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本採用拒否が認められる条件、裁判例、14日以内の解雇と解雇予告、試用期間の延長を解説します
試用期間中でも、会社は自由に解雇できるわけではありません。本採用しないことも解雇に当たり、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でなければ無効です。
この記事の結論
- 試用期間中も労働契約は成立しています。本採用しないことは解雇に当たります。適格性を理由とする場合は本採用後の解雇より広く認められますが、無制限ではありません。
- 試用期間中で、雇われてから14日以内の解雇なら、解雇予告も解雇予告手当も要りません。ただし、解雇が有効かどうかは別に判断されます。
- 本採用しないと告げられたら、解雇理由証明書を請求します。争うなら、退職届や退職合意書にはその場で署名しないでください。
本採用しないことも「解雇」に当たる
最高裁判所は、大学の新卒者を採用した事案で、試用期間中も労働契約は成立していると判断しました。会社が不適格と判断したときに解約できる権利を残した契約です。
そのため、本採用を拒むことは、残しておいた解約権を使う解雇に当たります。その理由が客観的に見て合理的でなく、解雇までするのが社会の常識に照らして相当といえなければ、無効です(労働契約法第16条)。
判決は、採用時に知ることができず、知ることも期待できなかった事実が後に分かった場合を挙げます。その事実から雇い続けるのが適当でないと判断されれば、解約が認められるとしました。
試用期間は、実際に働かせて適格性を見る期間です。このため、適格性を理由とする本採用拒否は、本採用後の解雇と比べて広い範囲で認められます。
参考・試用期間の性質を示した判決
- 最高裁判所昭和48年12月12日大法廷判決・民集27巻11号1536頁〔三菱樹脂事件〕
本採用拒否が有効とされた例、無効とされた例
勤務態度や能力に問題があっても、指導によって改善が見込まれる場合は、それを理由に本採用を拒むことは相当でないとされます。
| 有効とされた例 | 無効とされた例 | |
|---|---|---|
| 能力 | 指導を受けても平易な業務でミスを繰り返し、ほかの新卒社員より事務処理能力が大きく劣っていた | 6か月の試用期間の途中で、約3か月半の営業成績だけを理由に適格性がないとされた |
| 勤務態度 | 高い格付けで中途採用された人が、上司の命令に従わず、協調性にも欠けるなどとされた | 会長に声を出してあいさつしなかったことを理由とされた |
参考・表の裁判例
- 東京地方裁判所平成13年7月2日判決・労働経済判例速報1784号3頁〔三井倉庫事件〕(事務処理能力。有効)
- 東京高等裁判所昭和58年12月14日判決・労働関係民事裁判例集34巻5・6号922頁〔欧州共同体委員会事件〕(勤務態度。有効)
- 東京高等裁判所平成21年9月15日判決・労働判例991号153頁〔ニュース証券事件〕(営業成績。無効)
- 東京地方裁判所平成13年2月27日判決・労働判例809号74頁(あいさつ。無効)
試用期間の途中での解雇
試用期間の途中での解雇について、適格性を判断するには早すぎるとして無効とした裁判例があります。表のニュース証券事件も、期間の途中で解雇した事案でした。
他方、能力や適格性の不足が明らかで、改善の見込みも乏しいとされた事案では、期間の途中での解雇が有効とされています。
参考・途中での解雇が有効とされた例
- 大阪高等裁判所平成24年2月10日判決・労働判例1045号5頁〔日本基礎技術事件〕
入社から14日以内の解雇と解雇予告
会社が解雇するときは、原則として、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります(労働基準法第20条第1項)。予告の日数は、平均賃金を払った日数分だけ短くできます(同条第2項)。
試用期間中の人には、この決まりが適用されません。ただし、14日を超えて引き続き雇われた後は、試用期間中でも予告か手当が必要です(同法第21条)。
| 14日以内 | 14日を超えた後 | |
|---|---|---|
| 解雇予告・解雇予告手当 | 不要 | 30日前の予告か、足りない日数分の平均賃金の支払が必要 |
| 解雇の理由 | 合理的な理由と相当性が必要 | 合理的な理由と相当性が必要 |
予告が要らないのは手続の話です。14日以内の解雇でも、労働契約法第16条の基準を満たさなければ無効です。

試用期間を延長すると言われたら
試用期間の延長は、就業規則などに延長の定めがない限り、原則として認められないと解されています。
定めがあっても、延長には合理的な理由が要ります。裁判例は、就業規則の定めに基づく延長のほか、本採用を拒める事案で解雇を猶予し、適格性を見直すための延長を認めています。後者は例外的な扱いで、本人の同意などが根拠になると解されています。
必要がないのに長すぎる試用期間を定めた部分を、公序良俗に反し無効とした裁判例もあります。
参考・長すぎる試用期間を無効とした例
- 名古屋地方裁判所昭和59年3月23日判決・労働判例439号64頁〔ブラザー工業事件〕
本採用しないと告げられたら
解雇の理由を書面で確かめるため、解雇理由証明書を請求します。会社は、請求を受けたら遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法第22条第1項・第2項)。
争うつもりなら、退職届や退職合意書にはその場で署名しないでください。署名すると、合意による退職だと会社に主張されるおそれがあります。
解雇に納得できないことと、働き続ける意思があることを、書面で会社に伝えます。
よくある質問
試用期間中なら、会社は自由にクビにできるのですか。
できません。本採用しないことも解雇に当たり、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。適格性を理由とする場合に、本採用後の解雇より広く認められるだけです。
試用期間中、入社して1週間で解雇されました。解雇予告手当はもらえますか。
試用期間中で、雇われてから14日以内の解雇なら、解雇予告や解雇予告手当の決まりは適用されません。解雇が有効かどうかは、これとは別に判断されます。
試用期間を延長すると言われたら、従うしかないのですか。
就業規則などに延長の定めがなければ、原則として延長は認められないと解されています。まず就業規則に延長の定めがあるかを見てください。
能力不足を理由に本採用を断られました。争えますか。
指導によって改善が見込まれる場合は、本採用を拒むことは相当でないとされます。短い期間の成績だけで判断したとして、解雇を無効とした裁判例もあります。

相談の前に用意するもの
雇用契約書又は労働条件通知書、就業規則、解雇通知書、解雇理由証明書、上司から受けた指導のメールやメモを用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

