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家庭裁判所で子を取り戻す手続と、力ずくで連れ戻すことの危険
配偶者が子どもを連れて出て行き、返してもらえないときは、家庭裁判所に「子の引渡し」を申し立てます。多くの場合、「子の監護者の指定」も一緒に求めます。
自分の力で子どもを連れ戻すことは避けてください。
この記事の結論
- 子の引渡しを求める親は、多くの場合、自分を監護者に指定するよう求める申立ても一緒に行います。
- 子に差し迫った危険があるなどの事情があれば、審判前の保全処分で、子を仮に引き渡すよう求めることができます。
- 力ずくで子を連れ戻すと、刑事責任を問われるおそれがあります。
子連れの別居が問題になるかは事情による
婚姻中の父母は、共同して親権を行います(民法第824条の2第1項)。子の住む場所を決めることは、原則として父母が共同して決める事項です。
ただし、子のために急いで対応しなければならない事情(急迫の事情)があれば、父母の一方だけで親権を行使できます(同項第3号)。法務省は、その例として、DVや虐待から子とともに避難する必要がある場合を挙げています。
父母は、子のために互いの人格を尊重し、協力しなければなりません(民法第817条の12第2項)。理由もなく相手に黙って子の住まいを移すと、この義務に反するとみられることがあります。
法務省の解説によれば、この判断では、転居の動機や経緯、別居の前後に話合いがあったか、子の年齢や意向などが考慮されます。
家庭裁判所に「監護者の指定」と「子の引渡し」を申し立てる
子を手元に戻すための手続は、家庭裁判所での子の監護者の指定と、子の引渡しの調停又は審判です。
監護者に指定された親は、子の監護と教育、住む場所の指定などを一人で決めることができます(民法第824条の3第1項)。
子と離れて暮らす親が引渡しを求める場合、裁判所の案内は、原則として監護者の指定なども一緒に申し立てるよう求めています。既に監護者に指定されている親や、離婚して一人で親権者となった親は、引渡しだけを申し立てられます。
| 監護者の指定・子の引渡しの審判 | 審判前の保全処分 | |
|---|---|---|
| 決めること | 誰が監護者になるか、子を引き渡すか | 審判が出るまでの間、子を仮に引き渡すか |
| 主な条件 | 子の利益を優先して判断される | 子に迫る危険を防ぐために必要であること |
| 申立ての前提 | それだけで申し立てられる | 本案の調停又は審判の申立てが必要 |
調停が不成立に終わったときは、そのまま審判に移り、裁判官が結論を出します。
子を連れて行かれた事案では、監護者の指定と子の引渡しの審判を申し立て、併せて保全処分を求めることが多いとされています。
急ぐときは審判前の保全処分を併せて申し立てる
審判前の保全処分は、審判が出る前に、子を仮に引き渡すよう命じてもらう手続です。裁判所の案内は、子に差し迫った危険がある場合などを例に挙げています。
保全処分を求めるには、本案の調停か審判の申立てが必要です。本案と同時に申し立てることもできます。その上で、子に迫る危険を防ぐために必要と認められるときに、保全処分が命じられます(家事事件手続法第157条第1項)。
申し立てた親は、保全処分が必要な事情について、裁判所が一応確かだと判断できる資料を示す必要があります。これを「疎明」といいます(同法第106条第2項)。
保全処分は、本案の審判と違い、確定を待たずに効力を生じます(同法第109条第2項)。
監護者を決めるときに見られる事情と、申立てを急ぐ理由
裁判所の案内では、これまでの養育状況、双方の経済力や家庭環境、子の性格、就学の状況、生活環境などについて事情が聴かれます。
実務では、同居中に主に子を世話してきたのは誰か、今の監護が安定して続いているか、子の意思などが重視されるとされています。
今の生活環境が安定して続いていることは、監護者を決める際の考慮要素になります。相手のもとでの生活が長くなるほどこの点が相手に有利に働きやすいため、早く申し立てるべきだとされています。
手続の中では、家庭裁判所調査官が子の様子や家庭の状況を調べることがあります。

自分の力で子どもを連れ戻さない
相手のもとにいる子を力ずくで連れ戻すと、親であっても未成年者略取罪に問われるおそれがあります。この罪の刑は、3月以上7年以下の拘禁刑です(刑法第224条)。
子を連れて行った経緯や方法、その行為が違法な連れ去りに当たるかどうかも、監護者や親権者を決める際に考慮されることがあります。
審判に従わないときは強制執行を申し立てる
子の引渡しを命じる審判は、確定して初めて効力を生じます(家事事件手続法第74条第2項)。確定しても相手が引き渡さないときは、強制執行を申し立てられます。
強制執行の方法は二つあります(民事執行法第174条第1項)。
一つは、引き渡すまで相手に一定の金銭を支払わせる間接強制です(同法第172条第1項)。
もう一つは、執行官が子の引渡しを実施する方法です。原則として、間接強制の決定が確定して2週間たった後に申し立てられます。決定で定めた履行の期間がそれより後に終わるときは、その期間がたった後です(同法第174条第2項)。
間接強制では引き渡す見込みがないときや、子の急迫の危険を防ぐため直ちに執行する必要があるときも、この方法を申し立てられます(同項)。
執行官は、相手の住居に立ち入って子を捜すことができます(同法第175条第1項)。その場には、原則として申し立てた親が出向く必要があります(同条第5項)。
子に対して力を振るうことは、執行官にも許されていません(同条第8項)。
よくある質問
監護者の指定や子の引渡しの調停にかかる費用はいくらですか。
収入印紙は、それぞれの申立てごとに子1人につき1200円分で、ほかに連絡用の郵便料が要ります。郵便料の額は裁判所ごとに異なります。
子の引渡しの調停はどこの家庭裁判所に申し立てますか。
原則として、相手が住んでいる地域の家庭裁判所です。双方が合意すれば、別の家庭裁判所を選ぶこともできます。
監護者の指定の審判に納得できないときはどうすればよいですか。
父母は高等裁判所に審理を求める即時抗告ができます(家事事件手続法第156条第1項第4号)。期間は、原則として審判の告知を受けた日から2週間です(同法第86条)。

相談の前に用意するもの
子の戸籍謄本(全部事項証明書)を取り寄せてください。別居した日と、その前後の経緯を時系列で書き出しておいてください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

