前科と前歴の違い ― 前科がつくとどうなるのか、効力はいつ失われるのか

刑事事件

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罰金・執行猶予・不起訴の扱いから、記録の残り方と効力が失われる時期まで解説します

前科は、有罪の裁判(判決や略式命令)が確定した経歴です。罰金や執行猶予付きの判決でも前科になります。不起訴で終われば前科はつかず、捜査を受けた経歴である前歴が残ります。

この記事の結論

  • 前科の記録は検察庁などに残りますが、一般には公開されておらず、会社が照会して調べることはできません。
  • 前科は、刑の種類によって、公務員や教員への就職、医師の免許、パスポートの発給に影響します。次に罪を犯したときの刑にも影響します。
  • 刑の執行を終えた後に罰金以上の刑を受けずに一定の期間がたつか、執行猶予の期間が満了すると、刑の言渡しは効力を失います。

前科は有罪判決の確定、前歴は捜査を受けた経歴

前科は、刑事裁判で有罪の裁判(判決や略式命令)が確定した経歴をいいます。前歴は、被疑者として警察や検察の捜査を受けた経歴をいいます。

前科前歴
つく時点有罪の判決や略式命令が確定したとき被疑者として捜査を受けたとき
資格の制限法律が定める資格で制限を受ける前歴だけでは受けない
前科と前歴の比較

逮捕されただけでは、前科はつきません。起訴されても、判決が確定するまでは前科ではありません。

罰金や執行猶予付きの判決も前科になる

罰金と科料も、刑法が定める刑罰です(刑法第9条)。罰金を納めて終わった事件も、前科になります。

略式手続で罰金を命じられた場合も同じです。略式命令は、正式裁判の請求期間が過ぎると、確定判決と同じ効力を持ちます(刑事訴訟法第470条)。

執行猶予付きの判決も有罪判決ですから、確定すれば前科になります。

前科の記録は検察庁と本籍地の市区町村に残る

検察庁は、前科の記録を管理しています。この記録は、本人が亡くなるまで消されません。

本籍地の市区町村も、犯罪人名簿という記録を持っています。選挙権の有無や資格の制限を確かめるための名簿です。

前歴は、警察や検察の内部の記録に残ります。

これらの記録は、一般には公開されていません。

光の当たるノートのページの束
光の当たるノートのページ

前科がつくと受ける法律上の制限

前科によってどのような制限を受けるかは、法律ごとに対象の刑と期間が決まっています。主なものは次のとおりです。

対象となる刑制限の内容
国家公務員・地方公務員拘禁刑以上刑の執行を終えるか、執行を受けることがなくなるまで、原則として職員になれない(国家公務員法第38条第1号、地方公務員法第16条第1号)
校長・教員拘禁刑以上刑の言渡しが効力を失うまで、校長や教員になれない(学校教育法第9条第1号)
医師罰金以上免許を与えられないことがある(医師法第4条第3号)
パスポート拘禁刑以上刑の執行を終えるか、執行を受けることがなくなるまで、発給されないことがある(旅券法第13条第1項第3号)
前科による主な制限(対象となる刑と制限の内容)

前科は、次に罪を犯したときの刑にも影響します。拘禁刑の実刑を終えた日から5年以内に新たに拘禁刑の判決を受けるときは、刑の全部の執行猶予は付けられません(刑法第25条)。

実刑を終えた日から5年以内に犯した罪で有期の拘禁刑を受けるときは、再犯となります。刑の上限は、その罪の拘禁刑の長期の2倍まで上がります(刑法第56条第1項、第57条)。ただし、30年を超えることはできません(刑法第14条第2項)。

このほか、前科があることは、刑の重さを決めるときの事情として考慮されます。

就職と履歴書で気を付けること

会社が、検察庁の記録や犯罪人名簿を照会して、応募者の前科を調べることはできません。

警察の犯罪経歴証明書は、海外への長期滞在などで、外国の公的機関から提出を求められたときに発給されるものです。大阪府警察は、個人や企業からの求めでは受け付けないと案内しています。

履歴書の賞罰欄に、刑の言渡しが効力を失っていない前科を書かずに採用されると、経歴詐称として解雇などの問題になるおそれがあります。

不起訴で終わった事件などの前歴は、賞罰欄の「罰」に当たらず、書く必要はありません。

ただし、事件が実名で報道されていると、インターネットの検索で知られることがあります。

前科の効力は一定の期間で失われる

刑法は、一定の期間がたつと、刑の言渡しが効力を失うと定めています。時期は、刑の種類によって次のとおりです。

効力を失う時期条文
拘禁刑の実刑刑の執行を終えるか執行の免除を受けてから、罰金以上の刑を受けずに10年たったとき刑法第34条の2第1項
罰金・科料罰金などを納めるか執行の免除を受けてから、罰金以上の刑を受けずに5年たったとき刑法第34条の2第1項
執行猶予付きの判決取り消されずに猶予の期間が満了したとき刑法第27条第1項
刑の言渡しが効力を失う時期(刑の種類ごと)

猶予の期間中に犯した罪(罰金以上の刑に当たるもの)で起訴されているときは、満了しても効力が続きます。執行猶予が取り消されるおそれがなくなるまで続きます(刑法第27条第2項)。ただし、この間も、資格に関する法律の適用では、効力を失ったものとして扱われます(同条第3項)。

刑の言渡しが効力を失うと、刑に処せられたことを理由とする資格の制限は、原則として受けなくなります。犯罪人名簿からも消されます。

一方で、検察庁の記録は消えません。再び事件を起こしたときは、古い前科も刑の重さを決める資料として使われることがあります。

よくある質問

微罪処分や不起訴でも前歴は残りますか。

残ります。前歴は捜査を受けた経歴なので、微罪処分や不起訴、無罪で終わった場合も含まれます。前科はつきません。

前科は戸籍や住民票に載りますか。

載りません。前科の記録は、戸籍や住民票とは別に、検察庁などが管理しています。

執行猶予中でもパスポートは取れますか。

申請はできます。申請書の刑罰等関係の欄で執行猶予中であることを答え、判決謄本などを出します。東京都は、発給の可否が決まるまで1か月から2か月以上かかることがあると案内しています。


不起訴になったかどうかが分からないとき

不起訴になったかどうかが分からないとき

検察官が不起訴にしたときは、被疑者が請求すれば、その旨を告げてもらえます(刑事訴訟法第259条)。

本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

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