加害者が子どもだった ― 親に賠償を求められるのか、誰に請求するのか

病院の廊下で、二人の看護師が書類を見ながら話している 交通事故

自転車事故でも起こります。まず確かめる保険と、六つの回収の道

自転車で走ってきた中学生にぶつかられ、けがをした。相手はまだ子どもで、本人に支払う力はない。この場合、どこへ請求すればよいのでしょうか。

諦めるのは早すぎます。損害を回収するために検討できる道には、加害者側の任意保険、未成年本人、親権者、勤め先、自賠責保険、そしてご自身が加入している保険があります。この記事では、それぞれが使える場面と、最初に確かめておくべきことを整理します。

最初にすること ― 相手に保険を確かめさせる

何より先にやっていただきたいのは、相手本人や親権者に、この事故に使える保険がないかを確かめてもらい、その保険会社の名前と連絡先を知らせてもらうことです。目を向ける先は、自転車保険と自動車保険だけではありません。

個人賠償責任保険を忘れないでください

個人賠償責任保険が、住まいの火災保険などに特約として付いていることがあります。加害者の側が、それに気付いていない場合もあります。ですから、被害者の側から「火災保険の中身も確かめてください」と促すことになります。これが見つかれば、その後の進み方が大きく変わります。

この事故に使える任意の保険があれば、保険会社から賠償を受けられる可能性があります。ただし、補償の対象になるか、限度額はいくらか、保険会社が示談の交渉まで引き受けるかは、契約によって違います。そこも併せて確かめてください。

子ども本人に責任を問えるか ― 12歳と13歳の境目

法律上の責任を問うとき、最初に頭に浮かぶのは加害者本人への請求です。ところが相手が子どもだと、その手前に関門があります。責任能力の有無です(民法第七百十二条)。

責任能力とは、自分の行いから法律上の責任が生じることを分かるだけの力をいい、一人ひとりについて判断されます。もっとも、裁判例の積み重ねを見ると、おおむね12歳以下では否定され、13歳以上では認められる傾向にあります。

責任があっても、お金がない

もっとも、責任能力が認められたとしても、中学生や高校生の本人に十分な資力がないことが多いのが実際です。ですから、本人に責任を問えるかを見るのと同時に、次に述べる親権者への請求や、使える保険も併せて検討する必要があります。

親に請求できる二つの筋道

親への請求には、子どもに責任能力があるかどうかで別の道が用意されています。

一 子どもに責任能力がない場合

親権者などの法律上の監督義務者が、原則として民法第七百十四条第1項に基づく責任を負います。ただし同項のただし書により、監督の義務を怠らなかったことなどを示せた場合には、責任を免れることがあります。もっとも、自転車事故で、この免れる事情を示すのは極めて難しいと考えられています。そのため、子どもに責任能力がないと判断された事案では、親権者などが責任を負う可能性が高いといえます。

二 子どもに責任能力がある場合

この場合でも、親権者自身に監督の義務違反があり、その義務違反と損害の発生との間につながりが認められるときは、民法第七百九条に基づいて親権者へ賠償を請求できます。中学生以上だから親には請求できない、というわけではありません。

相談の場面
相手が子どもの事案は、誰に請求するかの組み立てが要点になります。

勤め先に請求できる場合

未成年が仕事として行っていた行いに関わって事故を起こした場合には、勤め先に使用者としての責任を問える可能性があります(民法第七百十五条)。アルバイトも同じです。

会社が所有する自転車、バイク、車を使っていた場合には、その車両に使える保険がないかも確かめてください。勤め先と話をするときに、併せて尋ねることになります。

自賠責保険と、ご自身の保険

相手が乗っていたのがバイクや車で、その走行によってけがをした場合は、自賠責保険へ直接請求する道を検討します。なお、自賠責保険が対象とするのはけがや死亡についての損害で、車や持ち物が壊れた分は対象になりません。

