少年事件はどう進むのか ― 家庭裁判所の審判と決まる処分

机の上のノートと眼鏡 刑事事件

成人の刑事裁判とは仕組みが違います。審判の日より前に動くかどうかで結果が変わります

子どもが事件を起こして警察に捕まった。この先どう進むのか、最後にどんな処分が決まるのか。親として、まずそこを知りたいと思われるはずです。

少年の事件は、成人の刑事裁判とは仕組みが違います。そして、その違いから、動く時期についての結論が出てきます。審判が開かれる日より前に手を打たなければ間に合わない、ということです。この記事では、仕組みの違い、決まり得る処分の種類、そして避けたい「逆送」について整理します。

この記事の結論

  • 少年の審判では裁判所が手続の進め方を決め、裁判官が前もって記録を読んで臨むため、審判の日より前に意見や証拠を出すことが大切です。
  • 家庭裁判所が最後に出す決定には、審判不開始、不処分、保護処分(保護観察・少年院送致など)、児童福祉機関送致、検察官送致(逆送)があります。
  • 逆送されると原則として起訴されて刑事裁判に進み、有罪なら前科が残ります。避けるには刑事処分以外の措置が相当だと示す材料が要ります。
  • 処分を決める前に家庭裁判所調査官が本人を観察する試験観察があり、その間の経過が良ければ、保護観察や不処分になる見込みが高まります。

成人の刑事裁判とは三つの点で違う

第一に、手続を進める主導権の所在が違います。成人の刑事裁判では、何を審理の対象にするか、どの証拠を調べるかといったことの主導権は、原則として検察官と弁護人の側にあります。これに対し、少年の審判では、原則として検察官は関与せず、手続の進め方や証拠を調べる方法や範囲を決める権限は、裁判所が持っています。付添人となる弁護士が主導するのではありません。

第二に、裁判官が前もって記録を読んでいます。成人の刑事裁判では、公判が始まる前に裁判官が証拠に触れて先入観を持つことを防ぐ仕組みが置かれています。ところが少年の事件にはこの仕組みがありません。家庭裁判所に事件が送られるとき、捜査機関から書類、証拠物、その他参考になる資料が一緒に送られます。ですから担当の裁判官は、審判の期日に臨む前に、信用できるかどうかの吟味を経ていない供述を含む各種の資料や、捜査機関の処分についての意見にまで目を通し、一定の見方を作った状態で審判に入ることになります。

第三に、伝え聞きの証拠を排除する仕組みもありません。成人の刑事裁判では、いわゆる伝聞の証拠は原則として証拠にできないという原則がありますが、少年の審判にはこの適用がないものとされています。捜査機関が作った証拠についてはもちろん、付添人の側が作った証拠についても、伝え聞きであることを理由に証拠として使えなくなることはありません。

この三つが意味すること

裁判所が広い裁量で審判を進められ、しかも裁判官は前もって記録を読んで一定の見方を作っている。ここから何が起こり得るかというと、時に、誤った先入観にもとづいて手続が不適切に進められるおそれがある、ということです。

ですから、付添人となる弁護士は、審判の前から審判が終わるまで、そうならないよう注意を払い続けなければなりません。進め方が適切でないと見たときには、その場で異議を述べ、意見を申し入れていきます。

審判の日より前の準備が結果を左右する

裁判官は、非行の事実があったのかどうかについても、その子にどれだけの手当てが必要なのかについても、記録を読んで一定の見方を作ったうえで審判の期日に臨みます。これがほとんどの事案の実情です。

そうすると、結論は一つです。裁判官が見方を固めてしまう前に、こちらの言い分をどう理解してもらうか。ここが勝負になります。審判の当日になって初めて意見を述べるのでは、遅すぎるのです。

他方、伝え聞きの証拠が排除されないという先ほどの特徴は、こちらにとって使える面もあります。積極的に証拠を集め、作り、適切な時期に家庭裁判所へ出すことによって、裁判官の見方に働きかけられるからです。

