勾留を早く解いてもらう方法 ― 準抗告・勾留取消し・勾留理由開示・執行停止

白い机の上に置かれたノートパソコンと本 刑事事件

勾留の決定に不服を申し立てる手続と事情が変わった後に取消しを求める手続があります

勾留(裁判官の決定で引き続き身体を拘束すること)を解いてもらう手続があります。決定そのものを争うのが準抗告です。勾留後に事情が変わった場合は、勾留取消しを求める方法もあります。理由を法廷で告げさせる手続や、一時的に外へ出るための手続もあります。

起訴前の勾留は原則10日で、通常の延長は通算10日までです。仕事や家族の生活に支障がある事情も、判断材料になる場合があります。この記事では、勾留の条件と四つの手続を整理します。

この記事の結論

  • 勾留には、罪を犯したと疑う相当な理由と、決まった住居がない・証拠を隠す・逃げるという心配のいずれかが必要です。さらに、身体を拘束する必要も検討されます。
  • 勾留の決定に不服があれば、準抗告を申し立てられます。決定をした裁判官とは別に、地方裁判所などの合議体(複数の裁判官)が判断し直します。
  • 勾留の後に示談がまとまるなど事情が変われば、勾留の取消しを求められます。取消しは本人や弁護人のほか、配偶者、親や子などの直系の親族、兄弟姉妹も求めることができます。
  • 勾留理由開示は、公開の法廷で勾留の理由を告げさせる手続です。勾留の執行停止は、病気の治療や親族の葬儀などのために、一時的に外へ出ることを認めてもらう扱いです。

勾留が認められる条件

勾留が認められるには、三つの条件がそろう必要があります。一つ目は、罪を犯したと疑う相当な理由があること。二つ目は、決まった住居がない、証拠を隠すと疑う相当な理由がある、逃げると疑う相当な理由がある、のいずれかに当たることです(刑事訴訟法第六十条第1項。起訴前の勾留には同法第二百七条第1項で当てはめられます)。三つ目が、勾留の必要があることです。

「勾留の必要」は、身体を拘束することが相当かという条件です。条文に直接の定めはありませんが、勾留取消しを定めた刑事訴訟法第八十七条第1項が前提にしています。住居や証拠を隠す心配などの条件を満たしても、拘束の必要を別に検討します。

参考・最高裁判所の決定

最高裁判所平成26年11月17日第一小法廷決定・裁判集刑事315号183頁は、地下鉄内での痴漢の疑いで逮捕された会社員の事件です。最初の裁判官は勾留を認めませんでした。検察官が準抗告をし、裁判所は勾留を認める判断に変更しました。

最高裁判所は、この事件では最初の裁判官の判断が不合理とはいえないとしました。被害者への接触の可能性が高いことを示す事情がなく、判断を変えた理由も示されていなかったためです。最高裁判所は、自ら調査する権限を使って勾留を認めた決定を取り消しました。

この決定は、具体的な事案についての判断です。身柄を拘束する必要や、証拠を隠す可能性を、事件ごとの事情から検討することが大切です。

勾留を否定する方向に働く事情

勾留を争うときに大切なのは、「おそれはない」と言うだけでなく、それを裏付ける具体的な事実を資料と一緒に示すことです。裁判官が、関係者に働きかけるかもしれないといった抽象的なおそれだけで勾留を認めることもあるとされているからです。

反対に、事件の中身によっては、本人が否認していても、自白していても、関係者に働きかけるおそれがあるとして勾留が認められることがあります。決まった住居があっても、本人が名前や住所を明かさないために確かめられないときは、住居がないものとして扱われることもあります。

勾留を否定する方向に働きやすい事情(例)

  • 証拠を隠すおそれについて ― 被害者や目撃者の連絡先を知らない、示談が成立している、物や第三者の目撃証言といった客観的な証拠がある、単独で行い同伴者もいない、既に捜索を受けている
  • 逃げるおそれについて ― 同居の家族や養っている家族がいる、身元を引き受ける人がいる、決まった仕事がある、軽い処分が見込まれる
  • 勾留の必要について ― 勾留が続くと仕事を失うおそれがある、学生で試験を控えている、病気を抱えている

『勾留準抗告に取り組む(第2版)』が分析した事例では、身元を引き受ける人がいることが、多くの事件で有利な事情とされました。引受人は親族が多いものの、雇い主や上司、友人の場合もありました。家族との同居や決まった仕事があることも、逃げる心配を否定する材料になります。

