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DV防止法の保護命令を、令和6年4月施行の改正後の内容で説明します
配偶者から暴力や脅迫を受け、このままでは命や心身に重い被害を受ける危険が大きいときは、地方裁判所に保護命令を申し立てられます。
命令に違反した相手には、刑罰が科されます。
この記事の結論
- 申し立てられるのは、配偶者、事実婚の相手、生活の本拠を共にする交際相手から、暴力や一定の脅迫を受けた人です。
- 接近禁止命令は1年間、自宅から出ていくよう命じる退去等命令は原則2か月間です。
- 申立ての前に、警察か配偶者暴力相談支援センターに相談しておくか、公証役場で宣誓供述書を作ります。
- 命令を破った相手には、2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金という刑罰があります。
保護命令を申し立てられる人と要件
保護命令は、DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)に基づき、地方裁判所が相手に一定の行為を禁じる命令です。
相手となるのは、法律上の配偶者のほか、事実婚の相手と、生活の本拠を共にする交際相手です。ルームシェアや社員寮のように、婚姻に似た共同生活でないものは含まれません。
離婚や関係の解消の後でも、それより前に受けた暴力等を理由に申し立てられます。離婚した後に初めて受けた暴力等だけでは、申し立てる理由になりません。
接近禁止命令が出される要件
- 相手から体への暴力を受けたこと、又は命・体・自由・名誉・財産に害を加えると告げて脅されたこと
- この先も暴力や脅しを受けて、命や心身が深刻に損なわれる危険が大きいこと
自由・名誉・財産への脅迫と、心への危害は、令和6年4月1日に施行された改正で加わりました。
脅しや精神的な暴力が対象になるとき
脅しを理由とするときは、害を加えると告げて、人をおびえさせるに足りる程度の脅迫であることが必要です。東京地方裁判所の案内は、次の例を挙げています。
自由・名誉・財産に対する脅迫の例(東京地方裁判所の案内)
- 自由:「言うことを聞くまで外に出さない」「従わなければ仕事を辞めさせる」と言う
- 名誉:性的な画像をばらまく、悪い評判をネットに書き込むと言う
- 財産:預金のカードや通帳を取り上げると言う
同じ案内は、「馬鹿だ」「無能だ」などの暴言は、それだけで直ちに脅迫に当たるとはいえないとしています。
心への重い被害とは、少なくとも通院による治療が要る程度のものをいい、うつ病やPTSDなどが例に挙げられています。これを理由に申し立てるときは、医師の診断書を出します。
命令の種類と期間
保護命令には次の種類があり、必要なものを選んで申し立てます。接近禁止命令と退去等命令の期間は、それぞれの命令が効力を生じた日から数えます。
| 相手に禁じること・命じること | 期間 | |
|---|---|---|
| 接近禁止命令 | 申立人へのつきまといや、住居(相手と一緒に住む家を除く)・勤務先などの付近をうろつくこと | 1年間 |
| 電話等禁止命令 | 面会の要求、無言電話、緊急時以外の連続した電話やメール、緊急時以外の午後10時から午前6時までの電話やメール、位置情報の無断取得など | 接近禁止命令の効力が生じた日から1年を経過する日まで |
| 子への接近禁止命令・電話等禁止命令 | 申立人と同居する未成年の子へのつきまといや、子への無言電話、緊急時以外の連続した電話など | 同上 |
| 親族等への接近禁止命令 | 申立人の親族など親しい人へのつきまといや、住居などの付近をうろつくこと | 同上 |
| 退去等命令 | 一緒に住んでいる家から出ていき、その付近をうろつかないこと | 2か月間(家の所有者又は賃借人が申立人だけで、申立人が求めたときは6か月間) |
電話等禁止命令、子への命令、親族等への命令は、接近禁止命令と同時か、その後でなければ出されません。
子や親族等への命令は、子や親族等のことで申立人が相手と会わざるを得なくなるのを防ぐ必要があるときに出されます。例えば、幼い子を連れ去るのではと疑われる言動が相手にあるときです。
対象の子が15歳以上のときは、本人が同意しなければ子への命令は出されません。親族等への命令は、その親族等の同意が必要で、15歳未満などのときは法定代理人が同意します。
退去等命令は、申立ての時に相手と生活の本拠を共にしていることが要件です。さらに、身体への暴力か生命・身体への脅迫を受け、今後の身体への暴力で命や体に深刻な被害を受ける危険が大きいことが必要です。

申立ての前に、警察か相談支援センターに相談する
申立書には、警察又は配偶者暴力相談支援センターに相談し、援助や保護を求めた事実を書きます。相談先の名称、日時と場所、相談の内容、執られた措置も書きます。
東京地方裁判所の案内は、電話で相談しただけでは足りないとしています。
相談していないときは、暴力等を受けた状況などを書いて公証人の認証を受けた書面(宣誓供述書)を、申立書に付けます。
申立てから命令が出るまで
申し立てる先は、家庭裁判所ではなく地方裁判所です。相手の住所、自分の住所又は居所、暴力等が行われた場所のどれかを管轄する地方裁判所に申し立てます。
費用は、申立手数料の収入印紙1000円と、裁判所ごとに額の違う郵便切手です。
申立書や証拠は、相手にも送られます。避難先など、相手に知られたくない住所や連絡先は書かないでください。
申立ての後の流れ
- 申立人が裁判官の面接を受けます。
- 相手が立ち会うことのできる審尋の期日が開かれます。東京地方裁判所では、通常、面接の約1週間後です。
- 相手を呼ぶと申立ての目的が果たせない事情があるときは、相手の言い分を聴く期日を開かずに命令が出されることもあります。
- 命令の効力は、決定書が相手に送達された時か、相手が出席した期日で裁判官が言い渡した時に生じます。
命令が出ると、裁判所から、申立人が住む都道府県の警察本部にその内容が知らされます。
申立てについての決定に不服がある当事者は、決定の告知を受けた日から1週間以内に即時抗告ができます。
相手が命令に違反したとき
命令を守らなかった場合の刑罰は、2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金です。令和6年4月の改正前は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金でした。
保護命令には執行力がありません。裁判所が相手を力ずくで家から出すのではなく、違反に刑罰を科すことで守らせる仕組みです。
退去等命令の期間内に転居を終えられないときは、同じ暴力等を理由に退去等命令を再び申し立てることができます。自分の責任でない理由で転居が間に合わないことなど、再び命令を出す必要性を示さなければなりません。
よくある質問
DVの保護命令は家庭裁判所に申し立てるのですか。
いいえ、地方裁判所です。離婚調停は家庭裁判所ですが、保護命令の申立ては地方裁判所が扱います。
精神的暴力(モラハラ)だけでも保護命令は出ますか。
暴言だけで直ちに脅迫に当たるわけではありません。害を加えると告げる脅迫でうつ病などになり通院治療が要る状態で、今後も暴力や脅迫で深刻な被害を受ける危険が大きいときは申し立てられます。症状は医師の診断書で示します。
同居したことのない恋人からの暴力でも、保護命令を申し立てられますか。
申し立てられません。対象は配偶者、事実婚の相手、生活の本拠を共にする交際相手です。以前一緒に暮らし、その間に暴力等を受けていた相手なら、関係を解消した後も申し立てられます。

弁護士に相談するときに用意するもの
けがの写真や診断書、脅しのメールやメッセージ、警察や相談支援センターに相談した日時と場所の控えを用意してください。
本稿は一般的な制度の説明です。個別の事案については資料に基づく検討が必要です。