審判の前に出しておくもの

  • 付添人の弁護士が作る報告書
  • 本人が書いた反省文
  • 関係する方に書いていただいた陳述書
  • 関係する方から聴き取った内容をまとめた書面
  • 付添人の意見書
書類がおさまった箱
出す時期と、出したことの記録。どちらも後で意味を持ちます。

証拠を排除してもらえる場合もある

伝え聞きの証拠が排除されないからといって、何でも証拠になるわけではありません。実務では、任意にされたものかどうかに疑いのある自白は証拠として使えないとされていますし、自白については、それを裏づける別の証拠が求められています。違法な手続によって集められた証拠も、証拠として使えないとされています。

また、伝え聞きの証拠が排除されないことは、反対尋問をする権利が保障されないという意味ではありません。信用できないと考える証拠については、その供述をした方を証人として呼ぶよう求め、反対尋問によって信用性を崩していくことになります。

もう一つ、注意点があります。捜査機関は、家庭裁判所に事件を送るときに、すべての証拠を送る建前になっています。しかし実際のところ、本人に有利な証拠が入っていないこともありますし、大事な証拠が後から追加で届くこともあります。非行の事実そのものを争う事案では、特に気をつけるべきところです。

家庭裁判所が出す処分の種類

では、最後に何が決まるのか。種類を並べておきます。

終局的な決定の種類

  • 審判不開始 ― 審判を開かないという決定
  • 不処分 ― 審判を開いたが、処分をしないという決定
  • 保護処分 ― 保護観察、児童自立支援施設や児童養護施設への送致、少年院送致
  • 児童福祉機関送致 ― 都道府県知事や児童相談所長へ送る決定
  • 検察官送致(逆送) ― 事件を検察官へ送る決定

審判不開始には、二つの筋があります。一つは、審判に付することができない場合です。裁判権などの条件がない、行方が分からなくなって審判や保護処分が事実上できない、非行の事実があったといえる見込みがない、といった場合です。もう一つは、審判に付するのが適当でない場合で、事案が軽く、手当ての必要が乏しいことが明らかである、別の事件で既に保護を受けている、といった場合です。

保護処分の中身も見ておきます。児童自立支援施設は、不良な行為をした子や、そのおそれのある子、それに家庭の事情から生活の指導を必要とする子を対象にしています。入所させる形と、保護者のもとから通わせる形があり、その子の状況に合わせた指導をして自立を支えます。児童養護施設は、保護者がいない子や、虐待を受けている子など、環境の面で養護が必要な子を入所させて養護する施設です。そして少年院に送る処分は、保護処分の中でもっとも重い、施設に収容するものです。

試験観察 ― もう一度の機会

どの処分にするかを決める前に、しばらく様子を見るという決定があります。相当の期間、家庭裁判所の調査官が本人を観察するのです。試験観察と呼ばれます。最終的な決定を保留した、中間の決定という位置づけになります。

この期間中の経過が良好であれば、その後、保護観察や不処分という決定になる見込みが高まります。ですから、事案の重さから少年院送致が見込まれるような場合でも、いったん機会を与えてもらい、その期間中に本人の反省を深め、手当ての必要を小さくしていくことで、保護観察という結論に持っていく余地が生まれます。保護観察が見込まれる事案で、不処分にたどり着くこともあります。

試験観察には、条件を付けて保護者に引き渡す形のほか、適当な民間の施設や個人のもとで生活する形、自宅にいながら民間の施設や個人に補導を委ねる形があります。

なお、特定少年を少年院に送る場合には、扱いが一つ加わります。その決定と同時に、収容の期間を3年以下の範囲で定めることになっているのです。これは実際に少年院で過ごす期間ではなく、収容できる期間の上限を意味します。

逆送 ― これを避けたい理由

検察官送致、いわゆる逆送は、事件を検察官に戻す決定です。その先は、検察官が起訴するかどうかを判断し、原則として起訴されて刑事の裁判に進みます。なお、刑事の裁判に進んだ後も、少年について特別の定めが置かれている部分はあります。

