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どこから傷害罪になるのか、被害届を取り下げてもらえば終わるのかを解説します
わざと暴行を加えて、相手がけがをしなければ暴行罪、その暴行で相手がけがをすれば傷害罪です。傷害罪の刑罰の上限は、暴行罪よりはるかに重く定められています。
この記事の結論
- 暴行罪は2年以下の拘禁刑などで、傷害罪は15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。
- わざと暴行を加えた結果、相手がけがをすれば、けがをさせるつもりがなくても傷害罪が成立します。
- 暴行罪と傷害罪は、被害者の告訴がなくても起訴できる罪です。
分かれ目は、相手がけがをしたかどうか
手を出しても相手にけががなければ、刑法第208条の暴行罪です。相手がけがをすれば、刑法第204条の傷害罪に変わります。
| 暴行罪 | 傷害罪 | |
|---|---|---|
| 条文 | 刑法第208条 | 刑法第204条 |
| 成立する場面 | わざと暴行を加えたが、相手がけがをしなかった | わざと暴行を加えるなどして、相手にけがをさせた |
| 刑罰 | 2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留又は科料 | 15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 公訴時効 | 3年 | 10年 |
| 被害者の告訴 | なくても起訴できる | なくても起訴できる |
拘留は、1日以上30日未満の間、身柄を拘束される刑です。科料は、1000円以上1万円未満の金銭を納めさせる刑です。
令和7年6月1日から、懲役と禁錮は廃止され、拘禁刑にまとめられました。同日より前の行為には、改正前の刑(懲役など)の定めが適用されます(刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律第441条第1項)。
殴る・蹴るだけが暴行ではない
暴行罪でいう暴行とは、人の体に向けて不法に物理的な力を加えることです。殴る・蹴るのほか、胸ぐらをつかむ、突き飛ばすといった行為も暴行に当たります。
参考・暴行に当たるとされた裁判例
- 電車に乗ろうとする人の服を引っ張り、乗るのを妨げようとした(大審院昭和8年4月15日判決・刑集12巻427頁)
- 相手に塩を振りかけた(福岡高等裁判所昭和46年10月11日判決・判例時報655号98頁)
- 車の幅寄せや進路妨害で、車同士が接触していなくても暴行とした(東京高等裁判所平成16年12月1日判決・判例時報1920号154頁)
暴行罪は、わざと力を加えたときに成立する罪です。不注意で人の足を踏んだような場合は、暴行罪になりません。
不注意で人にけがをさせたときは、原則として過失傷害罪(刑法第209条)の問題になります。刑罰は30万円以下の罰金又は科料で、告訴がなければ起訴できません(業務上の過失や車の運転中の事故などは、別の罪になります)。
「けが」は外から見える傷に限られない
傷害とは、人の体の働きを損なうことをいいます。切り傷や打撲のほか、めまい、失神、嘔吐なども傷害に当たると解されています。
ストレスを感じた、一時的に精神的な苦痛を受けたというだけでは、傷害には当たりません。他方で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を傷害と認めた裁判例があります(富山地方裁判所平成13年4月19日判決・判例タイムズ1081号291頁)。
また、最高裁判所は、睡眠薬などを摂取させ、約6時間の意識障害などを生じさせたことを傷害に当たるとしました(最高裁判所平成24年1月30日第三小法廷決定・刑集66巻1号36頁)。
けがをさせるつもりがなくても傷害罪になる
暴行するつもりで手を出し、その結果相手がけがをしたときは、傷害罪が成立します。けがをさせるつもりまでは要らないと解されています。
そのため、「軽く押しただけ」「けがをさせる気はなかった」という事情があっても、それだけで傷害罪が否定されるわけではありません。
けがを証明する診断書の役割
けがの有無は、医師の診断書などの証拠で証明されます。「全治◯週間」と書かれた診断書は、けがをさせた結果を示す証拠になります。

被害届の取下げだけで、事件が終わるわけではない
被害届は捜査のきっかけにすぎません。告訴がなければ起訴できない過失傷害罪と違い、暴行罪と傷害罪は告訴がなくても起訴できます。
被害届が取り下げられても、警察が捜査を続けることはできます。
もっとも、示談の成立や被害届の取下げは、検察官が起訴するかどうかを決めるときに考慮されます。起訴するか不起訴にするかを判断するのは、検察官です。
よくある質問
物を投げて相手に当たらなかった場合も、暴行罪になりますか。
相手に向けて投げた物が当たらなくても、暴行罪になることがあります。判例は、力が相手の体に触れていなくても暴行罪が成立するという立場です。投げた石が体に触れなくても暴行罪は成立すると述べた裁判例があります(東京高等裁判所昭和25年6月10日判決・高等裁判所刑事判例集3巻2号222頁)。
暴行罪と傷害罪の時効は何年ですか。
起訴できる期間(公訴時効)は、暴行罪が3年、傷害罪が10年です(刑事訴訟法第250条第2項)。
被害届を取り下げてもらえば、事件は終わりますか。
被害届が取り下げられても、警察が捜査を続けることができます。取下げや示談は、検察官が起訴するかどうかを判断するときの事情の一つです。

相談の前に用意するもの
出来事の日時・場所・経過を書いたメモと、警察から受け取った書類を用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

