えする間の代車費用について、一般的な考え方と裁判例の傾向を整理したものです。認められる期間や金額は、車の使用の状況、修理に要した期間とその原因、代車の車種などによって異なります。個別の事案については、資料に即した検討が必要です。

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