暴行や傷害に関する刑事事件は、日常生活の中でも思わぬかたちで発生することがあります。以下では、刑法に定められた暴行罪および傷害罪の基本的な理解から、実際に問題となりやすいケース、被害・加害それぞれの立場における対応方法まで、法律的な観点からわかりやすく整理いたします。
◆ 暴行罪と傷害罪の法的な定義
まず、暴行罪については、刑法第208条に規定があり、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に適用されるものとされています。この「暴行」とは、他人の身体に対して不法な有形力を行使することを意味し、典型的な例としては殴打や蹴りのほか、衣服をつかむ、髪の毛を引っぱるなども該当します。被害者に外傷が発生していない場合でも、行為自体が違法とされ刑罰の対象となります。
一方、傷害罪(刑法第204条)は、人の身体に対して傷害、すなわち生理機能の障害を与えることで成立します。たとえば出血や骨折だけでなく、(程度によるものの)精神的ダメージなども含まれると解されています。実際に「気絶」や「PTSD」などが傷害と認定された判例も存在します。
◆ 両罪の構成要件と相違点
暴行罪と傷害罪の最大の違いは、結果の発生有無です。すなわち、暴行罪は行為があれば成立し(結果不要)、傷害罪は傷害結果の発生が必要です。また、傷害罪の方が量刑が重く、懲役刑の上限も高く設定されています。
なお、傷害罪においては、故意の有無が重要になります。たとえば誤って他人にケガを負わせた場合は、過失傷害(刑法第209条)が問題となります。この場合、罰金刑や科料で済むことが多く、懲役刑は原則として科されません。
◆ 具体的に問題となりやすい場面
日常生活において、以下のようなケースで暴行罪・傷害罪が成立する可能性があります
・口論からの軽い暴力(例:胸ぐらを掴む、平手打ち)
・飲酒による判断力低下に起因する暴力行為
・子どもの喧嘩
◆ 被害を受けた場合の対応手順
被害者となった場合は、速やかに以下の行動をとることが推奨されます
1.安全の確保と医療機関の受診(診断書の取得)
2.状況の証拠化(写真、目撃者、録音など)
3.警察への相談(被害届または告訴状の提出)
4.弁護士や支援機関への相談
暴行罪や傷害罪は非親告罪ではありますが、被害届の提出等告を行うことで捜査機関が積極的に動くケースもあります。
◆ 加害者となってしまった場合の注意点
不幸にも加害者側となってしまった場合、示談や謝罪に努めるべきです。逃亡や隠蔽は事態を悪化させる原因となります。示談が成立すれば、不起訴処分となるケースもあり得ます。
◆ よくある誤解と実務的な注意点
・「相手が許せば問題ない」という認識も危険です。
・「酔っていた」「未成年だった」ことは、原則として刑事責任を免れません。
・「喧嘩両成敗」は法的には存在しません。正当防衛の範囲を超えれば処罰対象です。
◆ 終わりに
暴行罪・傷害罪は、誰しもが関わる可能性のある刑事事件です。感情的な衝動で一線を越えてしまえば、人生に大きな影響を与えかねません。お困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

※「目が覚めたら留置場でした」という案件を担当したことがあります。記憶がなくなるまで飲むのはやめておきましょう・・!
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