【コラム】不貞慰謝料請求を受けた方へ─冷静な対処をするために知っておくべきこと
突然の慰謝料請求に戸惑い、不安を抱えていらっしゃる方も多いかと存じます。不貞行為を理由とした請求は、すべてのケースで支払義務が直ちに生じるわけではありません。本稿では、当事者としての立場から、冷静に状況を見極め、適切に対処していただくための基本的な情報を整理いたします。
不貞行為とは法律上どう定義されるか
不貞行為とは配偶者のある者が、配偶者以外の相手と自由意思に基づいて肉体関係を持つことを意味します。すなわち、単なる親密な交流や精神的な結びつきだけでは、不貞行為とは評価されないのが原則です。
基本的には、「既婚者との肉体関係」があった場合に、その配偶者から損害賠償請求(慰謝料請求)を受け得るということとなります。
請求された金額は法的に妥当か?支払うべきか?
慰謝料の金額は一律ではありません。不貞行為の内容、期間、相手方夫婦の関係性(離婚に至ったか否かなど)を考慮し、裁判所は事案ごとに相当額を判断します。個々の事案によるものの、数十万円から二百万円前後の請求額が認定されることが多いです。
ご注意いただきたいのは、「請求されたからといって、即座にその額を支払う義務があるわけではない」という点です。
内容証明郵便が届いたときはどうすればいいか
内容証明郵便は、発送した文書の内容と日付を証明するものであり、それ自体に強制力はありません。とはいえ、放置すれば相手方は訴訟等の手続に進む可能性がありますので、適切な対応を取る必要があるのは事実です。
内容に虚偽や誤認がある場合は、その旨を反論できます。逆に、不貞行為を認めざるを得ない場合でも、慰謝料の金額や支払方法(分割払い等)について交渉の余地があります。慰謝料支払いの合意書にサインを求められている場合でも、署名・押印する前に必ず内容を慎重に確認しましょう。正式に依頼するかどうかはさておき、まずは弁護士に相談するのがベストです。
示談交渉と訴訟の違いとは
請求への対応としては、大きく「示談(私的な話し合いによる解決)」と「訴訟(いわゆる裁判)」があります。交渉により示談となれば、早期解決を図ることができるでしょう。一方、裁判となれば、訴訟に関する弁護士費用が掛かる点・解決までの時間が長くなる点・精神的負担などのコストが掛かるでしょう。
裁判所の判断を仰ぐことにより、慰謝料額が適正範囲内に収まる可能性が高くなる一方、場合によっては事案が公開の場で審理されるという側面もあります。交渉と訴訟、どちらの方法が望ましいかは、個別事情によって異なります。
弁護士に依頼することで得られる安心と利点
不貞慰謝料請求の案件において、弁護士に依頼することは、単なる代理交渉にとどまりません。法的責任の有無、請求額の妥当性、相手方とのやり取りの適切な対応など、法律と交渉の両面から総合的に助言を受けられることは大きな利点です。訴訟となれば、当事者本人が裁判所に提出する書面を適切に作成することは難しいでしょう。
また、相手方と直接連絡を取る必要がなくなり、感情的な対立を回避できる点でも精神的負担を軽減できます。
よくある誤解とその整理
- 「相手が既婚者とは知らなかった」は通用するのか?
相手が既婚者であることを知らず、かつ通常の注意を払っても知り得なかった場合には、責任が否定されることがありますが、そうした主張が認められるケースは個別事情によりますが、あまり多くはありません。 - 「夫婦関係は破綻していた」と言われたが、それで責任は免れるのか?
法的に婚姻関係が破綻していたか否かは厳格に判断されます。口頭で破綻していると言われていたとしても、それだけでは免責の根拠にはなりません。 - 「関係を持ったのは一度だけ」でも慰謝料は発生するのか?
原則として、一度でも不貞行為があれば、損害賠償請求の対象となり得ます。回数や期間は慰謝料の金額に影響を与える要素ではありますが、責任の有無自体には関係しません。
おわりに
不貞慰謝料請求は、多くの方にとって人生で初めて直面する事態かと存じます。専門家に相談して早期に事実関係を整理し、法的に正確な判断をもとに対応を行うことが極めて重要です。
※本コラムは一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。具体的な状況に応じたアドバイスが必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。
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