なぜこれを避けたいのか。理由を率直に申し上げます。有罪となれば前科が残ります。事案の重さによっては刑の執行を猶予されず、刑務所に入ることもあり得ます。加えて、審判より手続が長くなりますから、身体を拘束される期間も延びかねません。本人が背負う不利益が、格段に重くなるのです。

逆送される三つの場合

  • 刑事処分が相当と認められる場合 ― 死刑や拘禁刑に当たる罪の事件について、罪の性質と情状から刑事処分が相当と認めるとき(18歳・19歳の「特定少年」については、罪の重さによる限定がなく、罰金以下の刑に当たる罪でも対象になります)
  • 原則として逆送される場合 ― 行為のときに16歳以上であった少年について、わざとした行為により被害者を死亡させた罪の事件(特定少年については、死刑、無期、又は短期1年以上の拘禁刑に当たる罪の事件も同様です)
  • 年齢を超えた場合 ― 調査や審判の時点で20歳以上になっていたとき

二つ目の「原則として逆送される場合」であっても、刑事処分以外の措置が相当と認められるときは、逆送されません。ですから、ここに向けて材料を集めることになります。

何を示せば「刑事処分以外の措置が相当」と言えるのか

特定少年についての原則逆送の場面では、考慮される事情が条文に並べられています。何をきっかけにどういうやり方で行われ、どういう結果になったのか。その後に本人がどう振る舞ったのか。そして、本人の人柄、年齢、日ごろの行い、置かれている環境。そのほかの事情も含めて見られます。

ですから、まず犯行そのものに関わる事情を具体的に指摘します。たとえば、万引きをして逃げる途中で被害者側の方にけがをさせた事案について、そもそも窃盗の機会に当たるのかを争ったうえで、被害の金額が少なく、けがの結果も比較的軽いことを示し、原則逆送の対象になる罪ではない罪名で家庭裁判所に送るべきだと述べる、という組み立てです。

次に、その子にどれだけの手当てが必要なのかという点です。本人や親との面接で、日常の生活の様子、学校や職場での態度、これまでの育ちの経過、前歴や補導歴の有無と中身を早い段階で聴き取り、性格の上での問題や非行の深まり方を検討します。そして、罪名から類型的に考えられるほど非行が深まっているわけではない、という材料を集めていきます。

そのうえで、本人が真剣に自分を省みている態度を示せること、保護する環境として親の協力があること。これらを土台にして、被害者との示談が成立した事実や、被害者から許すという意向が得られた事実を示せれば、犯行の後の状況として重要な意味を持ちます。

ここで大事なのは、時期です。家庭裁判所に送られる前の段階から、これらの事情についての情報を集め、本人に働きかけ、検察官との交渉を早く始める。そうすることで、家庭裁判所に送られる時点で軽い罪名になったり、送るときに検察官が付ける意見に影響を与えられることがあります。それが、審判で逆送を避けることにつながります。

弁護士を付ける道

家庭裁判所に事件が送られた後、本人に付く弁護士を付添人といいます。それより前の捜査の段階では、弁護人という呼び方になります。付ける道は複数あります。

家庭裁判所が自ら国が費用を負担する付添人を選ぶ場合があります。私選で依頼することもできます。また、家庭裁判所が身柄について観護の措置を決める手続の際に、裁判官から本人へ当番の弁護士の制度が告げられ、本人が希望すれば弁護士が派遣される仕組みがあります。資力が乏しい場合には、日本弁護士連合会が委託している援助の制度を使うことになります。

家庭裁判所の側から弁護士会に対して、付添人を付けた方がよいと考えて派遣を依頼してくることもあります。刑事処分や保護処分が見込まれる事件、非行の事実の重要な部分を本人が争っている事件などです。

必ず国選の付添人が付く場合

次の二つに当たる場合、本人に弁護士の付添人がいなければ、家庭裁判所は原則として国が費用を負担する付添人を付けることになります。ただし、本人と保護者が付添人を必要としないという意思を明らかにした場合は例外です。

一つは、家庭裁判所が被害者等に審判の傍聴を許す場合です。申出があれば必ず、というわけではありません。なお、この傍聴の申出が認められる余地があるのは、故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪、業務上過失致死傷等の罪、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の一部の罪に当たる場合です(けがにとどまる場合は、それによって生命に重大な危険を生じさせたときに限られます)。

