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問われる罪と刑の重さ、故意の判断、逮捕後の流れと示談を解説します
詐欺かもしれないと分かりながら被害者から現金などを受け取る「受け子」は、だます電話をかけた仲間と共に、詐欺罪の共同正犯として処罰されます。
この記事の結論
- 仲間と共謀して受取りを担った受け子は、電話でだます役と共に詐欺罪の共同正犯になります。被害者のだまされたふり作戦を知らずに受取りに加わった場合も、詐欺未遂罪の責任を負います。
- 「詐欺だとは知らなかった」と言っても、詐欺かもしれないと分かって引き受けていれば故意があるとされます。最高裁判所も、空室で他人になりすまして荷物を受け取っていた人に故意を認めました。
- 前科がなくても実刑になることがあります。被害弁償と示談は、起訴するかどうかや刑の重さの判断で考慮されます。
受け子は詐欺罪の共同正犯になる
受け子とは、だまされた人のもとへ出向くなどして、現金やカードを手にする役目の人です。うそをついた人とは別人でも、仲間と共謀して受取りを担えば、共同して犯罪を実行した者として詐欺罪の正犯になります(刑法第60条、第246条第1項)。
だます電話の後で加わった場合も同じです。最高裁判所は、仲間がうそをついた後に荷物の受取りに加わった人について、詐欺未遂罪の共同正犯の責任を認めました(最高裁判所平成29年12月11日第三小法廷決定・刑集71巻10号535頁)。
この事件では、被害者が詐欺に気付き、警察に協力してだまされたふりをしていました。受け子は、その作戦が始まったことを知らないまま受取りに加わっていました。
| 問われる主な罪 | 法定刑 | |
|---|---|---|
| 被害者から現金やキャッシュカードを受け取る | 詐欺罪(刑法第246条第1項) | 10年以下の拘禁刑 |
| 被害者のすきを見てキャッシュカードを偽物とすり替える | 窃盗罪(刑法第235条) | 10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 詐欺の実行に着手したが、だまし取るに至らなかった(だまされたふり作戦など) | 詐欺未遂罪(刑法第250条) | 詐欺罪と同じ。刑を減軽することができる(刑法第43条) |
前科がなくても実刑になることがある
詐欺罪は、罰金を払って終わることのない罪です。詐欺1件ごとに刑法が用意している刑罰は、最長10年の拘禁刑だけです(刑法第246条第1項)。
複数の詐欺罪が併合罪として一度に裁かれるときは、拘禁刑の上限が15年になります(刑法第45条、第47条)。
執行猶予を付けられるのは、言い渡される刑が3年以下の場合に限られます(刑法第25条第1項)。受け子の事件では、前科がなくても実刑判決となることがあります。
「知らなかった」が通るかは、受け取り方などから判断される
詐欺罪は、故意があるときにだけ成立します(刑法第38条第1項)。詐欺に関わっているという認識がなかったときは、詐欺罪は成立しません。
ただし、故意は、詐欺かもしれないと分かりながら引き受けた場合にも認められます。これを未必の故意といいます。
ある事件の受け子は、指示されたマンションの空き部屋で、他人の名前を名乗って宅配便を受け取り、それを回収役へ引き渡していました。最高裁判所は、この受け子について、詐欺をする故意も仲間との共謀もあったと判断しました(最高裁判所平成30年12月11日第三小法廷判決・刑集72巻6号672頁)。
この判決は、同じような受取りを何度も繰り返して報酬を得ていたこと、犯罪に加わっているとの認識があったこと、詐欺の可能性を打ち消す事情がなかったことを挙げています。
故意があったかを判断する際に見られる事情
- どのような募集に応じ、仕事の内容をどう説明されていたか
- 偽名を使う、空室で受け取るなど、受け取り方が不自然でないか
- 報酬の額
- 指示役から受けていた指示の内容
取調べの前には、自分の意思に反して話す必要がないことが告げられます(刑事訴訟法第198条第2項)。故意を争うかどうか、どこまで話すかは、取調べの前に弁護士と相談して決めてください。
逮捕後の勾留と接見禁止
警察は、留置の必要があると考えれば、逮捕から48時間以内に本人を検察官に送ります(刑事訴訟法第203条第1項)。検察官は、受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に、勾留を請求するか釈放するかを決めます(刑事訴訟法第205条第1項・第2項)。
起訴前の勾留は請求の日から最長10日間で、やむを得ない事由があれば、さらに最長10日延長されます(刑事訴訟法第208条)。
特殊詐欺は共犯者が多いため、口裏合わせを防ぐとして、弁護士以外との面会を禁じる接見禁止が付くことがあります。弁護士は、接見禁止中でも立会人なしで本人と面会できます(刑事訴訟法第39条第1項)。

被害弁償と示談は処分と刑の重さに影響する
被害者に弁償して示談が成立していることは、起訴するかどうかや刑の重さを判断する際に、本人に有利な事情として考慮されます。刑事訴訟法第248条も、起訴しない判断の材料に「犯罪後の情況」を挙げています。
受け子の取り分は数万円程度にすぎないことがあり、被害額とは大きな差があります。そのため、弁償の資金をどう用意するかが問題になります。
示談の相手となる被害者の連絡先は、弁護士が捜査機関に開示を申し入れ、被害者が了承した場合に弁護士へ伝えられます。
よくある質問
受け子をしたことが警察に知られる前に自首すれば、刑は軽くなりますか。
事件がまだ捜査機関に知られていないか、犯人が誰か分かっていない段階で、自分から犯罪事実を申告すれば、刑が軽くなる余地があります(刑法第42条第1項)。ただし、軽くするかどうかは裁判所の判断に委ねられます。
受け子を1回しただけでも詐欺罪になりますか。
なります。詐欺かもしれないと分かって引き受けていれば、被害者から現金などを1回受け取っただけでも、詐欺罪の共同正犯として処罰の対象になります。
報酬は数万円だったのに、被害額の全部を弁償しなければなりませんか。
民事では、共同して不法行為をした人は、被害者の損害を連帯して賠償する責任を負います(民法第719条第1項)。報酬の額で責任の範囲が限られるわけではありません。
受け子で逮捕された家族に面会できますか。
勾留された後は、接見禁止が付いていなければ、法令で決められた範囲内で面会できます(刑事訴訟法第80条、第207条第1項)。接見禁止が付いている間は、一部解除が認められた人を除き、家族も面会できません。

弁護士に相談するときに伝えること
相談するときは、本人が留置されている警察署、逮捕された日時、疑われている事件の内容を、分かる範囲で伝えてください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