そのため、家族が用意する身元引受書や上申書、勤務先の事情を示す資料、医師の診断書などが、そのまま勾留を争う材料になります。

棚に積まれた書類の束
棚に積まれた書類の束

準抗告 ― 勾留の決定を別の裁判官たちが判断します

準抗告は、勾留を決めた裁判官の所属する裁判所に、取消しや変更を求める手続です。簡易裁判所の裁判官が決めた場合は、管轄の地方裁判所に求めます。申立てを受けた裁判所は複数の裁判官で判断します(刑事訴訟法第四百二十九条第1項第2号・第4項)。

条文上、準抗告では罪を犯した疑いがないことを理由にできないとされています(同条第2項、第四百二十条第3項)。ただし、起訴前の勾留では、それを理由に準抗告を認めた例もあるとされています。争うのは、証拠を隠すおそれや逃げるおそれがあるか、勾留の必要があるか、という点が中心になります。

準抗告は、拘束期間の早い段階で検討します。『勾留準抗告に取り組む(第2版)』は、申立ての日に判断されるのが通常としています。勾留を決めた後の示談や、身元を引き受ける人が決まったことも、判断材料になるとされています。

勾留の延長の決定にも、別に準抗告ができます。延長が丸ごと取り消されなくても、10日の延長を短く縮める形で認められることがあるとされています。書籍には、準抗告を申し立てた後、裁判所の判断を待たずに検察官が本人を釈放した例も紹介されています。

準抗告が退けられた場合は、最高裁判所に特別抗告をすることができます。ただし、理由は憲法違反や判例違反に限られ、申立ての期間は5日です(同法第四百三十三条)。

退けられても無駄にはならない

実務では、準抗告の決定に理由が付くのが通常です。退けられても、その説明から裁判所が重視した事情を知ることができます。その後の対応を検討する材料になります。

準抗告をしたことだけで、身体の拘束が長引くと心配する必要はありません。

勾留取消し ― 勾留の後に事情が変わったとき

勾留の理由や必要がなくなれば、裁判所は勾留を取り消さなければなりません(刑事訴訟法第八十七条第1項)。本人や弁護人(本人の弁護を引き受けた弁護士)などが請求できます。家族では、配偶者、親や子などの直系の親族、兄弟姉妹も請求できます。裁判所が自ら取り消す場合もあります。

勾留取消しの強みは、事情が変われば何度でも求められることです。被害者との示談がまとまった、捜査が進んで証拠を隠す心配がなくなった、本人の体調が悪くなった、家族の生活が急に苦しくなった、といった変化を具体的に示し、それを裏付ける資料を添えて求めます。前と同じ事情を繰り返すだけでは、結論は変わりません。

勾留取消しでは、原則として検察官の意見を聴くため、時間がかかる場合があります(刑事訴訟法第九十二条第2項)。『勾留準抗告に取り組む(第2版)』は、決定後数日の事情なら準抗告で主張してよいとしています。取消しの請求が退けられた場合も、準抗告ができます。

被害者が処罰を求める告訴がなければ起訴できない罪を、親告罪といいます。この罪で起訴前に告訴が取り消されると、起訴できなくなり、勾留の必要もなくなるとされています。

勾留理由開示と勾留の執行停止

勾留理由開示は、公開の法廷で、裁判官に勾留の理由を告げさせる手続です(刑事訴訟法第八十二条、第八十三条第1項、第八十四条第1項)。本人や弁護人だけでなく、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他の利害関係人も請求できます(同法第八十二条第2項)。

勾留理由開示だけで釈放されるわけではありません。それでも、告げられた理由は後の取消し請求などに使えます。本人や弁護人、請求した人は意見を述べられます(刑事訴訟法第八十四条第2項)。意見を述べる時間は、1人10分以内とされています。接見禁止中の本人と家族が顔を合わせる機会になる場合もあります。

同じ勾留について請求できるのは1回に限られると解されています。どの段階で請求するかは、担当の弁護士と相談してください。

勾留の執行停止は、裁判所が適当と認めるときに、本人を親族などに預けたり、住む場所を決めたりして、勾留の執行を一時的に止める扱いです(同法第九十五条第1項)。実務では、病気の治療のための入院、親や配偶者の危篤や死亡、葬儀、就職試験や学校の試験などの場合に認められるとされ、戻る日時と場所を決めて期間を区切るのが通常です(同条第2項・第3項)。