親に運行供用者としての責任を問える場合もあります

車を子どもが運転していた事案では、親がその車を実際に管理し、使うことで利益を得る立場にあったとして、責任を負うことがあります。法律ではこうした立場の人を運行供用者と呼びます。判断の中心は、親がその立場にあったかどうかです。手がかりになるのは、親子が同居しているか、子は何歳か、車の購入費と維持費を誰が出したか、登録の名義は誰か、車を手に入れるときに親がどこまで関わったか、普段どのように使い、どこに置いていたか、といった事情です。

相手方から取れる見込みが立たないときは、ご自身が掛けている人身傷害保険などが使えないかを確かめます。

ただし、それで終わりにはなりません

この保険の対象になるか、いくら支払われるかは、契約の中身によって異なります。保険金を受け取ってもなお埋まらない損害が残る場合には、既に受け取った額との調整をしたうえで、責任を負う本人や親権者への請求を検討することになります。

請求先を並べて、順に当たる

整理すると、検討できる道は次の六つです。事案によって使える道が変わりますから、並行して確かめていくことになります。

六つの請求先

  • 加害者側の任意の保険(自転車保険、自動車保険、個人賠償責任保険)
  • 未成年本人(責任能力がある場合。ただし資力が乏しいと、実際に回収するのは難しいことがあります)
  • 親権者(責任能力がない場合、または親権者自身に監督の義務違反がある場合)
  • 勤め先(仕事として行っていた行いに関わる事故で、使用者としての責任を問える場合)
  • 自賠責保険への被害者請求(バイクや自動車の走行によるけが。物の損害は対象外)
  • 被害者ご自身の保険(人身傷害保険など)

未成年本人との交渉は、可能ではあっても難しい面があります。年齢のこともあり、話合いがうまく進むとは限りません。本人だけとの交渉が難しい場合は、親権者、勤め先、使える保険についても併せて検討してください。

よくある質問

加害者が子どもです。親に賠償を求められますか。

求められる場合があります。子どもに責任能力がないときは、親権者などの法律上の監督義務者が、原則として民法第七百十四条第1項の責任を負います。ただし、監督の義務を怠らなかったことなどを示せた場合には、責任を免れることがあります。責任能力があるときでも、親権者自身に監督の義務違反があり、それと損害の発生との間につながりが認められれば、民法第七百九条に基づいて請求できます。

何歳から本人に責任を問えるのですか。

責任能力とは、自分の行いから法律上の責任が生じることを分かるだけの力をいい、一人ひとりについて判断されます。もっとも裁判例の傾向では、おおむね12歳以下では否定され、13歳以上では認められています。

中学生以上なら、親には請求できないのですか。

そうではありません。子どもに責任能力が認められる場合でも、親に監督の義務違反があり、それと損害の発生との間につながりが認められれば、親に請求できます。

自転車の事故です。相手に保険はないと言われました。

この事故に使える保険がないかを、相手本人や親権者に確かめてもらってください。個人賠償責任保険が住まいの火災保険などに特約として付いていることがあり、加害者の側が気付いていない場合があります。これが見つかれば、進み方が大きく変わります。

相手が仕事中の事故でした。

未成年が仕事として行っていた行いに関わって事故を起こした場合には、勤め先に使用者としての責任を問える可能性があります。アルバイトも同じです。会社が所有する車両を使っていた場合は、その車両に使える保険がないかも確かめてください。

自分の人身傷害保険を使えば解決しますか。

対象になるか、いくら支払われるかは、契約の中身によって異なります。保険金を受け取ってもなお埋まらない損害が残る場合には、既に受け取った額との調整をしたうえで、責任を負う本人や親権者への請求を検討することになります。


相手が子どもだった方へ

相手が子どもだった方へ

まず、加害者の側に自転車保険・自動車保険・個人賠償責任保険(自宅の火災保険に付いていることがあります)の有無を確かめさせてください。あわせて、相手の年齢、同居の家族、働いているかどうかを把握しておいてください。請求できる先は、その事情で変わります。ご自身の保険証券もご用意ください。

本稿は、加害者が未成年である交通事故に遭われた方に向けて、請求先の考え方を一般的に整理したものです。誰にどこまで請求できるかは、加害者の年齢、親の関わり方、就業の状況、保険の加入状況によって異なります。個別の事案では、資料に基づく検討が必要です。

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