恋人に渡したお金を取り戻せるか ― 結婚詐欺に当たる場合、貸したお金と贈与の分かれ目

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貸したお金、あげたお金、だまし取られたお金の違いと、返還を求める手順

恋人に渡したお金を返してもらえるかは、そのお金を貸したのか、あげたのかで分かれます。

貸したお金は、相手にだます気持ちがあったかどうかに関係なく、返還を求められます。あげたお金でも、結婚するつもりのない相手にだまし取られたときは、取消しや損害賠償によって返還を求められます。

貸したお金は、別れた後でも返還を求められる

返す約束をしてお金を渡したときは、貸し借りの契約が成り立ちます。民法第587条は、返還を約束して金銭を受け取ることで、この契約の効力が生じると定めています。

借用書は、契約が成り立つための条件ではありません。口約束で貸したお金も、返還を求めることができます。

返す時期を決めていなかったときは、相当の期間を定めて返済を催告し、その期間が過ぎれば返還を請求できます(民法第591条第1項)。

「もらったお金だ」と言われたら、貸したことを記録で示す

相手が借りたことを否定したときは、貸した側が、返す約束をしてお金を渡したことを示さなければなりません。相手が、もらったお金だと主張することもあります。

貸したことを示す記録の例

  • 振込の記録や通帳
  • 「返すね」「来月まで待って」など、相手が返済に触れたLINEやメール
  • 返済を求めたときの会話の録音

相手がアカウントやメッセージを消してしまうことがあります。返済を求める前に、やり取りの画面を保存しておいてください。

机の上で電卓をたたく手と青い書類挟み
渡したお金の合計を計算します。

あげたお金は、原則として返してもらえない

返す約束をせず、あげるつもりで渡して相手が受け取ったお金やプレゼントは、贈与(民法第549条)に当たります。だまし取られたのでなければ、別れたことを理由に返還を求めることはできません。

書面によらない贈与は、まだ渡していない分について解除できます。既に渡し終えた分は解除できません(民法第550条)。

結婚詐欺に当たるのは、はじめから結婚するつもりがなかった場合

結婚詐欺とは、結婚する意思がないのに結婚をほのめかし、相手から金品をだまし取ることをいいます。刑法の詐欺罪や、民法の詐欺の規定が問題になります。

はじめは結婚するつもりだった相手が、後から気持ちを変えただけでは、詐欺に当たりません。

結婚する意思についてだまされたことを理由に返還を求めるには、お金を受け取った時点で相手に結婚するつもりがなかったことを、請求する側が示す必要があります。内心の問題なので、証明は簡単ではありません。

親の医療費や事業資金など、お金を求めた理由がうそだった場合は、詐欺として返還が認められることがあります。

詐欺に当たれば、取消しと損害賠償で返還を求められる

だまされて渡したお金は、詐欺を理由に贈与を取り消せます(民法第96条第1項)。取り消すと贈与は初めから無効になり、相手は受け取ったお金を返す義務を負います(民法第121条、第121条の2第1項)。

詐欺は不法行為にも当たるので、損害賠償を求めることもできます(民法第709条)。

貸したお金だまし取られたお金
根拠貸し借りの契約(民法第587条)詐欺による取消し(民法第96条第1項)、損害賠償(民法第709条)
示すこと返す約束をしてお金を渡したこと結婚するつもりがないのに、あるように装い、それを信じさせてお金を渡させたこと
請求の期限返還を求められると知った時から5年。求められる時から10年が先に過ぎれば、その時まで(民法第166条第1項)取消しは、だまされたことに気付き取り消せると知った時から5年。贈与をした時から20年が先に過ぎれば、その時まで(民法第124条第1項・第126条)。損害賠償は、損害と加害者を知った時から3年。不法行為の時から20年が先に過ぎれば、その時まで(民法第724条)
貸したお金とだまし取られたお金の比較

返還を求める手順

まず、内容証明郵便などの書面で返還を求めます。相手が支払に応じたときは、支払の方法を合意書に残します。

相手が応じないときは、裁判所に訴えを起こします。請求額が60万円以下であれば、簡易裁判所の少額訴訟を利用できます(民事訴訟法第368条第1項)。

支払を命じる判決が確定しても相手が払わないときは、強制執行を申し立て、相手の財産を差し押さえます。

警察への相談と、お金の返還は別の手続

結婚詐欺は、刑法第246条の詐欺罪(10年以下の拘禁刑)に当たることがあります。

ただし、被害届を出しても、警察がお金を取り立ててくれるわけではありません。返還を求めるには、刑事手続とは別に、上の民事の手続をとります。

よくある質問

借用書がなくても、恋人に貸したお金を返してもらえますか。

借用書がなくても返還を請求できます。相手が借りたことを否定したときは、振込の記録や、相手が返済に触れたLINEなどで、返す約束があったことを示します。

結婚詐欺の相手を刑事告訴できますか。

犯罪の被害を受けた人は、告訴をすることができます(刑事訴訟法第230条)。告訴は、犯人の処罰を求める意思を示すものです。

相手が「借りたお金は返す」と認めたら、時効はどうなりますか。

相手が借金を認めると、その時から時効が新たに進み始めます(民法第152条第1項)。認めたメッセージは保存しておいてください。


相談の前に用意するもの

相談の前に用意するもの

お金を渡した日と金額の一覧、振込の記録や通帳、相手とのLINEやメールの画面を用意してください。

本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

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