会社が労災の手続をしてくれないとき ― 自分で請求する方法、労災隠しの罰則、健康保険を使ってしまった場合

白衣を着た医療従事者が、聴診器を手に持っている 労働

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事業主の証明を断られたときの進め方と、健康保険から労災保険への切替えを解説します

会社が手続をしてくれなくても、労災保険の給付は、けがをした本人が労働基準監督署へ自分で請求できます。

この記事の結論

  • けがの治療費や休業の補償は、けがをした労働者本人が請求します。会社は、本人が手続をできるよう助ける立場です。
  • 会社が請求書の証明欄に記入しないときは、労働基準監督署に相談します。会社の証明がないことだけで、請求が受け付けられないわけではありません。
  • 仕事でのけがに健康保険は使えません。既に使ったときは、その病院の窓口で、労災保険の扱いに変えてもらえるかを聞きます。

労災保険は、本人が請求できる

仕事中のけがの治療費や休業の補償は、けがをした労働者の請求に基づいて支給されます(労働者災害補償保険法第12条の8第2項)。

会社の役割は、本人が自分で手続をするのが難しいときに助けることと、請求書に必要な証明をすることです(労働者災害補償保険法施行規則第23条)。請求するかどうかを決めるのは本人です。

主な給付と請求書の出し先

  • 治療費(療養補償給付):労災保険の指定病院で受診するときは、請求書をその病院を通じて出します。指定病院以外で治療費を立て替えたときは、労働基準監督署長へ請求します。
  • 仕事を休んだ間の補償(休業補償給付):けがの療養のために働けず、賃金を受けていない日について支給されます。支給は4日目からで、額は1日につき給付基礎日額の60%です。請求書は労働基準監督署長へ出します。

請求書の用紙は、厚生労働省のウェブサイトから入手できます。

会社が証明欄に記入してくれないとき

労災保険の請求書には、けがをした日や事故の状況について、事業主が証明する欄があります(同規則第12条第2項、第13条第2項)。会社は、証明を求められたら速やかに証明しなければなりません(同規則第23条第2項)。

それでも会社が応じないときは、職場のある地域を受け持つ労働基準監督署へ事情を話します。会社の証明がなくても、業務災害の事実が確認できれば労災保険は支給されると、茨城労働局が案内しています。

労働基準監督署によっては、証明を断られた経緯を書く申立書の用紙を用意しています。

相談の前に書き留めておくこと

けがをした日時、場所、作業の内容と、けがの状況

会社に証明を頼んだ日時、方法(面談・電話・メール等)、応じた人の名前

会社が証明を断った理由

受診した病院の名前

白い机に置いたメモ帳と鉛筆
白い机に置いたメモ帳と鉛筆

労災隠しとは何か、会社にはどんな罰則があるか

厚生労働省は、会社が労災事故を隠すために、労働者死傷病報告を故意に出さないこと、又はうその内容で出すことを「労災かくし」と呼んでいます。

労働者死傷病報告は、仕事中の事故などによる従業員の死亡や休業を、会社が報告する書類です。会社は、遅滞なく労働基準監督署長へ出さなければなりません(労働安全衛生規則第97条第1項)。休業が4日に満たないときは、3か月ごとにまとめて報告します(同条第2項)。

この報告をしない、又はうその報告をした者は、50万円以下の罰金に処せられます(労働安全衛生法第120条第5号)。会社そのものにも罰金が科されます(同法第122条)。

労働者死傷病報告は会社が出す書類で、労働者が給付を求める請求書とは別のものです。

職場で労働安全衛生法やその規則に反することが行われているときは、労働基準監督署に申告して、正すよう求められます(同法第97条第1項)。申告した人を、そのことを理由に会社が解雇したり不利に扱ったりすることは禁じられています(同法第97条第2項)。

健康保険を使ってしまったとき

仕事でのけがや病気の治療に、健康保険は使えません。健康保険法は、業務災害以外の病気やけがを給付の対象にしているからです(健康保険法第1条)。

既に健康保険を使って受診したときは、最初にその病院の窓口で、労災保険の扱いに変えてもらえるかを聞きます。その答えによって、後の手続が変わります。

病院で切り替えられる場合病院で切り替えられない場合
すること労災保険の請求書(様式第5号)を病院に出す加入先の健康保険の保険者(全国健康保険協会、健康保険組合など)に労災であることを申し出て、届いた通知に従い、保険者が負担した医療費を返す
窓口で払ったお金の戻り方病院から返される返したお金と窓口で払ったお金の領収書、保険者から取り寄せた診療報酬明細書(レセプト)の写しを付けて、請求書(様式第7号)を労働基準監督署へ出す
健康保険で受診した後の手続(仕事中のけがの場合)

病院で切り替えられないときは、医療費の全額をいったん自分で負担することになります。既に労災と認められていて、全額の負担が難しいときは、その負担をせずに請求したいと労働基準監督署へ申し出る方法があります。

通勤中のけがの場合は、様式第16号の3(病院での切替え)と様式第16号の5(費用の請求)を使います。

よくある質問

労災隠しをされたら、どこに相談すればよいですか。

職場のある地域を受け持つ労働基準監督署です。給付の請求の相談も、会社が労働者死傷病報告を出していないことの申告も、同じ労働基準監督署で受け付けています。

会社が「労災ではない」と言っています。請求できませんか。

請求できます。請求書は労働基準監督署長に出し、労災保険が支給されるかどうかは労働基準監督署が調べて決めます。会社の意見で決まるものではありません。

労災で休んでいる間に解雇されることはありますか。

仕事でのけがの治療のために休んでいる期間と、その後30日間は、会社は原則として解雇できません(労働基準法第19条第1項)。打切補償を支払う場合などの例外があります。

労災の請求に期限はありますか。

あります。治療費や休業の給付は、請求できる時から2年、障害や遺族の給付は5年で、時効により請求できなくなります(労働者災害補償保険法第42条第1項)。


相談の前に用意するもの

相談の前に用意するもの

けがをした日時・場所・状況のメモ、病院の領収書、会社とのやり取りの記録を用意してください。

本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

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