慰謝料の支払条件と再発時の扱いを署名前に確かめる
不貞の示談書では、慰謝料の額だけでなく、支払期限と方法も決めます。今後の連絡を禁じるなら、その範囲も必要です。署名前に、何を解決済みとするのかまで確かめてください。
配偶者との生活を続ける場合には、不貞相手から配偶者への金銭請求にも注意が必要です。書式の文言をそのまま使うと、予定していなかった請求まで終わらせることがあります。
この記事の結論
- 不貞の示談書には、誰とのどの不貞行為を解決するのかと、慰謝料の額・支払期限・支払方法を記載します。分割払いなら各回の額と期日も決めます。
- 接触禁止や違約金を置くときは、仕事上の連絡を含めるか、何を1回と数えるかまで決めます。高すぎる違約金は合意しても有効とは限りません。
- 不貞相手が慰謝料を払った後、配偶者へ負担の一部を請求することがあります。夫婦生活を続ける場合は、その請求を放棄する合意も検討します。
- 今後の請求を終わらせる条項は、対象の範囲が重要です。未解決の請求を残すなら、その例外を明記してから署名することが必要です。
最初に対象の不貞行為と支払条件を決める
誰が誰に払うのかと、どの不貞行為についての支払なのかを特定します。そのうえで、総額、期限、振込先、手数料の負担を書きます。受取り済みなら、その事実を確認する記載にします。
| 一括払い | 分割払い | |
|---|---|---|
| 金額 | 慰謝料の総額 | 総額と各回の額 |
| 期限 | 支払う年月日 | 各回の期日と回数 |
| 支払が遅れた場合 | 遅延損害金などの合意 | 残額をまとめて請求できる条件も検討 |
分割払いは滞納時の扱いまで決める
分割払いでは、何回又はいくら滞納したら残額をまとめて払うのかを決めます。これは、分割で払う権利を失わせる定めです。1回の遅れで失わせるのか、一定の猶予を設けるのかは合意によります。
支払が遅れたときの損害金も、開始日と割合を明確にします。総額と各回の額の合計が合っているかも確認してください。
接触禁止と違約金は範囲を具体的にする
連絡や面会を禁じるなら、禁止する行動を具体的に決めます。同じ職場なら、私的な連絡だけを禁じるなど、仕事との関係も整理します。再び不貞をした場合と、連絡しただけの場合を同じ扱いにするかも考えます。
違約金は、約束に違反した場合の支払額をあらかじめ定めるものです。民法第四百二十条に定めがあります。ただし、行動の内容に比べて過大な金額は、公序良俗に反して無効となる可能性があります。
例えば、電話1回、1日のやり取り、面会1回のどれを単位にするかで額が変わります。違反をどう数えるかが曖昧なら、示談後も争いが残ります。
配偶者への請求を放棄するかも検討する
不貞相手が支払った慰謝料の一部を、配偶者に請求することがあります。例えば、共同で負う損害の全額を一人が払った後、他方が負担すべき分を請求することがあります。これを求償といいます。
離婚しない場合、配偶者が払えば夫婦の家計からお金が出ることがあります。そこで、不貞相手が配偶者への求償をしないと約束する方法があります。放棄する対象と、慰謝料の支払額との関係を明らかにします。
今後の請求を終える範囲を確かめる
請求を終わらせる条項は、何について終わらせるのかを限定します。これは清算条項といい、合意したもの以外には請求が残っていないことを確認する定めです。広く書けば、別の金銭問題まで含むおそれがあります。
まだ解決していない請求を残すなら、条項の対象から外す旨を書きます。また、配偶者と不貞相手の双方との解決を望む場合は、誰が合意に参加するかも検討します。二者間の書面で三者の問題が全て終わるとは限りません。
未払いへの備えとして公正証書を検討する
金銭の支払を約束する場合には、一定の条件を備えた公正証書にする方法があります。公証人が作成し、払わなければ直ちに強制執行を受ける旨を記載したものです。民事執行法第二十二条第5号に定められています。
単に示談書へ署名しただけでは、その書面を根拠に直ちに財産を差し押さえることはできません。分割払いなどで未払いに備える必要があるかを考えます。公正証書を作る場合の費用負担も併せて決めます。
要点の整理
署名前に確認する事項
- 対象の不貞行為と支払う人を特定する
- 分割払いは各回の額・期限と滞納時の扱いを決める
- 接触禁止と違約金は対象の行動や回数を明確にする
- 求償の放棄と清算の範囲を別々に確認する
- 支払が続く場合は公正証書の必要性も検討する
よくある質問
不貞の示談書は慰謝料の金額だけ書けばよいですか。
支払期限や振込方法まで決めます。分割払いなら各回の額と期日、滞納したときの残額の扱いも記載します。
不倫相手と同じ職場でも接触禁止にできますか。
仕事上の連絡をどう扱うかを決めたうえで、私的な接触を禁じる方法があります。禁止する行動を具体的にします。
示談書に高い違約金を書けば必ず払ってもらえますか。
有効とは限りません。違反の内容に比べて過大な金額は、無効となる可能性があります。
離婚しない場合の求償権放棄とは何ですか。
不貞相手が慰謝料を払った後、配偶者へ負担の一部を請求しないと約束することです。夫婦の家計への影響も考えて検討します。
示談書があればすぐ差押えできますか。
署名した示談書だけで直ちに差押えはできません。未払いに備えるなら、強制執行を受ける旨を記載した公正証書などを検討します。

示談書へ署名する前の相談
弁護士に相談するときは、示談書案、支払の提案、不貞行為の時期が分かる資料を用意してください。配偶者との生活を続けるかどうかも伝えてください。
一般的な説明です。個別の合意内容は資料を踏まえて検討する必要があります。

