【コラム】婚姻費用分担請求とは

婚姻費用を請求する女性 離婚・男女問題

婚姻費用分担請求とは

 婚姻費用分担請求とは、夫婦がまだ婚姻関係にある(離婚が成立していない)間に必要とされる生活費・子どもの養育費などを、どのように分担するかを裁判所の手続きを通じて定めるための請求手続きです。日本では、民法上「夫婦は互いに協力し扶助しなければならない」という規定(民法第752条など)に基づき、結婚生活の継続中は、双方が生活に必要な費用を負担する義務があります。

 しかし、実際には、夫婦が別居したり離婚協議に入ったりすると、一方が十分な生活費を受け取れなくなるなどの問題が生じることがあります。そのような場合に、家庭裁判所の調停や審判といった手続きを利用して、相手に婚姻費用の支払いを求めることができます。

1.婚姻費用が問題となりやすいケース

  1. 別居中
     夫婦のどちらかが別居している場合、夫または妻の一方が自分の生活費や子どもの費用を十分に負担してもらえないことがあります。
  2. 離婚協議中
     離婚するかどうか決まっていない、もしくは協議が長期化しているケースでは、決着がつくまでの間に生活費や子どもの養育費をどうするかが問題になりがちです。

2.婚姻費用の内容

 婚姻費用には、主に以下のような費用が含まれます。

  • 生活費一般: 食費、住居費、光熱費など、夫婦および同居する子どもの日常生活に必要な費用
  • 子どもの養育費: 子どもの教育費、医療費など、子育てに関わる費用

 離婚が成立する前であれば、たとえ別居状態であっても法律上は婚姻関係が継続しているため、これらの費用をお互いに分担する責任があります。


3.請求の方法と流れ

  1. 話し合い(協議)
    まずは夫婦間で直接話し合い、支払額や振込方法などを取り決めます。合意に至れば、必ずしも裁判所の手続きに進む必要はありません。
  2. 調停の申立て
     話し合いで合意できない場合には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所などに婚姻費用分担請求の調停を申し立てることができます。調停委員(中立的な第三者)が夫婦それぞれの事情を聴き、合意に向けて話し合いをサポートします。
  3. 審判手続き
     調停で合意が得られない場合、家庭裁判所は審判を行い、具体的な金額や支払い方法を裁判所が決定します。審判結果に不服がある場合は、一定期間内に不服申立てを行うことができます。

4.婚姻費用の算定方法

 婚姻費用をどの程度支払うべきかについては、家庭裁判所が参考にしている「算定表」が存在します。以下のような要素が考慮されます。

  • 夫婦それぞれの年収・収入状況
  • 子どもの人数や年齢
  • その他特別な事情

 調停や審判では、これらを踏まえたうえで算定表を参照しながら、最終的な支払額や支払い方法が決められるのが一般的です。


5.婚姻費用と養育費の違い

  • 婚姻費用
     離婚前(まだ法的に夫婦である状態)に必要な生活費や子どもの養育費を含む広い概念で、夫婦間の扶助義務に基づきます。
  • 養育費
     離婚が成立した後に、子どものために支払われる費用です。離婚後は夫婦間の扶養義務は消滅しますが、子どもへの扶養義務は継続するため、別途「養育費」という形で取り決めが行われます。

6.支払われない場合の対処法

 裁判所の調停や審判で支払額が決定しても、相手が支払いに応じないケースがあります。その場合は、強制執行の手続きを利用し、給与や預金口座の差し押さえなどの方法で支払を確保することが可能です。

 ただし、強制執行には適切な手続きが必要であり、費用や手間がかかる場合もあるため、まずは弁護士や専門家に相談し、状況に応じた対応を検討することが望ましいでしょう。


まとめ

 婚姻費用分担請求は、夫婦が別居中や離婚協議中でも日常生活や子どもの養育に困らないようにするための仕組みです。夫婦間の話し合いで折り合いがつかない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用して適切な金額や支払い方法を決めることができます。もし相手が支払いに応じない場合でも、強制執行を含めた法的手段をとれる可能性があります。

 お困りの際は、一人で悩まずに専門家に早めにご相談されることをおすすめします。

※原則として請求時点より過去に遡れないので、早めに内容証明郵便もしくは調停申立てにより請求をしましょう。

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