執行猶予とは何か ― 条件と判決後に気を付けること

海辺の草地に並ぶベンチ 刑事事件

刑の全部の執行猶予を中心に確認します

「拘禁刑1年6月、執行猶予3年」と言われたら、刑務所へ行くのでしょうか。刑の全部の執行猶予が付くと、直ちにその刑を執行することは見送られます。

ただし、有罪の判断がなくなるわけではありません。判決の条件と猶予中の生活を確認する必要があります。

この記事の結論

  • 刑の全部の執行猶予は、有罪判決で言い渡された刑の執行を一定期間見送る制度です。無罪や不起訴とは異なり、判決の内容を確認する必要があります。
  • 3年以下の拘禁刑などの法定の条件に加え、裁判所が犯罪の内容や被害回復などの事情も考慮して判断します。初めての事件であっても、必ず猶予が付くと決まっているわけではありません。
  • 被害回復や今後の生活を具体的な資料で示すことが刑を軽くする事情を伝える弁護活動の一つになります。保護観察の有無や取消しの問題も含めて、判決後の対応を確認してください。

執行猶予は刑の執行を見送る制度

刑の全部の執行猶予では、判決の確定した日から定められた期間、刑の執行を見送ります。有罪判決ですから、無罪や不起訴になったという意味ではありません。

例えば拘禁刑1年6月に3年間の全部執行猶予が付いた場合、1年6月の刑を直ちに執行することは見送られます。

2025年6月1日に拘禁刑が導入されました。以前の判決にある懲役や禁錮と、現在の拘禁刑という表記を区別してください。

刑の長さと過去の刑が条件になる

刑法第二十五条1項は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の言渡しを受けた場合を対象としています。その上で情状を踏まえ、1年以上5年以下の期間、全部の執行を猶予できると定めています。

対象者は、過去に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない人などです。過去にその刑を受けた人も、刑の執行を終えた日又は執行を免除された日から5年が経過していれば対象となります。この間、再び拘禁刑以上の刑に処せられていないことが必要です。

ここでいう3年は、犯罪ごとに定められた刑の上限ではなく、言い渡される刑の長さです。条件に当てはまっても、当然に執行猶予になるわけではありません。

白い机に置いたメモ帳と鉛筆
疑問と確認した内容を書き留めて相談します。

被害回復と再発防止を資料で示す

刑を軽くする事情を伝える「情状弁護」では、被害の回復や事件後の生活状況などを検討します。謝罪をしたという説明だけでなく、示談書や支払いを確認できる資料があるかを整理してください。

家族などの支援や仕事の確保も、今後の生活を示す事情になります。誰が何を支えるのかを具体的に確認し、実現できる内容を伝えることが大切です。

示談をしたことや反省していることだけで、結果が保証されるものではありません。事件の内容と提出する資料を合わせて検討します。

保護観察と取消しを確認する

保護観察は少年だけの制度ではありません。成人にも、刑の全部の執行猶予に保護観察が付く場合があります。社会で生活しながら、保護観察官や保護司の指導・支援を受ける制度です。

少年事件では、家庭裁判所が保護処分として保護観察を決めることがあります。ここで説明するのは、刑事裁判の判決で執行猶予に付される保護観察です。保護観察の有無は判決で確認してください。

猶予期間中に別の罪を犯した場合などには、執行猶予が取り消されることがあります。取消しの条件は、今回と以前の刑、犯行の時期などによって異なります。

再度の執行猶予については、刑法第二十五条2項などに特別の条件があります。古い解説の刑期や条件をそのまま当てはめず、現行法で確認する必要があります。

猶予期間が終わるときにも例外がある

猶予の言渡しが取り消されずに期間が経過した場合は、原則として刑の言渡しの効力が失われます。

ただし、猶予期間中に犯した罪で起訴された場合などには、期間の経過だけで直ちに効力が失われない例外があります。刑法第二十七条の条件を確認してください。

一部だけの執行を猶予する制度は、ここで説明した全部執行猶予と異なります。判決に「一部」とある場合は、実際に執行される部分を確認する必要があります。

要点の整理

この記事の要点

  • 刑の全部の執行猶予は、有罪判決で言い渡された刑の執行を一定期間見送る制度です。無罪や不起訴とは異なり、判決の内容を確認する必要があります。
  • 3年以下の拘禁刑などの法定の条件に加え、裁判所が犯罪の内容や被害回復などの事情も考慮して判断します。初めての事件であっても、必ず猶予が付くと決まっているわけではありません。
  • 被害回復や今後の生活を具体的な資料で示すことが情状弁護の一つになります。保護観察の有無や取消しの問題も含めて、判決後の対応を確認してください。

よくある質問

初犯なら必ず執行猶予が付きますか。

過去の刑に関する条件を満たしても、それだけで結果は決まりません。犯罪の内容や被害回復などを踏まえた判断が必要です。

執行猶予は無罪ですか。

有罪の判断をした上で刑の執行を見送る制度です。起訴されない処分とも区別してください。

判決後は自由に生活できますか。

保護観察が付くかを確認してください。別の犯罪などによる取消しの問題もあるため、判決の条件を理解する必要があります。

猶予期間を過ぎれば必ず終わりますか。

期間中に犯した罪について起訴されている場合など、法律上の例外があります。満了日だけで判断せず、事件の経過を確認してください。


弁護士に相談するときに用意するもの

弁護士に相談するときに用意するもの

弁護士に相談するときは、起訴状又は判決書、過去の刑に関する資料、示談書や支払いの記録、家族や仕事の状況が分かる資料を用意してください。

本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

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