もう一つは、その審判に検察官が加わることになった場合です。

親がまずすること

最後に、親の立場からできることを申し上げます。

第一に、早く弁護士を付けることです。ここまで述べてきたとおり、この手続は審判の日より前に決まっていく部分が大きいのです。家庭裁判所に送られてから動き始めるのでは、打てる手が減ります。

第二に、聴き取りに応じる準備をしておくことです。日常の生活の様子、学校や職場でのこと、これまでの育ちの経過、前に何かあったかどうか。こうしたことを、弁護士や家庭裁判所の調査官に対して落ち着いて話せるように、書き出しておいてください。これらは、その子にどれだけの手当てが必要なのかを判断する材料になります。

第三に、これは申し上げにくいことですが、処分を軽くすることだけを目的にしないでいただきたいのです。試験観察という制度があるのは、その期間に本人が変わり得ると考えられているからです。少年院送致が見込まれる事案が保護観察に落ち着くことがあるのも、その期間に実際に何かが変わったからです。手続を軽く切り抜けることと、その子がこの先どう生きるかは、必ずしも同じ方向を向いていません。ここは、弁護士とよく話し合っていただきたいところです。

よくある質問

少年の審判は、成人の刑事裁判とどう違いますか。

三つ違います。手続を進める主導権が裁判所にあること、裁判官が審判の前に記録を読んで一定の見方を作っていること、伝え聞きの証拠を排除する仕組みがないことです。この三つから、審判の日より前に動くことが重要になります。

審判の当日に意見を述べればよいのではありませんか。

遅すぎます。裁判官は、審判の前に記録を読んで一定の見方を作ったうえで期日に臨みます。ですから、その前に証拠や意見書を出しておく必要があります。

どんな処分が決まるのですか。

審判不開始、不処分、保護処分(保護観察、児童自立支援施設や児童養護施設への送致、少年院送致)、児童福祉機関送致、そして検察官送致があります。ほかに、最終的な決定を保留して調査官の観察に付する試験観察という中間の決定もあります。

逆送されると、どうなりますか。

検察官が起訴するかどうかを判断し、原則として起訴されて刑事の裁判に進みます。有罪となれば前科が残り、事案の重さによっては刑の執行を猶予されず、刑務所に入ることもあり得ます。手続も長くなりますから、身体を拘束される期間が延びかねません。

逆送を避けるには、何が必要ですか。

原則として逆送される場合であっても、刑事処分以外の措置が相当と認められれば逆送されません。犯行そのものに関わる事情、その子の性格や環境、そして犯行の後の状況(示談が成立したか、被害者から許す意向が得られたか)を材料として示していきます。家庭裁判所に送られる前から動くことが要です。

弁護士の費用が心配です。

国が費用を負担する付添人が付く場合があります。また、資力が乏しい場合には、日本弁護士連合会が委託している援助の制度を使えます。家庭裁判所が被害者等に審判の傍聴を許す場合や、審判に検察官が加わることになった場合には、原則として国が費用を負担する付添人を付けなければならないとされています(本人と保護者が不要という意思を明らかにした場合は例外です)。まずは費用の心配をせずに、弁護士に相談してください。


弁護士に相談するときに持って行くもの

弁護士に相談するときに持って行くもの

弁護士に相談するときは、警察から受け取った書面、捕まった日付、どの警察署にいるのかが分かるものを用意してください。あわせて、本人の日常の生活の様子、学校や職場での状況、これまでの育ちの経過、前に何かあったかどうかを書き出しておいてください。相手方に対して謝罪や賠償の意向があるかどうかも、整理しておいてください。家庭裁判所に送られる前の段階でできることがありますので、日付は最初に伝えてください。

本稿は、少年の事件が家庭裁判所でどう進み、どのような処分が決まり得るのかについて、一般的な考え方を整理したものです。実際の進み方や結論は、非行の事実の内容、本人の年齢、これまでの経過、環境などによって異なります。個別の事案については、資料に即した検討が必要です。

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