家族法改正
令和8年4月1日施行 改正家族法の概要
選択的共同親権の導入から養育費の強制執行まで、知っておくべき7つの変更点
令和8年4月1日、改正民法・改正家事事件手続法が施行されました。最大の目玉は離婚後の「選択的共同親権」の導入ですが、財産分与の請求期限延長、養育費の先取特権・強制執行の整備など、離婚実務全般にわたる広範な改正です。本稿では各改正点を概観し、実務上の留意点を整理します。
SECTION 01
離婚後共同親権の導入
従来、日本の離婚後親権は「単独親権」のみでした。改正後は、父母の協議又は裁判所の判断により、離婚後も父母双方を親権者とする「共同親権」を選択できるようになりました。
裁判所が単独親権を定めなければならない場合
次のいずれかに該当するときは、裁判所は必ず父母の一方のみを親権者と定めなければなりません。
第一に、父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときです。虐待のおそれがある場合はもとより、親権喪失・停止事由に準ずる事由がある場合も含まれます。第二に、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときです。虚言・約束違反・濫用的な申立ての繰返しなど、将来的にも最低限の協力関係の構築すら望めず、共同親権行使の前提となる父母間の協議が期待できない場合がこれに当たります。
共同親権か単独親権かの総合判断
必要的単独親権事由に該当しない場合は、①父母と子との関係、②父と母との関係、③その他一切の事情を総合考慮し、子の利益のために判断されます。「父母と子との関係」においては、親権行使の態様に問題がないか、養育費を支払う等の親としての責務を果たしているか、子の意向(特に年長の子の場合)などが検討されます。「父と母との関係」においては、子の利益のために協力できる関係にあるか、別居後の親子交流や父母間の連絡調整の状況などが考慮されます。
▌ 実務上の注意点
専ら単独親権を望む親が、相手方に暴力等のおそれや協力関係を阻害する言動がないにもかかわらず、あえて協力関係の維持・構築を阻害するような行動をとった場合、そのことをもって直ちに協力関係がないとは認められないとされています。このような行動は、父母間の協力義務(民法第八百十七条の十二第2項)に違反するものと評価される可能性がある点に留意が必要です。
SECTION 02
親権行使者の指定
共同親権下での親権行使方法について整理されました。子の居所決定・進路に影響する進学先の決定・心身に重大な影響を与える医療行為の決定・子名義の預金口座の開設などの重要事項は、原則として共同行使が必要とされます。
他方、日常の監護に関する事項や急迫性がある場合(DV・虐待からの避難、緊急の医療行為、入学手続の期限が迫っている場合等)は、単独で親権を行使できるとされました。
SECTION 03
監護者指定の要件厳格化
改正民法第八百二十四条の三第1項により、監護者は居所の指定・変更、監護及び教育、営業の許可等に関する事項を単独で行使できる包括的・優先的な権限を有します。もっとも、このような強力な権限を認めるには必要性が求められ、特定の事項に係る親権行使者の指定や監護の分掌(事項・期間)で足りる場合には、必要性なしとされる運用になる見込みです。
監護者指定が認められ得る例としては、調停・審判でも対立が低減せず他の事項でも対立状態の解消が見込めない事案、虐待やDVのおそれがある事案などが挙げられます。
SECTION 04
「面会交流」から「親子交流」へ
呼称が「面会交流」から「親子交流」に変更されました。また、家庭裁判所は、子の監護に関する調停・審判・人事訴訟の手続中に、当事者に対して親子交流の試行的実施を促すことができるようになりました(改正家事事件手続法第百五十二条の三等)。
ただし、これはあくまで合意形成又は判断のために必要な事実の調査として行われるものであり、早期に親子を交流させること自体が直接の目的ではない点に注意が必要です。
SECTION 05
財産分与の請求期限の変更
改正民法第七百六十八条第3項では、財産分与の考慮要素として清算的要素と扶養的要素があることが明文化されました。扶養的財産分与については、離婚時(口頭弁論終結時)を基準として、その時点の特有財産も含めた双方の資産・負債・収入等が考慮されます。
請求期限については、施行後に離婚した場合は5年、施行前に離婚した場合は2年とされました。扶養的財産分与についても条文に即した主張が重要です。
SECTION 06
情報開示命令の新設
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、申立て又は職権で、当事者に対して、婚姻費用・養育費・扶養料に関する事件では収入及び資産の状況を、財産分与に関する事件では財産の状況の開示を命じることができるようになりました。開示を命じられた当事者が正当な理由なく開示せず又は虚偽の情報を開示したときは、10万円以下の過料に処することができます。
対象となる情報を特定しない包括的な開示命令も可能であり、即時抗告の定めがなく直ちに効力が生ずる点も特徴です。
SECTION 07
養育費の強制執行手続の整備
養育費等の請求権を請求債権として、執行力のある債務名義又は子の監護の費用に係る一般の先取特権の一方又は双方に基づき財産開示手続等の申立てをした場合、債権者が申立ての際に反対の意思を表示しない限り、その申立てと同時に、債務者が開示した給与債権等に対する差押命令の申立てをしたものとみなされます(改正民事執行法第百六十七条の十七等)。これにより、従来より迅速な強制執行が可能となりました。
なお、法定養育費については、その要件として離婚後の監護の継続が必要である点に注意が必要です。また、合意書の作成に当たっては、形成養育費が法定養育費を包含するかどうかを確認することが実務上重要です。
おわりに
今回の改正は、離婚に関する紛争の解決方法のバリエーションを大幅に増加させました。特に共同親権の導入により、居所指定・監護者指定・事項の分掌・期間の分掌など、個別の事情に応じた最適な権利・手続選択が求められるようになりました。実務対応に当たっては、個別事情を丁寧に把握した上で、適切な手続を選択することが重要です。
離婚・親権問題にお悩みの方は、お早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。
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