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分けるものと分けられないもの、割合の決め方、情報通知書の取り方、5年の期限を順に解説します
年金分割は、結婚している間の厚生年金の記録を、離婚した夫婦の間で分ける制度です。相手が受け取る年金の額を半分もらえる制度ではありません。
この記事の結論
- 国民年金から出る老齢基礎年金や、企業年金の独自の上乗せ部分は、分割されません。
- 3号分割は、相手の合意がなくても2分の1ずつ分けられます。合意分割は割合を話合いで決め、まとまらなければ家庭裁判所が定めます。
- 年金事務所への請求は、離婚の翌日を1日目として5年以内にします。離婚の日が令和8年3月31日以前なら、2年のまま変わりません。
分けるのは「年金の額」ではなく厚生年金の記録
対象は、結婚していた間に積み上がった厚生年金の記録(標準報酬月額と標準賞与額)です。
分割を受けた人の老齢厚生年金などの額は、自分の記録に、分けてもらった記録を加えて計算されます。分割をした人の年金は、その分だけ少なく計算されます。
年金分割で額が変わるのは、厚生年金の報酬比例部分だけです。国民年金から出る老齢基礎年金の額は、分割の前と同じです。企業年金の独自の上乗せ部分も対象外です。厚生年金基金が国に代わって支給する部分は、分割の対象に含まれます。
分割を受けても、すぐに年金が振り込まれるわけではありません。分割後の記録に基づく老齢厚生年金を受け取るには、自分で受給資格期間を満たし、支給開始年齢に達している必要があります。
老齢厚生年金の受取りが始まっている人なら、新しい額で支払われるのは、請求した月の次の月の分からです。
合意分割と3号分割の違い
年金分割には、合意分割と3号分割の二つがあります。大きな違いは、相手の合意が要るかどうかと、対象になる期間です。
| 合意分割 | 3号分割 | |
|---|---|---|
| 対象の期間 | 結婚していた期間の厚生年金の記録の全体 | 結婚していた間に、相手の扶養で第3号被保険者だった期間のうち、平成20年4月1日以後の分 |
| 割合の決め方 | 当事者の合意又は家庭裁判所の手続(上限は2分の1) | 相手の合意なしに2分の1ずつ |
| 請求する人 | 当事者の一方又は双方 | 第3号被保険者だった人 |
第3号被保険者とは、国民年金の第2号被保険者(会社員や公務員など)の収入で主に生活している配偶者のうち、20歳以上60歳未満の人です。原則として日本国内に住んでいることが必要で、本人が第2号被保険者なら当たりません。
平成20年3月以前から結婚している場合、その時期の記録は3号分割の対象になりません。分けるには合意分割が必要です。
結婚していた期間の中に3号分割の対象期間があれば、合意分割を請求した時点で、その期間の3号分割の請求もあったと扱われます(相手が障害厚生年金を受ける権利を持つ場合を除きます)。
相手に障害厚生年金を受け取る権利があり、対象の期間がその年金額の基礎になっているときは、3号分割は認められません。
分ける割合の上限は2分の1。裁判所では原則0.5
合意分割で決める割合(按分割合)は、対象期間の夫婦の厚生年金の記録を合計したうち、分割を受ける側が分割後に持つ割合です。
決められる範囲は法律で決まっていて、分割前の持ち分を超え、2分の1以下です。
話合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停又は審判を申し立て、割合を定めてもらえます。家庭裁判所は、保険料の納付に対する夫婦それぞれの寄与の程度などを考えて決めます。
裁判所が割合を決める場合、特別な事情がなければ0.5とされるのが通常です。
割合を定める調停や審判の申立てには、情報通知書1通につき1200円分の収入印紙が要ります。連絡用の郵便切手も別に要ります。離婚調停を申し立てるときは、その中で年金分割も話し合えます。
手続の順番と、情報通知書の取り方
合意分割の手続の順番
- 年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」を出し、「年金分割のための情報通知書」を受け取る
- 割合を話合い又は家庭裁判所の手続で決める
- 離婚した後に、年金事務所へ「標準報酬改定請求書」を出す
対象が平成20年4月以後の第3号被保険者期間だけのときは、情報通知書は請求できません。この場合は、そのまま3号分割を請求します。
情報通知書には、分割の対象になる期間や夫婦それぞれの記録の額、割合を決められる範囲が書かれています。割合を話し合う前に取り寄せます。
離婚が成立する前の段階でも、情報通知書は取り寄せられます。
請求書で希望すれば、分割した場合の年金見込額も試算してもらえます。老齢厚生年金の見込額は50歳以上で老齢年金の受給資格期間を満たしている人、障害厚生年金の見込額は障害厚生年金を受けている人が対象です。
離婚した後に、割合を定める調停や審判を家庭裁判所に申し立てるときは、離婚後に交付された情報通知書を出します。

請求のときに添える書類
標準報酬改定請求書には、婚姻日と離婚日の分かる戸籍謄本などのほか、割合を決めたことを示す書類を添えます。
割合を決めたことを示す書類
- 話合いで決めたとき:公正証書の謄本又は抄本、公証人の認証を受けた私署証書、又は「年金分割の合意書」
- 調停で決めたとき:調停調書の謄本又は抄本
- 審判で決めたとき:確定証明書を付けた審判書の謄本又は抄本
「年金分割の合意書」で請求するときは、二人がそろって年金事務所へ持って行く必要があります。それぞれ代理人に頼むこともできます。
3号分割だけを請求するときは、割合を示す書類は要りません。第3号被保険者だった人が一人で手続できます。
期限は離婚の翌日から5年。令和8年3月までの離婚は2年
年金分割の請求は、離婚した日の翌日から5年を過ぎるとできなくなります。合意分割も3号分割も同じです。
離婚の日が令和8年3月31日以前であれば、離婚の翌日から2年で請求できなくなります。
期限を過ぎても請求できるとき
期限内に家庭裁判所へ調停や審判を申し立て、期限の前6か月以内又は期限の後に、調停が成立し又は審判が確定したとき
離婚訴訟の中で割合を定める判決が確定し、又は和解が成立したときも同じです。
この場合は、成立又は確定した日の翌日から6か月以内に限り、請求できます。
割合が決まった後、請求する前に相手が亡くなったときは、亡くなった日から1か月以内に請求しなければなりません。
よくある質問
離婚前に年金分割の情報通知書を請求したら、相手に知られますか。
離婚前に一人で請求した場合、通知書は請求した本人にしか届きません。夫婦がそろって請求したときは、二人とも受け取ります。
相手が自営業で国民年金だけの場合も、年金分割はできますか。
年金分割で分けるのは厚生年金の記録です。相手に婚姻期間中の厚生年金の記録がなければ、相手から分けてもらう記録はありません。
調停で年金分割の割合が決まったら、手続は終わりですか。
いいえ。調停が成立しても、審判が確定しても、記録は自動的には分けられません。期限内に、年金事務所へ標準報酬改定請求書を出す必要があります。

相談の前に用意するもの
弁護士に相談するときは、手元にある年金分割のための情報通知書と、結婚した日の分かる戸籍謄本などを用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

