ひき逃げと当て逃げの罪 ― 救護義務・報告義務の違反、刑罰と免許、後から名乗り出たとき

道路を見下ろす位置に取り付けられた監視カメラと、行き交う車 刑事事件

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事故の後に立ち去った場合の刑罰、免許の点数と、名乗り出たときの扱いを解説します

交通事故を起こした運転者は、すぐに車を止めてけが人を助け、警察に事故を報告しなければなりません。

これをせずに立ち去ると、人がけがをした事故ではひき逃げ、物だけが壊れた事故では当て逃げとして処罰されます。

この記事の結論

  • 自動車やバイクの運転で人を死傷させて救護せずに立ち去ると、10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象です。
  • 物だけが壊れた事故で必要な措置をせずに立ち去ると、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金の対象です。
  • ひき逃げの救護義務違反は基礎点数が35点で、免許の取消しの対象となります。
  • 捜査機関が犯人を知る前に自分から罪を申告すれば自首となり、刑を軽くする理由になり得ます。

事故を起こした運転者に課される二つの義務

交通事故を起こした車の運転者には、救護等の措置をする義務と、警察に報告する義務があります。道路交通法第72条第1項が定めています。

道路交通法第72条第1項が求めること

  • 直ちに車の運転を止めること
  • けが人を救護すること
  • 道路での危険を防ぐなど、必要な措置をとること
  • 現場の警察官又は最寄りの警察署の警察官に、直ちに事故を報告すること

報告する事項は、事故の日時と場所、死傷者の数とけがの程度、壊れた物とその程度、車の積載物、事故の後にとった措置です。

最高裁判所は、この二つは別々の義務であり、両方に違反した場合はそれぞれの罪が成立すると判断しています。

この判断を示したのは、最高裁判所昭和38年12月6日第二小法廷判決・裁判集刑事149号251頁です。

ひき逃げと当て逃げの刑罰

人が死傷した事故で救護等をしなかった場合と、物だけが壊れた事故で必要な措置をしなかった場合とで、刑罰の重さが違います。

人が死傷した事故(ひき逃げ)物だけが壊れた事故(当て逃げ)
救護や危険を防ぐ措置をしない死傷が自分の運転によるときは10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金。それ以外は5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金
警察に報告しない3か月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金3か月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金
道路交通法の罰則(自動車やバイクの運転者の場合)

根拠は、ひき逃げが道路交通法第117条、当て逃げが同法第117条の5第1項第1号、報告をしない罪が同法第119条第1項第17号です。

不注意な運転で人を死傷させたこと自体も、過失運転致死傷罪として7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象です。

この罪と、上限10年の救護義務違反の罪を併せて裁くと、拘禁刑の上限は10年の1.5倍の15年です(刑法第47条)。

自転車の運転者も、事故を起こしたときの義務は同じです。救護せずに立ち去ると、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金の対象です。

当て逃げでも点数が付き、賠償の責任も残る

物だけが壊れた事故で、危険を防ぐ措置をせずに立ち去ると、事故の原因となった違反の点数に5点が加えられます。

例えば、他の車にぶつけた事故の原因が安全運転義務違反(2点)であれば、合計は7点です。前歴がなければ、6点から8点は30日の免許停止となります。

運転席から前方を見た車内
運転席から、山あいの道の前方が見えます

立ち去っても、壊した車の修理代などを賠償する民事の責任はなくなりません。

ひき逃げは免許の取消しの対象

救護義務違反の基礎点数は35点です。刑罰とは別に、住所地の公安委員会が免許を取り消すことができます。

取り消されると、免許を受けられない期間(欠格期間)が3年以上10年以下の範囲で指定されます。

行政処分の前歴や一定の免許取消歴がなく、点数の合計が35点から39点であれば、欠格期間は3年です。事故の点数などが加わって合計が増えると、期間は長くなります。

事故に気づかなかったとき

ひき逃げや当て逃げの罪は、人の死傷や物の損壊が起きたと認識しながら立ち去った場合に成立します。本当に気づかなかったのであれば、成立しません。

ただし、人にけがをさせたかもしれない、物を壊したかもしれないと思いながら立ち去った場合は、罪に問われることがあります。

気づかなかったという言い分が通るかどうかは、事故の際の状況から判断されます。

気づかなかったとしても、不注意な運転で人にけがをさせていれば、過失運転致死傷罪に問われることがあります。

後から警察に名乗り出たとき

捜査機関が犯人を知る前に、自分から罪を申告して処分を委ねれば、法律上の自首に当たります。自首をすると、裁判所は刑を軽くすることができます(刑法第42条第1項)。

捜査機関が犯人を突き止めた後に名乗り出ても、法律上の自首にはなりません。

自分から出頭することで、逃げたり証拠を隠したりするおそれがないことを示し、逮捕される危険を減らせる場合があります。

現場から離れたことは逃亡のおそれがあると見られやすく、ひき逃げでは逮捕や勾留をされることが少なくありません。

被害者との示談が成立すると、不起訴とされたり、刑が軽くなったりする事情として考慮されることがあります。

よくある質問

物だけが壊れた軽い事故でも、警察に報告しないといけませんか。

報告が必要です。けが人がいない物損事故でも、運転者は警察に事故を報告しなければならず、報告しなければ3か月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金の対象です。

相手のけがが軽くても、ひき逃げになりますか。

軽いけがでも、必要な救護をせずに立ち去れば、ひき逃げの罪に問われることがあります。けがが軽いと自分で決めて立ち去らないでください。

物損事故に後日気づいたら、どうすればよいですか。

気づいた時点で警察に連絡し、事故の内容を説明します。


弁護士に相談するときに用意するもの

弁護士に相談するときに用意するもの

警察から受け取った書面と運転免許証を持参し、事故の日時と場所、相手や被害の様子を説明できるようにしてください。

本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

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