執行停止は、本人や弁護人が請求する権利としては定められていません。申出は、裁判所が自ら判断するよう促すものです。認められなくても不服を申し立てられないとされています。葬儀なら、日程や会場までの道のりが分かる資料をそろえます。

何を求めるか押さえておくこと
準抗告勾留の決定そのものを取り消してもらう合議体が判断する。決定の後の事情も考慮される。延長の決定にもできる
勾留取消し勾留の後に理由や必要がなくなったとして取り消してもらう事情が変われば何度でも求められる。家族も請求できる
勾留理由開示公開の法廷で勾留の理由を告げさせるそれだけでは釈放されない。同じ勾留の間に原則1回
勾留の執行停止病気や葬儀などのため、一時的に勾留を止めてもらう求める権利はなく、裁判所の判断を促すもの。期間を区切って認められる
勾留を争う四つの手続の違い

家族にできること

勾留を争う手続の多くは弁護士が進めますが、その材料をそろえられるのは家族です。家族が身元を引き受けること、仕事や家庭の事情、本人の持病などは、警察や検察の記録には表れにくく、外から示さなければ裁判官に伝わりません。

家族が用意できるもの

  • 身元引受書 ― 本人を引き取り、呼出しに応じさせると約束する書面
  • 上申書 ― 家族の生活の状況や、本人が早く戻る必要を説明する書面
  • 勤務先や学校の事情が分かる資料 ― 勾留が続くと職を失うおそれがある、試験を控えているなど
  • 診断書 ― 本人の持病や通院の状況

また、勾留の取消しや勾留理由開示は、配偶者、親や子などの直系の親族、兄弟姉妹が自ら請求することもできます。ただ、どの手続をいつ使うかで効果が変わるため、弁護士と相談しながら進めるのが確実です。

要点の整理

この記事で確かめたこと

  • 勾留には、罪を犯したと疑う相当な理由、決まった住居がない・証拠を隠す・逃げるという心配のいずれか、拘束の必要が求められる
  • 準抗告は勾留の決定そのものを争う手続で、合議体が判断する。早く申し立てるほど意味がある
  • 勾留取消しは、勾留の後に事情が変わったときに何度でも求められ、家族も請求できる
  • 勾留理由開示は理由を公開の法廷で告げさせる手続、執行停止は病気や葬儀などで一時的に勾留を止める扱い
  • 身元引受書や上申書、診断書など、家族がそろえる資料が勾留を争う材料になる

よくある質問

勾留の準抗告は、どのくらい認められますか。

認められる割合は、事件の種類や地域によって違い、一概には言えません。証拠を隠す心配や逃げる心配がないこと、拘束の必要がないことを、具体的な資料で示して検討します。

準抗告をすると、かえって勾留が長くなりませんか。

準抗告をしたことだけで、身体の拘束が長引くと心配する必要はありません。実務では、退けられた決定にも理由が付くのが通常です。その内容を、後の取消し請求などに生かせます。

勾留の取消しは、家族からでも求められますか。

求められます。勾留の取消しは、本人や弁護人のほか、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹なども請求できます。示談の成立など勾留の後に変わった事情を、資料とともに具体的に示すことが必要です。

勾留中に親が亡くなりました。葬儀に出られますか。

勾留の執行停止が認められれば、期間を区切って外へ出られることがあります。ただし、求める権利としては定められておらず、裁判所の判断次第です。葬儀の日程や会場までの道のりなどの資料を、弁護士に早めに渡してください。

勾留理由開示で何が分かりますか。

公開の法廷で、裁判官が勾留の理由を告げます。それだけで釈放されるわけではありませんが、示された理由は、後の取消しの請求や延長への反論に使えます。接見禁止中の本人と家族が法廷で顔を合わせられる機会にもなります。


勾留を解く方法について弁護士に相談する方へ

勾留を解く方法について弁護士に相談する方へ

弁護士に相談するときは、逮捕と勾留の日付、留置されている警察署、伝えられた罪名を書き留めたうえで、身元を引き受けられる家族の名前と住所、本人の勤務先や通学先、持病や通院先が分かる資料を用意してください。示談の見込みについての家族の考えも、早めに伝えてください。

本稿は、勾留を争う手続について、一般的な仕組みを整理したものです。どの手続が認められるかは、事件の内容、証拠の状況、本人や家族の事情によって異なります。個別の事案については、資料に基づく検討が必要です。

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