「葬儀費用は150万円までです」と言われたら

机の上のノートと眼鏡 交通事故

原則は150万円ですが、それを超えて認めた裁判例があります

交通事故で家族を亡くされた場合、葬儀の費用について、保険会社から150万円が上限だと言われることがあります。たとえば、実際に支払ったのは300万円で、それも特別に高いプランを選んだわけではない。それでも、決まりだからと言われる。そういう場面です。

この150万円という額は、実務の原則としては確かにそのとおりです。ただし、決まりというわけではありません。これを超えて認めた裁判例が現にあります。葬儀の規模や参列された方の人数といった事情を示して、150万円を超える額を損害として求められる場合があります。この記事では、原則と、超えて認められた事案を整理します。

原則は150万円まで

この150万円は、裁判で用いられる目安です(自賠責保険の枠はこれとは別で、葬儀費は原則60万円、資料により60万円を超えることが明らかな場合に100万円の範囲内とされています)。裁判では、葬儀に関わる費用として認める額を、原則として150万円までとする扱いが一般的です。もっとも、それは常に150万円を受け取れるという意味ではありません。支払った額がそこに届かないときは、実際に出た額が上限になります。実際の支払が200万円であっても、原則として認められるのは150万円まで。支払が100万円であれば、上限は100万円となり、その全額が認められるかどうかは支出の内容によって判断されます。

この線を超える額を求めるときに大切になるのは、支払った額の大きさそのものではなく、その額になった事情です。次にみるように、裁判例はその事情に目を向けています。

150万円を超えて認めた裁判例

実際に、より高い額を認めた裁判例があります。3件挙げます。共通しているのは、葬儀の規模が大きくなったことについて、参列された方の人数や式を営んだ場所といった具体的な事情があったという点です。

超えて認めた裁判例

  • 神戸地方裁判所平成28年5月26日判決・交通事故民事裁判例集49巻3号659頁。亡くなったのは17歳の高校生で、葬儀費用209万3470円と仏壇・仏具などの購入費104万1270円を支払った事案。多くの友人が参列したことを指摘して、180万円を認めた
  • 横浜地方裁判所令和元年9月26日判決・自保ジャーナル2058号79頁。亡くなったのは79歳の園芸店の経営者で、葬儀費用388万6862円とそれに伴う飲食費113万8430円を支払った事案。顧客をはじめ慕われていた方で、参列者が300人を超える葬儀であったことを理由に、250万円を認めた
  • 大阪地方裁判所平成28年10月26日判決・交通事故民事裁判例集49巻5号1254頁、自保ジャーナル1989号174頁。亡くなったのは50歳の会社員。勤務のため1人で暮らしていた地域と、家族が暮らす地域の双方で式を営まなければならなかった事案で、式と仏壇・仏具に支払った合計270万3913円のうち、200万円を認めた

3件の裁判例に共通すること

いずれも、費用が大きくなったことに理由があります。前の2件の裁判例は参列された方が多かったことに触れており、3件目は、単身赴任先と自宅付近の双方で式を営む必要があったことを理由としています。ですから、示していくのは、高いものを選んだという説明ではなく、その額になった具体的な事情です。

お墓の費用が葬儀費用とは別に認められた裁判例

お別れの式にかかった費用とは別に、位牌を納める壇や道具、お墓を建てるためにかかった支出を、交通事故による損害と認めた裁判例があります。

神戸地方裁判所令和3年3月1日判決・交通事故民事裁判例集54巻2号281頁、自保ジャーナル2097号93頁は、亡くなったのが21歳の大学生で、700名以上が参列した事案について、葬儀費用199万5170円に加えて、墓石と工事の費用204万1200円と、墓地を続けて使う権利を得るための永代使用料55万4000円の合計259万5200円を認めています。

領収書は全て残しておきましょう

まずは、葬儀に関して支払った費用と資料を整理し、それぞれを請求に含められるかどうかを検討します。式そのものの費用、飲食にかかった分、仏壇と仏具、墓石とその工事、永代使用料。判断に必要となることがありますから、認められるか分からない領収書も残しておいてください。

書類の束
支払先と金額が分かる資料は、保険会社との交渉や裁判で費用を示す資料になります。

まず手元でできること

この費目で必要になるのは、金額の資料と、その規模になった事情の資料です。

そろえておくもの

  • 葬儀社の見積書と明細、領収書
  • 飲食にかかった分と、会葬の返礼品の購入費が分かる領収書
  • 仏壇・仏具の購入の領収書
  • 墓石と工事の費用、永代使用料の領収書
  • 参列された方の人数が分かるもの(会葬者の名簿、返礼の数など)
  • 異なる地域で葬儀を2度行う必要があった場合は、その事情が分かるもの(勤務先の所在、住まいとの距離など)

参列された方の人数が分かる資料は、忘れられがちですが大切です。先に挙げた裁判例のうち、神戸地方裁判所の判決と横浜地方裁判所の判決は、参列された方の多さに触れています。名簿や返礼の記録は、時間が経つと手元から失われやすいものですから、早めにまとめておいてください。

よくある質問

「葬儀費用は150万円まで」と言われました。決まりなのですか。

実務の原則としては、そのとおりです。ただし、これを超えて認めた裁判例があります。参列された方が300人を超えた事案で250万円を認めたもの、単身赴任先と自宅付近の双方で2度行う必要があった事案で200万円を認めたものなどです。

実際にかかったのは100万円です。150万円もらえますか。

いいえ。支払った額が150万円より少ない場合は、実際に支払った額が限度になります。

線を超える額を認めてもらうには、何を示すことになりますか。

金額が大きくなったことについての具体的な事情です。裁判例が触れているのは、参列された方の人数の多さ、故人が慕われていたこと、2度の葬儀を行わなければならなかったことなどです。

仏壇やお墓の費用も請求できますか。

お別れの式にかかった費用とは別に認めた裁判例があります。700名以上が参列した事案で、式の費用のほかに、墓石とその工事の代金、永代使用料の合計も認めたものです。認められるかどうかは事案によりますので、領収書は残しておいてください。

認められないかもしれない費用も、請求してよいのですか。

まずは支払った費用を全て挙げて整理し、それぞれを請求に含められるかどうかを検討します。判断に必要となることがありますので、支払ったものは領収書とともにそろえておくのがよいと考えます。


葬儀の費用で折り合わない方へ

葬儀の費用で折り合わない方へ

葬儀社の明細と領収書、仏壇・仏具やお墓についての領収書、参列された方の人数が分かるものをそろえてください。金額が大きくなった事情を資料によって説明できるかどうかが、重要な判断材料になります。

本稿は、交通事故で家族を亡くされた方に向けて、葬儀関係費用についての一般的な考え方と裁判例を整理したものです。認められる額は、実際に支払った額、葬儀の規模とその事情などによって異なります。個別の事案については、資料に即した検討が必要です。

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