二組の夫婦の請求と支払を分けて考える
双方が既婚者でも、それだけで慰謝料の請求がなくなるわけではありません。不貞をされた配偶者が誰で、誰がその人に責任を負うのかを分けて考えます。
二組の夫婦では、請求する側とされる側が入り交じります。相手の配偶者への支払と、自分が受け取る慰謝料を、一つの問題として処理しないことが必要です。
この記事の結論
- W不倫では、二組の夫婦ごとに、被害を受けた配偶者と責任を負う人を整理します。双方が既婚者でも、慰謝料請求が当然になくなるわけではありません。
- 二組の夫婦で受けた損害は同じとは限りません。婚姻の期間や生活への影響、交際の内容などが違えば、慰謝料の判断も別になることがあります。
- 配偶者と不貞相手が共同で負う同じ損害は、支払われた分を重ねて受け取れません。別の夫婦に生じた損害との区別も、合意書に反映させます。
まず四人の立場を整理する
不貞をした人と、被害を受けた配偶者を区別します。例えば、夫Aと妻B、夫Cと妻Dという二組で、AとDが不貞をした場合です。被害を受ける立場はBとCであり、それぞれの請求を検討します。
| 被害を受けた配偶者 | 請求先として検討する人 | |
|---|---|---|
| AとBの夫婦 | B | A及びD |
| CとDの夫婦 | C | Cの配偶者D及びA |
民法第七百九条と第七百十条は、権利や利益を侵害した人の損害賠償責任を定めています。不貞をした二人による共同の損害については、同法第七百十九条も問題になります。各人の責任が成立することが前提です。
二組の慰謝料が同額になるとは限らない
同じ不貞関係でも、二組の夫婦が受けた損害は別に考えます。不貞慰謝料の事例集は、婚姻期間、子の有無、不貞の期間や夫婦関係への影響などを分けて分析しています。
掲載された事案には、双方が既婚者でも、一方の配偶者と他方の配偶者の請求で異なる額が認められた例があります。「お互いの家庭に同じ額を払えば終わる」とは限りません。
同じ損害の二重払いと別の損害を区別する
同じ被害を受けた人が、配偶者と不貞相手から同じ損害分を二重に受け取ることはできません。一方が支払えば、その支払で埋め合わせた損害について、もう一方の負担も減ります。
一方の夫婦の損害と、もう一方の夫婦の損害は、被害を受けた人が異なります。誰への支払で何を解決するのかを分けて記録してください。請求をやめる合意も、対象の人と範囲を明確にします。
支払後の求償まで含めて合意する
不貞をした一方が自己の負担分を超えて払うと、他方へ負担の一部を求める場合があります。この請求を求償といいます。支払額と、最終的に各人が負担する額は別の問題です。
特に婚姻を続ける場合は、配偶者への求償で家計に負担が生じることがあります。求償を放棄するか、誰がどの範囲の請求を終わらせるかを検討します。参加していない人の請求まで解決したと考えないようにしてください。
要点の整理
判断の前に整理する事項
- 四人の請求する立場とされる立場を整理する
- 被害者が異なる損害を分けて考える
- 二重受領を避け求償も含めて合意する
よくある質問
W不倫なら慰謝料は請求できませんか。
双方が既婚者でも、責任が成立する人へ請求する余地があります。被害を受けた配偶者ごとに検討します。
W不倫では両方の夫婦の慰謝料は同じ額ですか。
同額とは限りません。婚姻期間や生活への影響など、各夫婦の事情によって損害の評価が異なります。
夫から慰謝料を受け取っても不倫相手に全額を請求できますか。
同じ損害について、夫が支払った分を不貞相手から重ねて受け取ることはできません。何について支払われたかも確認します。
W不倫の示談で何を確認しますか。
誰が誰に支払い、誰のどの請求を終わらせるのかを明確にします。不貞をした二人の間の求償も検討します。

具体的な経緯を整理して相談する
弁護士に相談するときは、交際の時期と内容が分かる資料、夫婦関係の経緯、既に交わした合意書を用意してください。
一般的な説明です。具体的な請求の可否と額は個別の資料により検討します。

