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けががなくても成立する理由と、職務の適法性が問題になるときを解説します
職務中の警察官を押す行為は、けがをさせなくても公務執行妨害罪に当たることがあります。
ただし、任意の職務質問に答えないことと、警察官に暴力を振るうことは別です。どんな行為をしたかに加え、警察官の職務が適法だったかも問われます。
この記事の結論
- 刑罰は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
- 殴る、蹴る行為だけが対象ではなく、押す行為も暴行に当たり得ます。
- 任意の質問への回答を拒むだけで、公務執行妨害罪になるわけではありません。
けががなくても公務執行妨害罪になる
公務執行妨害罪には、公務員にけがを負わせたことまでは必要ありません。適法な職務を行う公務員に、仕事を妨げる程度の暴力や脅しを加えることが処罰の対象です。
公務執行妨害罪は、公務が円滑に行われることを守るための犯罪です。そのため、公務員が抵抗に負けず仕事を続けた場合でも、犯罪は成立し得ます。
刑法第95条第1項は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金を定めています。
警察官を押しただけでも暴行に当たる
殴ったり蹴ったりしなくても、警察官を突き飛ばす行為や、両肩を押さえ付ける行為は暴行に当たり得ます。押した力や回数、前後のやり取りを含めて判断されます。
一方、混雑した場所で、意図せず身体が触れただけのときは別です。この罪には、相手が公務員であり、職務に当たっているところへ暴行や脅迫を加える認識が必要です。
直接触れなければ安全、とはいえない
暴行には、公務員の身体へ間接的に力を及ぼす行為も含まれます。
物に力を加えた場合も、その場の公務員に及ぶ影響によっては処罰の対象です。
任意の職務質問に答えないだけなら、この罪にはならない
任意の職務質問への回答や、警察署への任意同行を断るだけでは、公務執行妨害罪にはなりません。警察官職務執行法第2条第3項は、刑事訴訟法等による場合を除き、答弁や同行を強制できないとしています。
| 行為の例 | 公務執行妨害罪との関係 | |
|---|---|---|
| 回答や同行を断る | 答えたくない、任意同行には応じないと伝える | 断ること自体は暴行や脅迫に当たらない |
| 力を加える | 警察官を突き飛ばして離れようとする | 職務を妨げる程度なら、暴行に当たり得る |
| 危害を告げる | 殴るなどと告げて警察官を脅す | 職務を妨げる程度なら、脅迫に当たり得る |
回答を断る権利があることは、警察官を押しのけたり脅したりしてよいという意味ではありません。言葉で断る対応と、身体に力を加える対応を混同しないでください。

警察官の対応が違法だったかも問題になる
公務執行妨害罪が成立するには、妨害された職務が適法でなければなりません。警察官がどの権限で、どんな手続を踏んでいたかが問われます。
例えば、任意の職務質問を口実に、腕をねじ上げて無理やり連行するような行為では、職務の適法性が問題になります。
ただし、警察官の対応に不満があるだけで、職務が違法になるわけではありません。手続に不備があった場合も、その内容が軽微か、権利を守るための重要な手続に反したかで判断は異なります。
自分が違法だと思ったことだけを理由に、暴力を正当化することはできません。公務執行妨害罪に当たらない場合でも、暴行罪や傷害罪の成否は別に検討する必要があります。
身に覚えのない暴行を認める必要はない
警察から取調べを受けても、自分の意思に反して話す義務はありません。刑事訴訟法第198条第2項は、被疑者にこの点を告げてから取り調べるよう定めています。
話した内容をまとめた供述調書に誤りがあれば、訂正を申し立てられます。内容に納得できないまま署名・押印をする必要もありません。
よくある質問
公務執行妨害罪は警察官に対する行為だけですか。
警察官に限りません。消防職員や市区町村の職員なども対象となり、適法な職務を行っている際の暴行や脅迫が問題になります。
警察官にけがをさせたら、傷害罪にもなりますか。
同じ行為について、公務執行妨害罪に加えて傷害罪も成立し得ます。その場合は、公務執行妨害罪だけの刑罰で判断するわけではありません。
警察官が仕事を続けられたら、公務執行妨害にはなりませんか。
実際に仕事が止まることまでは必要ありません。職務を妨げる程度の暴行や脅迫があれば、成立し得ます。

相談するときに伝える内容
弁護士には、警察官から何を求められ、自分が何を言い、どのように身体を動かしたかを、順に伝えてください。現場の録音・映像が手元にあれば、相談の際に用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。
